以前、suzuさんの「夏子の酒」感想 が記事になったことがありましたが、先日私も読んでみたので、感想を書きます。
面白く読めました。あれを読んだら、いいお酒を飲んでみたくなりますね。
日本酒に関しては、私の夢の銘柄は、石川県が全国に誇るあの「菊姫」の最高級品「菊理媛(くくりひめ)」で、これは1升5万円もして、今まで自分が見た中では最高に高い日本酒なのですが、ぜひいつか飲んでやろうとますます決意が固まりました(笑
この夏子の酒、作っているのは終始日本酒なのですが、原料米を自分で作るところから始めているので、農業のことにもその内容が及んでいます。
その稲作の内容そのものについては、よく調べてあるなと思いました。細かい荒を探せばもちろんそれなりにあるんですが、まあマンガに対して重箱の隅を突付いてもしょうがないことですし本質には関係ない部分なのでほとんど気にならなかったです。
ただ、農業関係の書き方で一つだけ気になる部分がありました。
主人公の夏子は、有機農法を実行するために、その地域全体の意識改革をして地域ぐるみで減農薬に取り組もうとします。最初はなかなかその考えも浸透しないのですが、ある事件を契機に農家の意識も少しずつ変わり始めます。
それは農薬の空中散布です。ヘリコプターで殺虫剤を撒く作業を地域一括で行ったのですが、当日、農協や業者の不注意で、予定時間とは大幅にずれた時間に散布が行われたのです。本来は早朝のまだ誰も起きていない時間にやる予定だったのに急遽変更になり、朝の人々が活動を開始した頃に大規模散布を行ってしまい、地域の児童数名が農薬を吸って病院に運ばれると言う惨事が起こります。
私は、農薬の空中散布には反対です。空散を求めていない田んぼにも、否応なく農薬が入り込むような方法はいい加減すぎます。これこそコスト重視で、仕事への誠実さや丁寧さから遠く離れた方法だと思っています。
しかし、このマンガが描く、空散批判・・・というより従来農法の批判の仕方は卑怯です。これは受け入れがたい手法です。
なぜなら、先に書いた事件の直接の原因は空散そのものではなく、手違いで時間をずらした農協と散布業者にあるからです。児童の登校時間にこんな作業をすること自体が言語道断で、批判はこちらに向けられるべきなのに、なぜかそれはさらりと流されてあっという間に忘れ去られます。
批判の方向をずらして、さも空中散布そのものを悪と決め付けるような手法はフェアではないと思います。これでは例えば、包丁を凶器にして一家惨殺事件発生、と言う事態を踏まえて町内で一斉に包丁を悪玉にして不使用運動を起こすようなもので、騙しに近いテクニックです。
そもそもおかしいのは、空中散布は本来は相当シビアな方法でして、道路などには農薬が入らないように細心の注意が払われます。どういうことかというとつまり、小学生が歩くような通学路には絶対に農薬がかかるはずはないのです。
それでもかかったならば考えられる理由は、児童が通学路を外れて田んぼのあぜを歩いていたか(それでもヘリコプターの操縦者は児童の姿を確認したら散布を中止するはずだが)、作業員が恐ろしくいい加減な仕事をしていたかです。どちらにしても、農薬が適正に使用されなかったからこその結果であって、これをもって農薬そのものを批判するのは間違っています。
実際、殺虫剤に関して言えばほとんどの農薬よりも、家庭用の「バルサン」のほうがよっぽど強力です。ゴキブリが出たというだけでバルサンを炊く主婦が、圃場の殺虫剤を反対するというのは実は妙なことです。
私は空中散布という方法そのものは気に食わないことですし、批判するのも大いに結構だと思いますが、批判の方法が間違っているならばそれは不当そのもので、これも面白くないことです。時間がずれて、なおかつありえない場所に散布などと言う特殊すぎる状況をわざわざ作らなくても、正面から批判して欲しかったものです。結構物語の核の部分なので、残念です。
もう一つ。あまり話の内容とは関係ないのですが、物語の鍵を握る酒米「龍錦」、上質な酒を造れるがあまりの作りにくさに絶えてしまったという幻の品種、という触れ込みで登場したのに割とあっさり・・・というか簡単に生産されますね(^^;生産が始まってしまえば、ほとんど「難しい」という声は聞かれなくなるし。
もうちょっとトラブルとか、それこそ倒伏しまくっても良かったんじゃないかな。倒伏したとしても、刈り取りに気をつければちゃんと米にはなるし。
普通、いかに生産しにくい品種でも、品質の良いものができるならばその品種は誰彼なりと作るものです。日本の米生産は品質を重視するので。実際、コシヒカリだってあれは実はかなり難しい品種なのです。
それでも、「あまりの生産しにくさに」絶えてしまった品種というのは、それはよっぽど生育条件の難しい手のかかる品種ということです。あるいは、品質が同等で、もう少し生産しやすい品種ができたのか。やや品質が劣る、という程度ならば難しいほうを選ぶ農家は確実に存在します。
有機農法をやった、という程度で克服されるようなものならば絶えたりはしません。その辺、もうちょっと難しい米にしたらリアリティが・・・と百姓は思うのですが、まぁそれ以外の人にはどうでもいい話ですね(^^;
koume
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