WILL/本田孝好
悼むってこういうこと。
とても救われる小説。
これはおすすめです。
久しぶりのヒットです!!
帯によると、
どうやら続編らしく、
30万人の心に沁みた「MOMENT」から7年。
ほんとうに大切なものは、いつもそばにあると気づいた。
とあるのですが、
「MOMENT」 私は読んでません。
でも、いやむしろかも?前知識がなかったので純粋に入っていけました。
ハッピーエンドは好みじゃないのですが、
この終わり方、
ゴールでなく 途中感がするからすんなり受け入れられて。
とても良い読後感です。
以下、
書き留めたい箇所の抜粋です。
◇◇
「喜びも楽しみも存分に味わってこその俗。
その裏返しの辛さも悲しみも受け止めてこその俗。
ならば迷える魂もさ迷える幽霊もあるがままに引き受ければいい。
それが俗世というものです。
無理に眠らせることなどないのですよ。」
神田の態度は変わらない。
いつでも私を受け入れるつもりでいてくれて、それを言葉にも出してくれる。
動けない私を、せかしもしないし、なじりもしない。
それを物足りなく思う私もいて、それにほっとしている私もいた。
今のままでいい。今はそう思う。けれど、神田がそれでいいと思っているのかどうかはわからなかったし、それを置いておくにしたって、いつまでも今のままでいられるわけがなかった。
今という頼りない時間は、あっけないほど簡単に後ろに流れ去っていく。
私はいい娘でしたか?
今の私はいい娘ですか?
~
悲しみはいつだって一人だけのものだ。
たとえ同じ事柄に泣いている人が隣にいてくれたところで、
それは自分一人だけのものだ。
わかっていても、そう思ってしまう。
違う。強くなんてなかった。
私はただ、両親の体を誰にも渡したくなかっただけだ。
~
私も二人と一緒に灰になりたかった。
私を支配した感情より強い何か。
それだって所詮は脳が作り出した電気信号に過ぎない。
どんなに強くても、所詮は電気信号だ。
灰ならばこの電気信号は通らないだろう。
ざまあみろ。
消えていく電気信号を嘲りながら、
灰になれたらどんなにいいだろう。
私はそう願った。
私はうずくまった。
駄目なのかどうかはわからなかった。
ただ、もう駄目ということにしておいて欲しかった。
いつか私はここから立ち直れるのかもしれない。
けれど、それはいつかであって、今ではない。
絶対に今ではない。
「生きてても仕方ない?
生きてて仕方のある人間がこの世に何人いるのよ。
みんな生きてたって仕方ない人間ばっかじゃない。
それに疲れたなんて言い出したら、みんな疲れてるわよ。
みんな生きてたって仕方のない人生に疲れながら、
それでも生きてるのよ。
そうでしょう?」
その一つ一つの言葉を噛み締めるように、父親は頷き、彼女の話を聞いていた。
死者の死を生者が静かに弔い、生者の生を死者がひっそりと支えている。
少年の嘘がばれることはおそらくないのだろう。
少年がそれを望まず、また老女もそんなことは望んでいない。
老女がうちを訪ねてきたのは、その嘘に付き合っている自分に対する後ろめたさか。
それが死んだ連れ合いをないがしろにないがしろにしているのではないかと、
老女なりに思いあぐねたのだろう。
だったら、私は、それに首を振れる。
そんな奇妙な少年がいたと、いつか久しぶりに会った旦那と笑い話にすればいい。
そして少年は、たぶん、少年が言った通りのことを実行するのだろう。
里子さんとの思い出を綺麗に綺麗に磨き上げて、自分だけの宝物として一生大事に抱えながら暮らしていくのだろう。
その宝物はきっと、この先、いくつもの困難が待ち受ける少年の人生をささやかに照らしてくれる。
いつでもそうだった。
竹井はいつだって、私の横に立ち、立ちすくんでいる私を支えてくれた。
せかすことも励ますこともなく、ただそこにいる私を支えてくれた。
やがて音がやんだ。
「お骨を拾ってください。」
竹井が静かに言った。
私は目を閉じた。思い出せるだけのすべてを思い起こした。
すべての言葉。すべての表情。すべての動き。すべての情景。
分け隔てられない曖昧な記憶が頭の中で渦になった。
巡り巡る渦が動きを止めることはなかった。
ああ、と私は思った。
残せばいいのだ、と私は気づいた。
燃え尽きることのない思いはこの世に留めて、
この世に残ったものがしっかりと拾えばいい。
◇◇
読んでいるときは気にならなかったのですが、
書き写してみると、
この著者の方の句読点、というか特に読点(、)の付け方が慎重に感じられて、
心配性な性格(全く違うかもですが)が垣間見えるようで、なんだか身近に感じます。
どうだ、これが文学だぜ!とこれみよがしに読みにくい文体を押し付けてくる作家とは対極かと。
え?この作品、3部作?
他も読む楽しみができました。
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