イプセンの作品では「人形の家」のほうが格段に有名だけれど、自立を目指して家を出て行くノラの対極にいるのがヘッダ 。
家柄も良く教養があって美しい、自尊心が強くて、高慢、強い女、だが、破滅していく。
ヘッダは自己愛過多の女性、わがままに育ち、自己中心的、おまけにファザコン、大人になると世界が思うようにならなくて、自分を見失い、自滅してしまう。登校拒否、出社拒否になってしまう現代人にその姿の変形がみられると思う。
大地さんはぴったりの役。美しいし、気品有り、ヘッダの気性も、一部彼女の本質に近いのではないかなあ、大地さんは絶対自滅しないだろうけど、
宝塚出身女優はどんな衣装も、素敵に着こなしてしまう。新劇の女優とはそこが違う。
ただ、台詞を歌ってしまうクセがあって、気になった。他の俳優は何より、リアリズムに徹していて、抑揚をつけたりしない。大地さんはやはり、大劇場向きだと思う。見ていて、聞いていて、彼女の演技はメリハリが利いておもしろいのだけどね。
役者は皆んな上手。特にヘッダの夫テスマンを演じた。益岡徹さん、善人で常識的、本と研究が大好きな学者、難しい役をうまく演じていた。
山口馬木也さんは昔の恋人、リーブボルグ。何より、イメージがぴったり、線の細い悩めるインテリで長身の美男。なにより、その姿だけで、演技関係なく、納得の存在。馬木也さんはほんと、色男が良く似合う、素敵ですわ。
ヘッダ ガーブレルは女優冥利につきる役です。難しいけれどね。15年くらい前、ベニサンピットで、デビット ルボー演出、佐藤オリエで、見ました。今回は笑いが何箇所も起きていました。(演出宮田慶子)。この作品で笑いが起きるとは思わなかったです。ルボー版はもっと、静謐な感じで進行していきました。
ヘッダはいつの時代にもいるだろう永遠の女性像、もっと、上演して欲しいです。