Love therapy~夢の中でもそばにいさせて
西島さん。
彼サイド。
打ち合わせが一段落したタイミングで俺たちも席を立つ。
その瞬間ーー。
『…っ』
彼女が一瞬足元をふらつかせた様に見えた。
<何かにつまづいたのかな…?>
「大丈夫?」
心配になった俺はそう声をかけたのだが
彼女はわずかな間をおいてからキョトンと首をかしげた。
『ん?何が…?』
「いや、今、少しふらついてた様に見えたんだけど…」
『え~、きっと見間違いだよ~』
(しらを切るか。つまづいたとか言えば?)
「そうかなぁ…」
<確かに、普段と変わりない様にも見えるけど…>
「まぁ、大丈夫ならいいけど。…
絶対に、無理はしない様にね?」
『うん、ありがとう!』
彼女は軽い調子で応えて笑ったが、
付き合いの長い俺の直感では、心配をかくさせまいと、
具合の悪さを誤魔化している様に感じられた。
(さすがですね)
<よく見てみると、顔色も少しよくない様に見えるし…夏バテかな?>
そう思いつつ、彼女が何も言ってこないため、
これ以上追及するのは野暮だと感じ、
俺はそっと見守る。
<頑張り屋さんで、
たまに無理しすぎちゃう所があるからなあ…>
(あなたもね)
<どうにかして、体を休めてもらいたいけど…>
そう考え、俺はあれこれと思考を巡らせる。
<そうだ!>
「今日はちょっと寄る所があるから、駅で別れよう」
そうして駅に着くと、
俺は微笑みながら彼女が改札を通るのを見送って、
<よし、じゃあ俺もいきますか…!>
改札とは反対方向に足を向け、
「ある場所」へと向かうのだったー。
2話
彼女サイド。
家に帰って思い出すのはさっきの事。
休憩に入って気が緩み、
足元がおぼつかなくなってしまった時、
彼はすぐに気づいて声をかけてくれた。
(すぐに気づいてくれるなんて
)<心配かけたくなくて誤魔化したつもりだったけど、
やっぱりバレてたかなぁ…?>
心配そうに私を見つめる顔が頭の中に思い起こされる。
けれどそれはすぐに改札での別れ際、
優しい笑みを浮かべてくれた彼の顔に変わった。
<あれ?いつの間に眠ってちゃってたんだろ?>
<それに、私、電気消したっけ…?>
不意にドアが開き、誰かが入ってきた。
「た、隆弘…だよね?」
合鍵を渡しているので彼だと思うが、
もし万が一だと思うと一気に血の気が引く。
(怖かっただろうね。)
『うん、そうだよ。驚かせてごめん』
「よかった~…でも、こんな時間にどうしたの?」
『それはまだナイショ。だから、そのまま寝てて』
(内緒って、笑)
起き上がろうとした私に優しく微笑みながら近づいてきたかと思うと、頭を撫で始める。
<あ、そっか。これは夢なんだ…>
<明日も朝から仕事があるのに私の部屋にいるわけないもん…>
『具合どう?』
「ずっと寝てたから、だいぶいいかな~」
『ふふっ…なら良かった』(この時の顔見たいなぁ♪)
一瞬彼の手が止まり、
吐息が私の頬をくすぐった。
(顔が近い♪)
『あ、出来合いだけどスープを用意したから食べてね。
あと、夏バテに効きそうなグッズと…』
彼がそう言いかけた所でどこかでチリンと涼しげな音が鳴った。
『そうそう、あれも見つけて、つい買っちゃった』
「わぁ、可愛い~」
『でしょ?』
(喜んでもらって良かったね煜
私の感想に目を細めて微笑むと彼はベッドから立ち上がる。
『それじゃあ、今夜はゆっくり休んでね』
そう言いながら私の頭やおでこを優しく撫でてくれたので
<そうされると、気持ちいいなぁ…>
私は頷いて目を閉じ、幸せな気分に浸るのだった。
翌朝起きると、体が軽くなっていた。
<それにしても随分リアルな夢見たなぁ…>
そう思った瞬間窓辺から風鈴の音が聞こえた。
<もしかして、夢じゃない!?>
昨晩感じた彼の手の温かさを思いだし、
鼓動が大きく跳ねるのだったー。
3話なし。続き読みたかったなぁ渹