昔々あるところに数学好きな羊飼いのおじいさんがいました。
おじいさんは22頭の羊と3人の孫と暮らしていました。おばあさんは亡くなっていて、おとうさん、おかあさんは貧しい家庭を支えるべく、3人兄弟が二人の顔をしっかりと覚える前に息子たちを残し、お金を稼ぎに行くとだけ言って都市へ出て行ってしまいました。
おじいさんはよく兄弟に、「寂しがることはないわい、わしらは26人もの大家族じゃからな。」と嬉しそうにいいました。兄弟は、親には会いたいものの十分に幸せをおじいさんからもらうことができました。
ところが、自然の摂理に抗うことはできるはずもなく、3人を残しておじいさんは亡くなってしまいました。
兄弟はあくる日もあくる日も涙に暮れ、また、途方にも暮れました。
おじいさんを失って、これからどうして生きていこう。兄弟は悩み続けました。
でも、おじいさんが家族と言っていた22頭の羊は大切に世話しました。
十数年後、
長男、次男、三男と結婚すると、家が狭くなり、ついに家庭ごとに別々の家に住むことにしました。
でも、家を建てるような大金はどこにもありませんでした。
三男は家を建てるために22頭の羊を売りに出そうとまでしました。
長男と次男がそれを許すはずはありませんでした。しかし、優しい次男は弟の気持ちを理解してあげようとも言いました。
そうこうして、日に日に兄弟間でのすれ違いは大きくなっていきました。
そこで長男は、生前おじいさんから預かっていた、「困ったときに開けなさい」と言っていた箱を、ついに開けることにしました。
その中には、おじいさんの遺言書がありました。
「一番わしと一緒に羊を世話した年数が大きいしっかり者の長男は2分の1、羊を世話してくれる他にたくさんの家事もこなしてくれる優しい二男は3分の1、自由奔放だが頭がよくて夢が学者だという三男は12分の1になるように羊をわけなさい」
長男は二人の弟にこれを伝えました。
しかし賢い三男は気づきました。22は12と3では割りきれないので、遺言どおりに兄弟で羊を分けることができません。
また、兄弟間の羊の頭数の差で、いさかいの種が増え、溝はますます深くなってしまいました。
ですが兄弟はそれぞれに、おじいさんがいさかいの種になるようなことをするはずがないとわかっていました。
なので、なけなしの金を懸賞金に学者が多い都市に、この問題を解決してくれる人を募りました。
すると、数年後、2頭の羊を連れた、年をとった夫婦がやってきました。
夫婦はその2頭の羊を兄弟にあげると言いました。
兄弟は、それは悪いから、と羊を返そうとしましたが夫婦「また来るから」と言って、帰っていってしまいました。
兄弟はそのときはその言葉の意味が理解できませんでした。
とりあえず24頭となった羊を、遺言どおり兄弟で分けました。
するとどうでしょう、2頭余りました。
数日後、あの夫婦がやってきました。
「羊を2頭買い取らせてもらえますか?」
兄弟は先日いただいた2頭が余ったことを伝え、2頭を返し、懸賞金を渡そうとしました。
しかし夫婦は買うと言って聞きませんでした。
夫婦はお金の入った袋を渡し、羊を連れて帰っていきました。
兄弟はなぜだか、数日前会ったからという理由ではなく、何か懐かしいものをその夫婦の背中に感じました。
袋を開けてみると兄弟は驚きました。
そこには家が3軒建てれるのに、十分なお金が入っていました。
ですが兄弟は話し合うまでもなく、今までと同じように皆で仲良く生活することを選びました。
兄弟は困ったことをいつも解決してくれるおじいさんに感謝を忘れずに生涯、皆で仲良く暮らしました。
でも、あの懐かしさはいったい何だったのでしょう。
ヒトシマツモトのちょっと不思議な数学の話でした。