Love therapy~夢の中でもそばにいさせて
日高さん。
「それでその時さー…」
俺は近くの席に座っていたメンバーと他愛のない話をしていたが、
彼女が駆け足で部屋を出ていくのが見えたので、
いつもの様に目で追ってしまった。
(いつもの様に、笑)
<あれ?なんだか顔色が悪かった様な…?>
気のせいだったらいいと思ったけれど、
妙な胸騒ぎがして、居てもたってもいられなくなった。
(ムフフ♪)
浦「どうかした?」
「ごめん、ちょっと出てくる!」
少し早足で廊下を進んで行くと、
角を曲がった先の休憩室の前に、うずくまっている女性がいた。
<あれは…>
俺は急いで駆け寄り、傍らに膝をつき様子を窺った。
ゆっくりと頭を上げた彼女の顔色は悪く、
体調が悪いのは一目瞭然だ。
「どうしたの!?」
『あ、…なんでもないの。ちょっと立ちくらみがして…』
「何でもなくないよ。顔色悪いし…
立てるなら、休憩室に行こう?」
(普通の事だけど優しい…)
『うん…』
<本当に辛そうだな…>
俺は体を支えると彼女の歩幅に合わせて、
すぐ近くの休憩室に入った。
「ちょっと横になった方がいいよ」
「今日はこれで終わり?」
『うん…』
「オッケー。
じゃあ、少しだけ待ってて。
すぐに戻ってくるから」
元気なく頷く彼女を一人残して行くのは心配だったが、
俺は一旦休憩室を後にする。
<確か、荷物の中に、いろいろあったはず…>
(そんな、色々持ってんの?)
2話
彼女サイド。
<光啓が通りかかってくれて、本当に助かった…>
(良かったねぇ)
そう思いながらソファーにゆっくりもたれかかって目を閉じる…
不意に涼しい風が頬を撫でるのを感じて、ゆっくりと目を開けた。
「!?」
気づけば私の体はいつの間にかソファーに横たえられており、
その横に彼がピッタリと寄り添い、
洒落た扇子で私を扇ぎ、風を送ってくれていた。
(優しい♪)
『あ、起きた?気分はどう?』
「う、うん…大丈夫、だと思う」
<いつからこうしてくれていたんだろう…>
『そっか、よかった。
あ、色々持ってきたけど、いるかな?』
彼は優しい声でそう言いながら、
冷たい飲み物や塩飴を手渡してくれる。
起き上がろうとする私に彼はそっと私の肩を押さえ、それを制した。
「?」
『まだ心配。もう少し横になってなよ』
(言われたい…)
扇いでくれる風は気持ち良かったが、
その分彼に負担をかけていると思うと気が引ける。
けれど、あまりにも心配そうに見るので、
お言葉に甘えて、しばらくそうさせてもらうことにした。
(心配そうな顔も色気あるんでしょうね♪)
『いつから体調悪かったの?』
「うーん、…ミーティングの終わり、くらいかな?」
『そっか。やっぱ夏バテかな…いつも頑張ってるから』
しばらくの間そうして話していると、
不意に彼が真剣な顔をして私の手を握り、
『頑張りすぎ』と、静かに一言だけ告げた。
「え?」
『もう、一人で無理しちゃダメだからね?
何かあったら、なんでも俺に言ってよ』
そう言うと、握りしめた手にギュッと力を込めた。
私の肩の力が抜けたのを感じ取ったのか、
彼は柔らかく微笑みながら、
私の手の甲に触れるだけのキスを落とす。
(キャッ(´∀`))
<ついていてくれるって思うだけで、こんなにも元気が出てくるんだ…>
(そうなんだよ~)
私は心の中でそう思いながら、繋いだ手をそっと握り返すのだったー。
3話。
彼サイド。
彼女が体調を崩してしまってから、数日ー。
デートに誘った。
「どうかな?」
『ふふ、断るはずないよ!
デートなんて久しぶりだから、すごく楽しみ!』
(嬉しそう(笑)
ニコニコと笑みを浮かべる彼女を微笑ましく見つめながら、
俺はデートプランを考える。
<彼女の体調が万全になったとはいえ、まだ油断は出来ないし…
何をしようかな?>
「うちの近くでお祭りやってるんだ。一緒に行かない?」
『お祭り?行く行く!』
目を輝かせて即答する彼女の可愛いらしさに
俺は自然と笑顔になる。
(デレてますよ(笑)
「じゃあ決まり!早く行こう!」
俺は弾む心のまま、お祭り会場へと向かった。
(はしゃいでらっしゃる(笑)
焼きそばを口に運びながらチラリと横目で彼女を見ると、
たこ焼きを美味しそうに頬張っている。
「すごく美味しそうに食べるよね」
(私はあまり嬉しくないなぁ)
『うん、もちろん!だってすごく美味しいんだもん』
『ちょっと気になったんだけど、
今まで食べた物の中で一番美味しかったものって何?』
「うーん、女の子から作ってもらったケーキかな」
(また、そういう言い方…笑)
『…へー』
俺がイタズラめいた表情で言うと、
少し表情を固くして、拗ねた様に相槌を打つ。
俺はそんな彼女の顔を覗き込みながら、
ニッと笑って口を開いた。
「…前に作ってくれたケーキの事だけど?」
『もう、意地悪!』
そう言いながら顔を逸らしたが、
その口元は嬉しそうに揺るんでいる。
<こんな可愛い所、誰にも見せたくないなー…>
(思った通りで良かったですね♪)
そう思った俺は、彼女を周囲から隠す様に、
そっと抱き寄せたのだったーー。
けっこうお気に入りのお話でしたっ煜