スリランカの自然が教えてくれた「アーユルヴェーダ」

 

アーユルヴェーダ講師として15年近く経ちます。20年前はアーユルヴェーダの本場はインドと思われていたのが、今ではスリランカのアーユルヴェーダも知られるようになりました。

 “スリランカのアーユルヴェーダ”は、日本人に親しみやすく、実践しやすい内容ばかりです。それは、アーユルヴェーダがその土地の文化や伝統と共に継承される伝承医学であり、スリランカと日本の間には沢山の共通点があるからの様に思います。島国であること、仏教の教えがあること、人口がインドや中国ほど多くなく、民主主義であり、海外諸国の影響を受けてきたこと。水に囲まれた民族は、水に守られ、水による豊かさを享受してきました。各地にみられる豊かな水田。モルディブ・フィッシュの魚出汁を使う文化。スリランカン・カリーにはマグロ等がよく使われます。沖縄のうっちん茶はウコンですし、和菓子によく使われるニッキはシナモンです(全く同じ植物ではなく、使用部位も違いますが)。生姜も両国の食卓でよく使われます。その他にもオクラ、サツマイモやナスを使ったカレー。そして何よりスリランカ人と日本人は「和」を重んじる文化です。

 

インドは行ったことがありませんが、インドで学ぶアーユルヴェーダは激しく、厳しい修行のような印象があります。「人生」というものをガンジス川に観るとよく言われますが、人々が入浴をしたり洗濯物をする生活用水であり、山羊が水を飲んだりする川は、同時に排泄物や遺体が浮いてくるような汚水であると聞き、「生」と「死」が背中合わせのような光景を想像します。穏やかに流れるスリランカのマハヴァリ川は土色に濁っているとは言え、緑の自然の間を緩やかに潜り抜け、したたかに、豊かに土地を潤します。また、スリランカでは水力発電が主な電力です。川の印象と同じように、スリランカの自然が教えてくれる「アーユルヴェーダ」は優しく、寛容でスリランカ人の様にお人よしな印象です。

 

アロマやハーブ等の自然療法の歴史にも、植物療法の源流において三千年の歴史をもつアーユルヴェーダの説明があります。六世紀頃、仏陀の主治医ジーワカもアーユルヴェーダ聖医でした。仏陀がお腹を下したとき、ジーワカは薬草を飲ませるのではなく、青蓮の花に薬を施し、香りと一緒に処方したそうです。アーユルヴェーダには、人の感覚を通じて植物のエネルギーや“波動”を薬とする考えがあります。香りだけではありません。心地よい太陽の光、温度、鳥のさえずり、爽やかな風、澄み切った青い空は、全て人間を癒やし、治癒力を持ちます。また、アーユルヴェーダのトリートメント・マッサージは、体と心がつながる感覚を通じて本来の自分を取り戻す「特効薬」です。

 

1951年のサンフランシスコ講和会議で「憎しみは、憎しみによって癒えず、ただ愛によってのみ消える」という仏教の教えによる名演説を残した、JR.ジャヤワルダナ(のちに大統領)。ジャヤワルダナが、スリランカで仏教を学んだ釈興然(日本人僧侶)の弟子である鈴木大拙に、「日本とスリランカにおける仏教の違い」を尋ねたところ、「大事なのは、違いではなく共通点である」と答えたといいます。今後も私がアーユルヴェーダを伝えていく上で大事な座右の銘です。