桐野夏生版、「古事記 番外編」というところ、もっと言えば「イザナミ記、番外」。
作者は、「古事記」を読んで、いたくインズパイアされたのだろう。一般に、「古事記」は学校では習わない、「うみひこ、やまひこ、」「因幡のシロウサギ」「ヤマタノオロチ」とか、おとぎ話として、小さい頃に聞かされるだけだ。だから、おぼろげには知ってはいても、全体像は良く分からない。
それだから、大人になって、きちんと全部を読んでみると、感激してしまうのである。その壮大な物語世界に。
桐野さんもそうだったのだろう、と思う。、番外編として、舞台を沖縄にとり、神に使える一家を現実世界に、そこと、神が住まう、冥界を行ったり来たりしながら物語を紡いでいく。
いつもの、鋭利な刃物でえぐるような、人間心理の描出を見られないのが少々つまらない。
ファンタジーの桐野さんも「ま、いいか」という感じ。
いずれにしても、「古事記」は素晴らしい民族遺産だと思う。これを人々が知らないのは本当に残念、戦前の皇国史観の復活をを避けるべく、「歴史」としてではなくて、「文学」として広く読まれて欲しい。