米の価格などに関する批判エントリをいくつも続けてきましたが、批判だけなら誰でも出来ると言うことで、これまでのエントリを踏まえて新しく提案してみます。というか、今までの数エントリは実は前フリ。


踏まえるエントリ:
キサマがいる場所は我々が20年前に通過した場所だッ!
米の国際競争力
おかまい無しに値下げしてみよう
米の等級検査
米国FTAと農家戸別保証@民主党


テーマは
米の「大量生産→価格下落による大量消費」からの抜本的転換


具体的な施策:


減反制度は廃止、あるいは補助金額を大幅に削減します。


米の農家からの売り渡し基準価格は、全国平均でおよそ1万円前後とします。8千円くらいでもいい。


米の検査制度に新たに食味値を基準とした新たな等級検査を付け加えます。「品質基準」または「食味基準」と呼称します。
 ・例ですが、S~Dまでの等級を新設し、検定用機械を統一した上で(例えばKETT製の基準で)、
  食味値85点以上をS、80点以上をA、75点以上をB、70点以上をC、70点未満をDとします
 ・この検査は任意で、強制にはしません(もっとも現行の検査もそうですが)。


上記の新「品質基準」を元にした報奨金制度を作ります。
 ・S判定の米には1俵当たり3万円の報奨金を出します。同様に、A2万円、B1万円、C5千円、Dは無し。
 ・この報奨金は、政府農水省ではなく全農が運営します。というか、農水省が全農に運営させます。


狙い:

 これまでの農業にかかわる補助金は、ほとんど過程に支払うお金でした。減反や、現在の品目横断的経営安定化対策のような「作らないことによってもらえるお金」「転作することによってもらえるお金」が代表です。また、環境保全型農業に対する補助金なども、民主党マニフェストにもありましたが、有機栽培等を「することによる」お金です。
 つまり、手段に対してお金を払っていたわけですが、この結果、減反をごまかしたり、減反はしているが耕作地では大量に効率的に作るため生産調整の意味を成さなかったり、転作に関してはまさに「作るだけ」で収穫物の品質は省みられず、酷いところになると一切収穫しないところもあります。環境保全型などと言っても、本当に環境を守ることに繋がっているのかと言うような検証もせずに過程にのみお金を払うことになり、要するに本来は重要なはずの「農産物そのもの」が完全に置き去りになっているのです。


 私が考えた制度ではそうではなく、結果つまり生産した米に対して報奨金を与えます。S判定(食味値85点以上)の米に対して3万円とはかなりの高額ですが、実際には食味値85点と言うのは相当に高いハードルです。というか、80点もかなり高いです。たまたま・まぐれで出る点数ではなく、根拠に基づいた工夫・努力を重ねないと無理です。単に有機栽培を行うだけでは高得点に繋がりません。
 また、それだけ高品質にこだわる時は、むやみな規模拡大はできません。高品質を保持できる耕作面積はある程度限られており、今までのように大規模を目指し品質を省みずでは本当に最低水準程度の価格にしかなりません。


 つまり、規模拡大するよりもある程度の規模に抑えて創意工夫をすることに対してインセンティブを支払うことにより、減反など維持せずとも生産量を抑制できる効果を見込みます。そのため、品質が高くなればなるほど儲かる・割に合うようなバランスを取ります。品質向上の意欲が無い農家は売り上げが見込めず、淘汰されるかもしれません。
 あまりにうまく行き過ぎると市場で廉価な米が足りなくなる自体が発生する恐れがありますが、高品質米を求めればくず米や中米の増加も見込めますし、それに加えて輸入米を充てればいいのです。これによって輸入枠の拡大・関税の引き下げにも根拠が作れます。


 さらになぜこれを農水省主導ではなく全農にやらせるかと言えば、この報奨金を小売価格に反映させるためです。報奨金を出すための財源は米の価格の上乗せによって得ます。

 補助金・・・というか税金でこれをやってしまえば、流通段階ではSランクの米もDランクの米も同じ価格で動くことになり、Sの米に高値をつける意味、Dの米を扱う意味両方がなくなります。高品質なものに高いお金を払うのは本来自然な姿です。


 農水省発行の食に関するパンフレットを見ると、最近のものにはよく、「生産者・販売者・消費者の3者が協力して・・・」と言う文言が見られますが、現状行われているような施策は農産物価格を下げて消費者にもっと買って貰う、つまりはっきり言えば消費者は得をしっぱなしなだけです。消費者利益は保護されるべきとは思いますが、その利益とは単に金銭的な利益だけなのでしょうか?金銭的な利益を目指しすぎたために品質や安全が犠牲になってきた例は、ここ近年数え切れないくらいあったはずです

 もっともそれにしても消費者負担が重過ぎるなら、報奨金の半額を農水省が補助すると言う形でもいいでしょう。そもそもこの制度では、政府負担はほとんどありません(食味計の導入費用と検査員の配備、あと法律を通すくらいかな)。


 また生産者・業者がコストを払うだけの社会は、いずれ大増税が待っているだけだと考えるべきです。米が値上がりする分減税していると思っても間違いではありません。わけのわからん農業を守るために10万円税金を払うより、高い米を買って食べるほうが納得できるんじゃないですかね。
 で、新基準で最高ランクの米の価格は、農家渡しで基準1万+褒賞3万で4万円となり、小売価格では5キロ4~5000円くらいです。今の米に比べれば2倍くらいしますが、私に言わせれば今の米が安すぎです。もっともそんな最高の米が大量に流通するとは思えません。安い米がいいと思う人は、海外のお米を食べれば良いでしょう。


 思いっきり机上の空論ですがね。