Victoire(ヴィクトワー)主宰・AROMAMUSICA(アロマムジカ)代表の杉浦菜美です。様々なアプローチで『香りから広がる世界』の魅力をお届けしています。

 

 

桜開花の便りが待ち遠しい今日この頃、といったところでしょうか。

先日、食事に行ったら、「桜のスープ」というものが出てきました。

運ばれてくると、ほんのり桜の香りがふわ~と広がり…

白くとろみのあるスープに花が浮かんでいるのが見えます。

自然あふれる公園に隣接する建物の最上階にあるこのレストランは、

お花見シーズンになるといつも満席。

この日は、まだ咲いていない桜の樹々を見下ろし、

桜のスープをいただきながら、あと何日かしたら、窓から見える色彩も変わるのだろうなと、

人々が待ちわびる風景を想像しながら過ごしました。

 

 

さて、そんな時季だからでしょうか…

「桜の香り」のことを取り上げてみたくなりました。

長くなりそうなので、3つに分けてお送りします。

もちろんお花見の報告でもないし、開花予想でもないですが、

ちょっと違った視点から、「桜」を楽しんでいただけたらなと思います。

(少々アロマの専門的な部分も入ってくるかと思いますが、

興味のあるところだけ、持って帰ってくださいね。)

 

 

桜の香りの話①100%天然桜アロマと抽出技術、日本産精油の盛り上がり

 

 

「桜アロマ」をご存知ですか?

100%天然の桜アロマというものは、これまで

抽出が不可能だと言われてきました。

しかし、日本で開発された新しい技術によって

100%天然の桜アロマが誕生。

この技術と言うのが、「低温真空抽出法」です。

 

ここでまず、抽出法について。

 

植物の香り成分を取り出す方法としては、「水蒸気蒸留法」が一般的です。

これは、原料を抽出釜に入れ、釜の水を沸騰させたり、蒸気を当てたりする方法。

熱によって精油成分が揮発→香り成分を含んだ気体が冷却管に送られ→再び液体に戻ります。

このとき表面に浮くのが「精油」です。

(残った液体が「芳香蒸留水」。「フローラルウォーター」「ハイドロゾル」とも呼ばれます。)

 

また、ジャズミンやローズなどで見られる「有機溶剤抽出法」

植物を石油エーテルやヘキサンなどの有機溶剤に溶かした後、

溶剤を蒸発させた残りをエチルアルコールで精製し、香り成分だけを得るという方法もあります。

(こうして抽出されたものは、「アブソリュート(Abs.)」と呼ばれます。)

 

これらに対し、桜アロマの「低温真空抽出法」は、その名の通り、低温(25~30℃前後)で抽出

植物が保有する水分(細胞水)を抽出したもので、

水蒸気を吹き込んで高温で蒸したり、溶剤に浸したりしないので、

熱による成分の変質が少なく、溶剤も含まない植物本来の香りを楽しめるとのこと。

(その成分や効能が注目され、大学での研究や医療機関などにも採用されているそうです。)

※こちらは「精油」とはまた違い、「水溶性アロマ」と呼ばれています。

 

ソメイヨシノの花から抽出した、100%天然の桜アロマは、

日本各地の国産アロマを紹介するショップ、The Aromaさんで取り扱っています。

その他、ローズ、ヨモギ、キンモクセイの水溶性アロマも販売されています。

http://the-aroma.jp/

 

 

低温真空抽出法については、以下の書籍内で目にしたことがあったので、

今一度読み直してみました。

 

アロマテラピーと自然療法の専門誌・アロマトピア No.139 (フレグランスジャーナル社)

≪特集≫地域活性化に貢献する「香り」より

 

『新しい抽出技術と香りの機能性研究による「日本の植物の香り」の将来性』

SHIODAライフサイエンス株式会社・川人紫

 

(川人紫氏は、1994年ハイパープランツ株式会社の前身、川人貿易事務所を設立し、

精油の輸入卸を開始された方。)

 

川人氏の文章の中では、日本アロマセラピー学会の発足~認知症の予防~植物の香りと農業の6次産業化、

また「低温真空抽出法」については、野菜や果実、花の微細な香りの抽出が可能になると

述べられています。

そして「日本固有の香りを世界へ」、というミッション。

書籍の発行が2016年秋ですから、現在分かっている日本産アロマの産地や種類を挙げてみても、

この分野の注目度が年々上がってきていることが分かります。

 

さて、話は変わりますが…

 

昨年、「一般社団法人 日本産天然精油連絡協議会」が発足しました。

(理事長は、フレグランスジャーナル社の顧問・津野田勲氏。)

アロマに関する様々な協会が存在する日本。

香りに関する様々な分野があっても良いとは思いますが、業界全体の発展や、アロマを使う人のことを考えると

個人的には、団体が多すぎるのは、混乱にもつながってしまうのではないかな?と以前から少々懸念していました。

その点で、「本物のアロマ」の基準を統一し、発信しようという動きは、

アロマ業界全体の信頼にもつながっていくのではないかなと、個人的には期待しています。

今後も専門家の方々の考えや動きに注目していきたいと思います。

 

2017年結成の日本産天然精油連絡協議会については、こちら↓

https://www.j-neoa.or.jp/index.html

(日本産精油yuica生みの親、正プラス株式会社の稲本代表も、会の発足、運営のために尽力されています。)

 

 

さて、「桜アロマ」という、文字だけ見るとふわ~とした話題から、

「低温真空抽出法」「日本産天然精油連絡協議会」と…

なんだなんだ?漢字だらけの硬―い話になってしまったところで…

ひと休み。

桜餅の香りのお茶はいかがですか?(つづく)

 

次回は…

 

桜の香りの話②茶農家がオススメする桜葉茶