2025年 元日の全紙より

 

 私の正月は、新聞全紙を読むことから始まります。最近では、早朝に行かないと、一部買えない新聞が出るようになってきました。正月の新聞は、この1年を占うような内容で占められているので、読み応えがあります。何より、教材開発が進みます。

 なお、昨年との違いは、西日本新聞が熊本から消えたことです。これは九州のブロック新聞という存在ですが、物流の関係ということでした。それに代わり、インバウンドの影響でしょうか、「THE JAPAN NEWS」という英字新聞が初登場でした。それでは、私の独断と偏見で、気になった記事を紹介してみます。なお、広告は複数紙で共通しているものが多いです。

 

【朝日新聞】

1)「観光より深く 移住よりは緩く」

■ここでは、3つの「人口」用語を知りました。少子高齢化で、地域は先細りしているわけで、どうやって地域を盛り上げていくのかということです。

・定住人口(移住・定住した人) ・交流人口(観光などで訪れた人)

・関係人口(地域内にルーツがある人 過去に勤務や居住した経験がある人)

 記事では、この関係人口が「地域再生のカギになる」という論評でした。とある町職員は、こう言われたそうです。「企業の誘致は恋愛と同じ。いきなり『入籍して』と言えば、相手は引く。町には、『本社を移してほしい・現地雇用してくれ』と言わないようにしてもらった」

 つまり、「緩い関係人口の創出」が成功につながるというわけです。今、熊本はTSMCで盛り上がっていますよね。「緩い」どころか、「急激な関係人口の創出」になっているのかもしれません!

 

2)「全国一律は必要か 夕張で考えた」

■上記の続編という感じです。2006年に財政破綻した夕張市の現在を投影してあります。記事内に「郵便」と「郵便局」は異なる事業区分というのを読んで、改めて感じ入った次第でした。銀行では昼休みが始まりましたが、郵便局も一部で始まったようです。これから、どう郵便局は変化していくのか、ゆうちょ銀行やかんぽ生命にお世話になっている身としては、新聞から目が離せない状況となってきました。

 

3)集英社広告「打破っ!」

■上記記事の裏面がこの広告です。男性の「ダハッ」と笑う漫画に次のセリフが並びます。

「縮こまらず。振り回されず。元気よく。思い切って。大きな壁に立ち向かうときこそ、肩の力を抜いて。ダハっ!と笑って、飛び越えていこう。」

 新採の先生方にとてもあてはまるコメントではないでしょうか。言いえて妙だと思いました。それもあと3ヶ月です。4月になれば、新採ではなく2年目となり、今まで「許された」ことも「許されない」面も出てくるのかもしれませんね。

 いずれにせよ、上手い掛詞だと拍手したことでした。

 

4)小学館広告「ピッカピカの一年生」

■「小学一年生」は、今年で創刊100周年なのだそうです。そこには、詩めいたセリフが掲載されていて、一年生というところを「新採」に置き換えてみます。

「新採たちは いつの時代もピッカピカです。 無垢で曇りのない 好奇心に満ちた表情は、この教育界の希望。 みんなを照らす 初日の出のようです。先輩たちはこれからも、新採の可能性を 照らし続けていきます。 新採たちが元気なら、 未来はきっと 明るいはずだから。」

 こう書き換えてみて、自分の置かれた立場が、・・・・・・・うーんと唸ったことでした。自分で書いて言うのも何なのですが。

 

5)「一皿から見える世界」

■「◯◯から□□が見える」というのは、教材開発の必勝パターンだと思います。そんな書籍も若い頃、多くありました。『一本のバナナから』(これからフェアトレードの世界へと話は進んでいきます)というのを手始めに、多くの書籍が発行されたことでもありました。

 さて、ここでは、イモトアヤコ氏と速水もこみち氏を取材してあります。リードを読めば、概要がわかります。引用します。小学6年社会科で使えますよ。

「私たちが日々口にする食材は、世界中から日本へ入ってきています。食材の背景を知ることの意味、食を通した新しい発見とは何か。・・・・」

 

6)「争いやまぬ世界」

■哲学は好きですか。このインタビュー記事は、奥が深いですよ。こんな長期休暇の時だからこそ、このような奥深い記事を読むと、日々の教育実践に深みを与えてくれると思います。引用します。

「(自己決定力を持つには)言葉を取り戻すことです。自分がなぜ、苦しいのか分からないのは言葉を持っていないから。今はマイナスの感情を持ち出すと、人間関係がおかしくなると思って口をつぐむ。それで語る力が落ちていく。」

「それ自体は何物でもない四角い箱は、腰掛ければいす、その上で書きものをすれば机、乗っかって物を取れば踏み台。それが何であるかは、関係性によって決まる。」

「世界の様々な悲劇を前に、力不足で何もできないと、もどかしさを感じる人もいるでしょうが、まずは身近でできることをする。その縁がいつか、どこかで世界と結ばれると信じる。・・・」

 これは恐山菩提寺の南直哉氏のコメントです。もう1人、内田也哉子氏のコメントも掲載されています。物事を考える参考になります。

 

7)ファミマの広告「コンビニで服を選ぶ時代。」

■小学5年社会科で使える資料です。「コンビニエンス ウェア」というのだそうです。コンビニで売られているスイーツやおにぎりなどの写真の上にソックスの写真が乗っている広告です。また、面白い授業ができそうな予感がしてきました。

 通常は何かを買う目的でコンビニに行くわけですが、見る、見つける目的でコンビニを探検してみるのもいいものですよ! ただし、何か買わないと、不審に思われるので、買いましょう!

 

8)トヨタ自動車広告「E TOYOTA」

■主な車種が写真入りで登場しています。2面ぶち抜きカラー広告ですので、出稿料はこれだけで約800万円(白黒で400万円)となります。熊日だったら半額位になります(部数によって価格が違います)。それはそうと、次の違いがわかりますか。

HEV    PHEV    FCEV    BEV

 左からハイブリッド、プラグインハイブリッド、水素自動車、電気自動車です。広告では、「個性ありすぎるEV」と紹介されています。

 

 

9)「8千メートル峰 特別じゃない」

■看護師をしながら、8000m級の登山をされている渡辺直子氏の紹介がしてあります。小見出しに、こうあります。

「子どもたちに冒険してほしい。将来につながり、ユニークな人間になると思うから」とあります。

道徳や学活の話材として利用できそうです。

 

10)SEIKO 広告「意志ある時を刻めるか」

■あの2024年のスポーツ界を牛耳った「大谷翔平」の顔、ドアップ広告です。これは保存しておくと、道徳の掲示資料となります。なぜなら、大谷選手が道徳の教科書に登場するのは、時間の問題でしょうから。未来への教材開発を進めておくといいですよね。

 

【毎日新聞】

1)「デジタル社会 行き着く先は」

■3人の論客が意見を述べておられるのですが、私が一番関心をもっている方は、若宮正子氏です。御年89歳で、プログラミングでアプリを作って、アップル会長と会見したという女性です。熊本でも講演をされて以来、本を読み尽くしたことでした。60代の私が負けていられない!と感じさせてくれた「お年寄り」でした。この女性の本を読むのが、この女性の考え方を知る一番の近道かと思います。

 そして、もう1つはNTTです。副社長という方が登場されているのですが、何と言っても、話題の「IOWN」(アイオン)です。海底ケーブルシェアを握った国が世界を制すると言われているようなのですが、このアイオンが世界を変えると注目されている技術です。電気信号から光信号へと変えることで、消費電力や伝送容量でトップに躍り出るというものです。この先、どうなっていくのでしょうか、注目に値する技術です。

 

2)ユニクロ広告「心にまで届け、ヒートテックの暖かさ」

■ユニクロの社会貢献が紹介されているわけです。こんなのは、この広告を見ない限り、私には知りようがありません。だから、新聞は重要です。こうありました。

「能登半島地震・豪雨の被災者や、支援を必要とする全世界の難民や子どもたちに『ヒートテック』を100万点寄贈する『The Heart of LifeWear』活動に取り組んでいます。新しい年の世界が、もっとあたたかい場所になりますように。」 

総合学習などで取り上げたいものです。

 

3)「預かり物 未来へ渡そう」

■マータイ氏(故人)はご存知でしょうか。アフリカの女性活動家でノーベル平和賞受賞者、日本に来て、「もったいない」という日本語を知って、これこそが重要ということで、「もったいない」運動(3R+リスペクト)を展開されていきました。

 今、地球は、3つの危機に直面しているのだそうです。

・気候変動  ・生物多様性の喪失  ・環境汚染

 具体的には、規格外品をどう商品に格上げしていくのかということで、次のものが紹介されていました。

・キリン「氷結MOTTAINAI浜なし」(規格外ぽんかんを利用)

・ローソン「mottainaiおせち」

・ドール「もったいないバナナプロジェクト」→スタバ、ロッテなどで利用・・・・・

3面ぶち抜き特集で、各種グラフも紹介されているので、総合学習にはもってこいですよ!!

 

【読売新聞】

1)キャノン広告「広がれ、キャノン。広がれ、社会へ。」

■何がいいか、それは、たんぽぽと綿毛がたくさん描かれているデザインだからです。小学3年理科で使えますよ。たくさんの「落下傘」が飛び立っているデザインです。国語2年の説明文でも使えそうです。

 

2)「魚 食べていますか」

■特集の第1回のようです。これは、「特別編 ハレの料理1」とあります。リードと冒頭部分を紹介します。

「正月などハレの日に欠かせないのが魚の郷土料理だ。受け継がれている料理にはどんな由来があり、どんな思いが込められているのか、各地を訪ねて多様な食文化を探る。」

 

「冬の魚の王様といえば、ブリ。北陸では、「ブリおこし」と呼ばれる初冬の荒天とともに富山湾に現れる。産卵のために南下してくる成魚で脂がのっている。魚介の豊富な北陸でも特別な魚だ。」

 

 これを読まれて、どう思われましたでしょうか。国語科の説明文として使えませんか。問題文も完璧だし、書き出しもエッセー風で、興味をそそられました。

 

3)「遺産 郷土の宝 先人の足跡守る」

■これは、小学4年社会科3学期教材としても使えそうですよ。万田坑に赤酒、肥後にわか、肥後こま、子飼橋商店街等々、調べ学習の導入としてもいいのではないでしょうか。

 

【日本経済新聞】

1)広告特集「強く、しなやかに」

■日経の別冊特集は、ZEHを始め、環境教育大特集です、教員の目から見れば!!

 脱炭素から、エネルギーコストを考えたゼッチの家(ZEH)等々、「宝庫」です、毎年。

 

2)「空飛ぶクルマ 27年運航」「気が利くAIマルチに働く」

■日経というと「経済」と思われるかもしれないのですが、私的には「デジタル情報」だと捉えています。全紙で一番、デジタル面に詳しい記事が満載です。上の見出しはその一部でして、ぜひ興味のある方はお読みください。もちろん、経済もあるのですが!!

 

【産経新聞】

1)「災害対策 大丈夫?」

■面白いと思ったのは、新聞紙で袋と言うか器、スリッパ、脱臭ごみ箱、応急の添え木、薪の作り方が紹介してありました。総合学習でやっていくのもいいのかなと思います。1月16日は、阪神淡路大震災の日を迎えます。

 このページには、広告としても防災備品がたくさん紹介されていますので、子どもたちに確認しておくのもいいかもしれませんね。

 

2)「情報の速さに追いつけない。人間は、思考を放棄したのか」

■福沢諭吉の『西洋事情』の話から始まります。表紙が地球儀に電信柱が描かれている絵が、なんとも言えませんね。先見の明があったのか、さすがです。

 蒸気機関車から電報、電話、そしてウィンドウズ、インターネット、さらに現在、SNSに闇バイトへとつながる歴史変遷が記述されています。

 歴史に「もし」はないというけれど、パラレルワールドというキーワードを用いて論が進めてあります。選択次第で、もし違う選択をしていたら、ウクライナの戦争もなかった、・・・・・もう1つの世界もありえたのではないか、この考え方を「世界線」と呼んでいるのだそうです。

 小見出しが意味深です。

「承認欲求に溺れる民衆。克服できる日は、いつ来る」

 

3)佐賀米の広告「さがびより 夢しずく 特A評価基準」

■小学5年社会科で使える資料です。この広告を見せて問います。

【発問】では、熊本県には特A米があるでしょうか。

 たくさんありますよね。ここから米の学習に入っていきたいものです。

・どうすれば、特Aの米が作られるのでしょうか。

・米はどうやって育てられるのでしょうか。

・米の県別生産量等々のグラフ解読・・・・・・

 

 家庭科の教材としても使えます。こんなセリフがあります。

「糖質エネルギーで持久力アップ!! スポーツにはもち食!!」

【発問】これはどういう意味でしょうか。

 

4)カネカの広告「カガクでネガイをカナエル会社」

■亀が呼吸のために海面に姿を表した写真が掲載されています。曰く、

「カネカは、考える。プラゴミが海を汚すなら海中で生分解できないか。」

 として、商品の写真が紹介されていて、総合学習の環境教育で使えますね。

 

5)積水ハウスの広告「家に帰れば、積水ハウス.」

■これは、3学期国語科の冒頭授業の詩にて紹介したい内容です。味わってみましょう。

「はじまりに帰るとき」

地球が 太陽のまわりを 一周して

新しい年の はじまりの この日に帰る

 

帰ってくる またここに はじまりの場所に

家族もまた 帰ってくる みんな笑顔で

 

生まれ育った 故郷に わが家に

どんなに遠くても 何年がたっても

 

はじまりは なつかしく なぜだろう

帰ることが こんなにも うれしいのは

 

帰ってくる 家族たちが この家に

新しい年の はじまりに ことしもまた

 

こんな場所は 世界にふたつとない

こんなに不思議な 幸福な場所は

ほかにない

 

 別観点から言うと、私みたいな年齢になってくると、平均寿命まであと15年なわけで、10年なんて、あっという間です。70代で亡くなる芸能人の方がとても多い昨今です。最近、父を亡くした身からすると、この詩は妙に心に刺さってくるのですね。「人は、生まれる前の場所に、また帰っていくのかな!」と。いらぬ話で失礼しました。

 

【熊本日日新聞】

1)別冊「世界へ」

■ここに、小学4年社会で使える、各市町村のまちづくり情報が詰まっています。もちろん、本紙にも。各地の情報網は、地元新聞ならではですので、ここから各自治体のまちづくり情報が読み取れます。例えば、この別冊には、自治体トップの挨拶が掲載されているので、副読本が扱っている自治体トップは何と言っているのか、確認してみるといいですよ。

 特に第3部が役立つかと思います。

 

2)「肥後五鶏 絶滅から守れ」

■これ、知っていますか。私は「天草大王」と「肥後ちゃぼ」、「久連子鶏」の3つは知っていましたが、あと2つはノーマークでした。「熊本種」「地すり」というものだそうです。表に、この5羽の生体と受精卵の保存状況が紹介してありました。両方兼ねているのは「天草大王」のみだそうで、鶏肉好きな私としては心配の種となってきたことでした。