瑛二とおじさん | 青木 宝代 (Takayo^¥^のPrecious thing)

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幸なる訪ずれ♪
晴眼にて素敵に偶詠する♪♪

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しかし、今はブログネタメインで更新しています〜♡

おじさんの家に行くのは、いつも少し特別なことだった。瑛二は小学校の夏休みの間、母親に手を引かれておじさんの家に通った。おじさんは母親の兄で、名前は一郎と言った。彼は独身で、少し変わった趣味を持っていたが、瑛二にとってはそのすべてが新鮮で魅力的だった。


おじさんの家は古い木造の一軒家で、庭には様々な植物が茂っていた。夏の日差しが庭に降り注ぐと、葉っぱの間から光の斑点が床に映し出された。その光景は瑛二の心に強く残っている。


おじさんは植物学者であり、珍しい植物を集めることが趣味だった。庭の一角には見たこともない花が咲いていて、その一つ一つにおじさんは名前を付けていた。ある日、瑛二はおじさんの案内で庭を巡った。おじさんは笑顔で植物の話をし、瑛二も興味深くそれを聞いた。


「この花はね、南アメリカのアンデス山脈から持ってきたんだよ」おじさんは赤い花を指さしながら説明した。「名前はインカリリウム。太陽の光を浴びると、一層鮮やかになるんだ」


瑛二は目を輝かせてその花を見つめた。その美しさに心を奪われたのだ。


ある日、おじさんは瑛二に特別なプレゼントを渡した。それは小さな鉢植えの植物で、まだ蕾がついていた。


「この花は夜に咲くんだよ。月の光を浴びると、美しい白い花を咲かせるんだ」おじさんは微笑みながら言った。「君が夜に見守ってくれれば、きっと素晴らしい花を見せてくれるだろう」


瑛二はその言葉に胸を躍らせた。彼は夜になるのを待ちきれず、月が昇ると鉢植えを手に庭に出た。おじさんが言った通り、蕾はゆっくりと開き、美しい白い花が夜の闇に浮かび上がった。瑛二はその光景を見つめながら、おじさんの言葉を思い出した。


「花はね、見守ってくれる人がいると、もっと美しく咲くんだよ」


瑛二はその言葉を心に刻んだ。そして、その夜から植物への興味が深まり、やがて自分でも庭を作るようになった。おじさんの影響は、瑛二の心に深く根を下ろし、彼の人生に大きな影響を与えたのだった。


おじさんの家を訪れるたびに、瑛二は新しい植物の話を聞き、その知識を吸収していった。大人になった今でも、彼の庭にはおじさんから教わった植物が咲き誇っている。瑛二は時折、夜の庭に出て、月明かりの下で花が咲く様子を見つめる。その度に、おじさんの温かい笑顔と優しい声を思い出すのだ。


おじさんはもうこの世にはいないが、その教えと共に、瑛二の心の中で生き続けている。彼の庭に咲く花々が、まるでおじさんの遺した宝物のように、今でも瑛二を励まし、導いてくれる。