「気品」 「ストイック」 類稀なるデッサン力、凛とした精神性 。なにしろ、気高いのです。凛々しいのです。人間としての立つ位置、心の置き方が半端でないのです。

 すごいですねえ。この展覧会に来る前は松園の絵は品の良い美人画で、退屈だと思っていたのです、例の「序の舞」なんかを見てね。

 ですが、こうして、100点もの作品を一度にみると、まるで、見方が変わりましたね。内面に秘めたエネルギーの強さ、緊張感に満ち満ちています。能のように、表現を惜しんで惜しんで、エッセンスだけで本質を表す、その禁欲的な姿に圧倒されました。

 禁欲的な彼女の作品のなかで、特異な作品が「花がたみ」と「焔」。この二つは激しく情念の火が燃え上がっています。前者は狂女、後者は六条の御息所をモデルにしたというように、激情で身をよじっています。「焔」が一番好きかな。

 若い頃の絵は、着物の柄もきらびやか、浮世絵のように意匠をこらした着物の柄が美しいですが、年月を経るにしたがって、柄がなくなる、ベタっと塗って、色だけで勝負、帯や端っこに少し柄があるだけなのですね。

  女流画家に対する時代の偏見と戦って作品を発表し続け、私生活は未婚の母だったり、興味の尽きない画家です、伝記を読よもうか、とりあえず宮尾登美子の「序の舞」でも。