バケツ/北島行徳
久しぶりに一気に読んだ~。
一気に読めるおもしろさでした。
バケツ
嚙む子
駄目老人
と、同一主人公による、3つの中編からなる連作。
主人公神島大悟が、知的な遅れのある中学3年の「バケツ」こと里谷和人と出会い、
やがてバケツがかけがえのない存在になっていく・・・
あいつを必要としていたのは僕のほうだった――
「星の王子さま」 のキツネ、バラの花の話を思い出します。
どこからそんなパワーが湧いてくるのか、
神島が、次々に新しい仕事に、(しかも開業!) 取り組んで奮闘していく様に、
ええ~! と思いながらも
その行動力には脱帽します。
失敗できるってすごいよ。
以下、ネタバレ含みます。
バケツ
主人公神島大悟25歳。
1年間のフリーター生活ののち、叔父の会社に。
しかしストレスから脱糞し、退職届を郵送して、
養護施設で指導員として働き始める。
そこで、知的な遅れがある中学3年のバケツこと里谷和人と出会う。
嚙み合わない会話から、2人の関係はスタートする。
「お前、どうしてバケツってあだ名なんだ?」
「おれの、すきなたべものは、おにぎりなのよ」
「でも、こんびにの、おにぎりじゃないと、だめなのよ」
先輩指導員の山﨑は、
盗みを働くバケツに体罰を与える。
施設の指導員たちは
卒業後に転落の道を歩んでしまった子供たちをあっさりと見捨て、
嘲笑するように「失敗例」 と呼ぶ。
「ヤクザだろうと風俗嬢だろうと、別にいいじゃないですか。それならそれで、その子の人生ですよ。」
正面から啖呵を切って1年で海風学園を辞め、
バケツを引き取って!!一緒に暮らしながら
大胆などんぶり勘定で!!日焼けサロンを開業する。
噛む子
主人公神島大悟、28歳。
日焼けサロンの売り上げが低迷していた時、
保育園の園長と日焼けサロンの店長では女性が描くイメージが大きく違うのだ、と
思い立ち、
”保育園フランチャイズ募集”という、新聞の折り込み広告をきっかけに、
「すくすく園」 という無認可保育園を開業する。
神島のよき先輩で、障害者の劇団を立ち上げた黒田のセリフ。
「障害者の肉体には強い魅力があると思います。
でも、それだけを神聖なものに祭り上げて芸術だとか言ってしまうと、
観る側も演じる側もそこで進歩がなくなってしまうんですよ」
親もいなければ、住む家もなく、
おまけに知的な遅れまで抱えているバケツの前では、
つまらない体裁など何一つ取り繕う必要がなかった。
しがらみからくるストレスで脱糞までした神島にとって、
手ぶらで生きているようなバケツとの暮らしは清々しい解放感に満ちていた。
だから倉庫の中で鼠のように暮らしていても、
毎日が夏休みの子供みたいに楽しかったのである。
「すくすく園」の保育士、須藤のセリフ。
「そんなことないですよ。気が弱い人って、自分の考えを相手に押し付けたり、物事を一方的に決めつけたりしないでしょ。それって大切なことです」
駄目老人
主人公神島大悟、30歳。
日焼けサロンと無認可保育園に加えて、
介護保険では受けられないサービスを引き受ける「プライベートヘルプ」
という事業を興す。
きっかけは、久しぶりに実家に顔を出した際、
60歳になった母親が呆れるほど話し好きになっていたこと。
老人の話し相手は商売になるのではないか
と、思いついたからだという。
バケツとの共同生活も、
バケツが自立できるようになるまでのつもりだった。
それなのに、いつの間にかバケツの面倒をみることが神島の生きる目的になっていた。
そんな中、突然バケツが神島に何の相談もなく新聞配達のアルバイトを決めてくる。
「研修期間が終わったら、販売所の寮に入る。」
と言い放つバケツ。
今まで一緒に楽しく暮らしてきたのに、どうして自分の元から離れる必要があるのか。
「おれだって、もう、いいとしなのよ。おとな、なんだから、ひとりで、いきていくのは、とうぜんよ」
「先生はお前からいつまでも迷惑をかけられたいと思っているんだ。」
これまた黒田のセリフ。
「やりなおしのきかない失敗なんて無いのよ。生きている限りはね」
まるで小説のネタのためのような(小説なのだけど)人生を選択する主人公。
実行するから失敗もするんだけど、
すごく、生きてる主人公。
そして、安定してるんだよね。なぜか。
盗まれても。
読後感もよかった。
著者の北島行徳って誰なの~
ご本人facebookより
北島 行徳(きたじま ゆきのり、1965年6月22日 - )は、日本のノンフィクション作家、シナリオライター、小説家。東京都出身。
アンチテーゼ北島のリングネームでプロレスを行なうかたわら、小説、ゲームシナリオを書く。
出典:Wikipedia
障害者支援のボランティア活動を経て、
障害者プロレス団体の日本での草分け的存在である「ドッグレッグス」を旗揚げ。
無敵のハンディキャップ―障害者が「プロレスラー」になった日
で、講談社ノンフィクション賞を受賞。
ご自身もプロレスをされるのですね。
上の画像が何だかなので、もう一枚。
全く知らない著者名ではあったのだけど、よかった。
装丁に引かれて買った本でした。
◇ブックデザイン 鈴木成一デザイン室
◇イラストレーション 前原啓子
鈴木成一デザイン室・・・
またか。
装丁買いした本にはほとんどはこの文字が。
この、
鈴木 成一(すずき せいいち)さんという方、
年間700冊もの本の装丁を手掛けている、
「超人気装丁家」 らしい。
「装丁というのは、何か読者を引きずり込んでいくと言いますか、巻き込んでいくみたいな、やっぱりそういう物だと思うんですね。」
「いい装丁が一つ出来れば、それでなんかね生きていられるという感じなんですよね。」
~プロフェッショナル 仕事の流儀 クリエイターたちの言葉より~
そんな思いで、作られている装丁なのですね。
伝わってます。


