ドは440ヘルツです。上のドは880ヘルツです。下のドが1回振幅する間に上のドは2回振幅して同時に0地点に到達します。これが美しい和音となりますね。ならばミは下のドが何回振幅した時に同時に0地点に重なりますか?
答え:下のドが4回振幅したときです。
純正律では、ドとミの周波数比は 4 : 5 です。ドを440Hzとすると、ミは440 × 5/4 = 550Hz。ドが4回振動する間にミはちょうど5回振動し、そこで両者がそろって0地点に戻ります。
オクターブ(1:2)ほど頻繁には重なりませんが、比が小さな整数なので、耳にはよく溶け合う響きとして聞こえます。参考までに、ソは2 : 3(660Hz)で、ドが2回振動するたびに重なります。ド・ミ・ソの3音は4 : 5 : 6になり、ドが4回振動するごとに3音すべてが同時に0地点へ戻ります。これが長三和音が澄んで聞こえる理由です。
補足が二つあります。
- 現代のピアノなどで使う平均律では、ミはドの2^(4/12) ≈ 1.2599倍(約554.4Hz)です。この比は無理数なので、厳密にはいつまでたっても完全には重なりません。純正の5/4(1.25)からわずかにずれていて、そのぶん平均律の長三度にはかすかな「うなり」があります。
- 一般的な基準では、440Hzは「ド」ではなく「ラ(A)」の音です。ただ、比の考え方はどの音を基準にしても同じです。
でわドミソの和音にフラットのシはどのように共鳴しますか
シ♭をどの比で取るかによって、重なり方が大きく変わります。代表的なのは次の3通りです。
① 自然七度(7/4):一番きれいに共鳴する
シ♭ = 440 × 7/4 = 770Hz。ド・ミ・ソ・シ♭は 4 : 5 : 6 : 7 になります。ドが4回振動する間にミが5回、ソが6回、シ♭が7回振動し、ドが4回振動するたびに4音すべてが同時に0地点へ戻ります。ドミソだけのときと周期が変わらないので、驚くほど溶け合った響きになります。これは倍音列そのもの(第4〜第7倍音)で、アカペラのバーバーショップ・コーラスが鳴らす「とろけるようなセブンス」はこれです。
② 短七度 9/5:やや複雑
シ♭ = 792Hz。比は 20 : 25 : 30 : 36 で、4音がそろうのはドが20回振動したときです。
③ 短七度 16/9:さらに複雑
シ♭ ≈ 782.2Hz。比は 36 : 45 : 54 : 64 で、そろうのはドが36回振動したときです。
平均律の場合
シ♭はドの2^(10/12) ≈ 1.7818倍、約784Hzです。③の16/9に近く、①の自然七度(770Hz)よりかなり高くなります(約31セント)。比が無理数なので完全には重ならず、うなりが生じます。
音楽的な意味
ドミソ+シ♭(属七の和音、C7)は「次の和音へ進みたくなる」緊張感を持つ和音とされています。ただし①の4 : 5 : 6 : 7で鳴らすと、緊張よりも「安定した響き」に近く聞こえます。「7」という新しい素数が入るため、伝統的な音階の枠には収まらない独特の色合いです。私たちが感じる属七の緊張感の多くは、②③や平均律の、比が複雑になったシ♭から来ていると言えます。
自然律と平均律の違いは何?
「自然律」は一般に純正律と呼ばれます。両者の違いは、音と音の比を「整数比」で決めるか、「均等な比」で決めるかにあります。
純正律は、これまで見てきたように、倍音の性質に沿って音を整数比で決めます(ド:ミ = 4:5、ド:ソ = 2:3 など)。振動の周期がぴったり重なるので、和音はうなりがなく澄み切って響きます。弱点は、移調(キーを変えること)ができないことです。たとえばドを基準に調律すると、ド→レは9/8なのに、レ→ミは10/9になり、同じ「全音」でも幅が不ぞろいです。そのため、レを基準にした和音を弾くと響きが濁ってしまいます。調ごとに楽器を調律し直す必要があります。
平均律(十二平均律)は、オクターブ(1:2)を12個の半音に完全に均等に分けます。半音一つの比は2^(1/12) ≈ 1.0595倍で、どの半音も同じ幅です。そのため、どの調で弾いても同じように響き、自由に移調や転調ができます。代わりに、オクターブ以外の音程はすべて無理数比になり、純正な比からわずかにずれます。和音にはかすかなうなりが常に含まれます。
ずれの大きさの例(1セント = 半音の1/100):
| 音程 | 純正律 | 平均律 | 差 |
|---|---|---|---|
| 完全五度(ド-ソ) | 3/2 | 1.4983 | 約2セント低い |
| 長三度(ド-ミ) | 5/4 | 1.2599 | 約14セント高い |
| 短七度(ド-シ♭、自然七度との比較) | 7/4 | 1.7818 | 約31セント高い |
五度はほぼ純正ですが、三度や七度はかなりずれています。
まとめると、純正律は「一つの調で最高の響き」、平均律は「すべての調でほどほどの響き」という取引です。ピアノのような鍵盤楽器は平均律で調律されていますが、合唱、弦楽四重奏、管楽器のアンサンブルなど音程を自由に調整できる編成では、演奏者が無意識に純正な響きに寄せて演奏することがよくあります。
ギターは平均律ですか?他の楽器は?
はい、ギターは基本的に平均律です。フレットの位置が十二平均律の比(1フレットごとに弦長が約1/1.0595ずつ短くなる)で決まっているので、押さえる位置で音程が固定されます。ただし弦の張力や押さえる強さで実際の音程は少しずれますし、チョーキング(弦を引っ張って音を上げる)で純正な響きに寄せることもできます。また、開放弦を耳で合わせるとき、ハーモニクス(倍音)で合わせると純正な五度・四度になってしまい、平均律の和音とわずかに食い違うという、ギタリストにはおなじみの悩みもあります。
他の楽器は、音程が固定されているかどうかで大きく分かれます。
音程が固定(平均律で調律)
ピアノ、電子キーボード、現代のパイプオルガン、ハープ、ビブラフォンやマリンバなどの鍵盤打楽器がこのグループです。演奏中に音程を変えられないので、どの調でも弾ける平均律が使われます。ちなみにピアノは、高音を少し高く、低音を少し低く調律する「ストレッチ・チューニング」が施されていて、厳密な平均律ではありません。また、バロック時代のオルガンやチェンバロでは、三度をきれいにする中全音律などの古典調律が使われていて、現在の古楽演奏でも再現されています。
音程を自由に調整できる(状況に応じて純正寄り)
人の声、バイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバスなどの弦楽器、トロンボーン、フレットレスベースなどです。弦楽器の開放弦は純正な五度で調弦し、演奏中は指の位置で音程を自由に決めます。合奏では三度を低めにとるなど、純正に寄せた演奏がよく行われます。
中間(平均律で設計されているが調整できる)
フルート、クラリネット、サックス、トランペット、ホルンなどの管楽器です。キーやバルブの配置は平均律を基準に作られていますが、息や唇の加減で音程を微調整できます。金管楽器はもともと倍音列で鳴る楽器なので、自然七度など平均律にない音程も持っています。
日本の伝統楽器
琴は曲ごとに柱(じ)を動かして調弦するので、平均律に縛られません。三味線、尺八も音程の自由度が高く、西洋の平均律とは異なる独自の音程感で演奏されます。
自然律の演奏を聞くことは可能ですか
はい、可能です。純正律(自然律)の響きを聴く方法はいくつかあります。まず、ここで直接聴き比べられるものを用意しますね。
音には少し倍音を加えているので、平均律では「ワウワウ」といううなりが、純正律ではそれが消えて静止したような響きが聞き取れると思います。特にドミソシ♭の比較は違いが大きいです。
実際の演奏や録音で純正律の響きに触れるには、次のようなものがあります。
純正律を意図的に使った作品
- アメリカの作曲家ベン・ジョンストンの弦楽四重奏曲(特に第4番「アメイジング・グレイス」)は、純正律で書かれた代表作です。
- ラ・モンテ・ヤングの「ザ・ウェル・チューンド・ピアノ」は、ピアノ自体を純正律に調律し直した長大な作品です。
- ハリー・パーチは、純正律の音程を出すための楽器を自作して作曲しました。
自然に純正に近づく演奏
- バーバーショップ・コーラス(アメリカの男声アカペラ)は、先ほどの4 : 5 : 6 : 7の自然七度の和音を鳴らすことで知られています。「ベル」が鳴るように和音が響く瞬間を探して聴くと分かりやすいです。
- 優れたアカペラ合唱団や弦楽四重奏も、和音を伸ばす場面では純正に寄せています。
倍音そのものの響き
- アルプホルンやナチュラルホルン(バルブのないホルン)は倍音列しか出せないので、自然七度やさらに「外れた」第11倍音などを含む独特の音階が聞けます。
- モンゴルのホーミーやトゥバのホーメイなどの倍音唱法は、一人の声の中で倍音列を浮かび上がらせます。
YouTubeなどで「just intonation」「純正律 比較」「barbershop ring chord」と検索すると、聴き比べの音源が多く見つかります。また、電子ピアノやシンセサイザーの中には調律を純正律に切り替えられる機種もあるので、手元にあれば試してみるのも面白いと思います。
5セントずれれば全く音痴に聞こえるのに驚きです
本当に人間の耳は鋭いですね。ただ、その鋭さは「単独の音の高さ」よりも「和音のうなり」に対して特に発揮されます。
一つの音だけを聴いて5セントのずれを当てるのは、訓練された音楽家でも難しいとされています。メロディの中での5セントは、多くの人には気づかれません。ところが和音になると話が変わります。ずれが「うなり」という形で、時間的な揺れとして耳に届くからです。
計算してみましょう。ド440Hzとミ550Hzの場合、ドの第5倍音とミの第4倍音はどちらも2200Hzでぴったり重なります。ここでミを5セント高くすると約551.6Hzになり、その第4倍音は約2206.4Hzです。2200Hzとの差、毎秒約6回のうなりが生じます。ほんのわずかな高さの差が、「ワウワウ」という揺れになって耳に飛び込んでくるわけです。
ちなみに平均律の長三度(純正より約14セント高い)では、同じ計算で毎秒約17回のうなりになります。私たちはこれを毎日ピアノで聴いていて慣れてしまっていますが、純正律と並べて聴くと濁りがはっきり分かるのはそのためです。
つまり、耳が「音痴」と感じるのは、高さの差そのものより、ぴったり重なるはずの振動が重ならないことを、うなりで察知しているからです。冒頭のお話の「同時に0地点に到達する」かどうかを、耳はとても敏感に聞き分けているとも言えますね。
ビートルズのジョンとポールのコーラスの音程が美しいのは純正律だからでしょうか
一部はそうだと言えますが、「純正律で歌っているから」と言い切るのは難しいところです。
まず、人の声は音程が固定されていないので、二人が耳で互いに合わせながら音を伸ばすと、自然とうなりの少ない純正な音程に引き寄せられる傾向があります。先ほどの話のとおり、耳はうなりにとても敏感なので、「気持ちよく響く」点を探すと結果的に純正に近づくわけです。ジョンとポールのハーモニーが澄んで聞こえる理由の一つには、これがあると考えられます。
ただし、ビートルズの曲はギターやピアノなど平均律の楽器と一緒に演奏されています。伴奏の音程に引っ張られるので、完全な純正律にはならず、平均律と純正律の間を行き来するような歌い方になっているはずです。厳密に測定した研究を私は確認できていないので、どの程度純正寄りかは断言できません。
むしろ、二人のハーモニーの美しさは、音程以外の要素も大きいと思います。
- 声質と発音がよく似ていること。同じリヴァプール出身で、母音の作り方がそろっていると、倍音の構成も近くなり、二つの声が溶け合って一つの楽器のように聞こえます。
- エヴァリー・ブラザーズから学んだ、三度や五度の平行ハーモニーという手法。二人とも若い頃にエヴァリー・ブラザーズの兄弟デュエットに強い影響を受けたことが知られています。
- 音程やタイミングがわずかに揺れる「人間らしさ」。完璧に合いすぎていないことが、かえって温かみや生々しさを生んでいる面もあります。
まとめると、「純正律」というより、「よく似た声の二人が耳で合わせることで、自然に純正寄りの響きが生まれている」と言うのが近いと思います。
自分が音痴だと思っている人は
実は音感が鋭すぎて
自然律で歌っているのかもしれませんね
つまり音痴でも
聞いて良ければ
音楽は成立すると言うことですね
耳こそはすべて
