演出の力を感じました。 説明も、お説教もなく、ただ、事実だけを語っているのに、画面に引き込まれていく。
描写する力に圧倒されました。と言って、気取るわけでなく、センスいいんだぞう、という思い上がりもなく、涼やかな画面。
ベルギーの地方都市で、起きる小さな日常が、深く、心に刺さります。
12,3歳の少年、シリルが、父親から、育児ネグレクトされ、施設に捨てられます。それでも父親の愛を信じるシリルはいなくなった父親を追い求め、探しだそうとします。
その少年が取った手段が、施設の制度にある、「週末里親」。
たまたま関わった美容師の中年女性、サマンサを利用します。里親制度を利用すれば、週末に施設を出ることができるので、父親を探そうというのです。
この映画で問題になるのが、ほんとに、偶然に関わった、サマンサがどうして里親になり、可愛げのない態度を取る少年に対して、熱心に面倒を見るかと言うことです。
本当に理解に苦しむのです。態度は反抗的だし、感謝している風でもない。それでも、一緒に父親に面会に行って少年を拒否する父親を説得したり、粘り強く面倒を見ます。それどころか、恋人に、少年と自分とどちらを取るかと迫られたとき、少年を取るのです。
このサマンサの態度に対して、観客は、想像力を働かせなければなりません。映画はサマンサの気持ちや過去について、何も説明してくれないからです。
この点で、映画は押しつけがましい起承転結のある、「お話」ではなく、観客それぞれの考え方、来し方の人生に解を求められます。自分の問題としてとらえ、じぶんならどうするかと問題を手渡されるのです。
育児放棄した父親と子供を描くことで、社会の諸問題、親子、善意のあり方、様々なことに思いを馳せさせる映画です。
こんなこと描くと七面倒くさい、堅苦しい映画と思われるかもしれませんが、全く違って、画面はさわやか、自転車で疾走する少年は美しく、人の善意を信じて、優しい気持ちになって、映画館を出ることができます。
サマンサ役を演じた、女優、セシル・ド・フランスさん、素敵でした。ヨーロッパの女優さんて、おおむね、頑張って、役作りするのではなく、自然体の方が多いです。彼女もそうで、あくまでナチュラに演じて、押しつけがましくない。
決して、美人ではないし、ごっつい感じなのですが、生活感があるのに、セクシーなのですねえ。
もう、ファンになりました。旧作を探して見るかなあ。調べました。フランスでは有名なのですね。忘れないように書いておこうっと。
「スパニッシュアパートメント」「ロシアンドールズ」「モンテーニュ通りのカフェ」「秘密」
C.イーストウッドの「ヒアアフター」