「ここから5試合やるぞ」
これ、全日本少年大会・県大会初戦のベンチで言ったチームの合言葉。
そう、決勝戦まで進めば5試合やる計算。
ひとつひとつトーナメントの階段を登っていって、ようやく優勝に手が届く位置まで辿り着ける。
優勝を目指してるんだけども、まずは5試合やるために、目の前の試合をしっかりと乗り越えていこう。
そう合言葉を口にして今回の全日本少年大会がスタートしたのです。
で、結果としては、優勝からちょっと離れた3位。
それでも、3位決定戦も合わせて、合計5試合やったんだね。
立派。物凄く立派よ。
優勝できなかったのは、何かがダメだったからわけでもないし、何かが起こったわけでもない。
しいて言うなら、風がちょっと吹かなかったくらいかな。
準決勝、結果として優勝チームにPK戦で負けたわけですが、これも立派な負け方ね。
サプライズ的なゴールを決められた後は、固められたゴール前を破るにはちょっと難しすぎた。
それでも、終了間際にお返しのサプライズ的なゴールで同点に追いつくんだから興奮したわ。
こうした展開の流れだと、本当はこっちがPK戦をものにするんだよね。
でも、うちの選手、2本外しました。
技術的に悪かったわけでもなく、立ち振る舞いも含めて、しっかりと蹴れていました。
そう、ビシッとね。それが、バーに少し当たっただけ。
蹴れる自信、決める自信、向き合う自信、それらがあったから、自信を持ってビシッと蹴れたわけだ。
迷いがあったわけでもなく、ミスヒットがあったわけでもなく、ちゃんと狙ったところへ狙ったようにビシッ。
外した選手は大泣きしてたけど、外した原因がどこかにあったわけじゃないし、どこかに残してきたわけでもない。
それほど、自信を持って蹴り込んでいるんだから、立派じゃない。
決まらなかったのは、技術的精神的な問題がないんだから、もう神様が吹いてみる風の問題だけでしょ。
そう言えば、号泣してたあの選手、夏前の大会で泣きながらプレーしてたことあったんだよね。
あの時の涙はたしか、不甲斐ない自分と、どうしていいか分からなくなった不安から、震えるように出てきた涙だったと記憶してます。
「泣きながらサッカーやってるんじゃない!」「君みたいな立ち振る舞いは許さない!」
親もみんなも見ている前で、非情にもそう強く叱責しました。
そこから彼は私が思う以上に自分自身で努力を重ねて、少しずつ強くなっていったんです。
きっと、弱い自分を知っているからこそ、アクセルを踏み続けてきたんだと思います。
だから、彼を信頼しています。そして、ポジションを任せ、キックも任せられました。
私の思ったように自信を持って蹴って、そしてまた泣きました。
流れ出る涙が見つからぬよう、隠れながらひっそりとベンチに下がってきたあの夏前。
そして、グランドに手をつき、嗚咽を漏らしながら大声で号泣した今回。
私自身、あれから時間が経って、負けた悔しさなんてどんどん薄れていくけど、「それにしてもこいつら立派だったなぁ」って思うことがどんどん大きくなっていってることが、何よりも今回の大会を物語っているよね。
失ったものなんてひとつもないし、後悔なんてものも何にもない。
それよりも、立派な涙を流せるくらい、この子たちの表現と立ち振る舞いは素晴らしかったと感心させられます。
3位決定戦、夏の大会で敗れた相手をほとんどの時間帯で圧倒して勝利。
東北大会のおまけまで獲得して、あと4試合くらいは続きを見られることになったんだから、ちゃんと力が付いてるんだわ。
目指してきた5試合目の勝利。
南の方向から北の方向へ進路は変わりますが、またひとつ成長を掴んできたいと思います。
神様が風をこちらに向けなかったのには、必ず意味があります。
「乗り越えるのは今じゃない」
「もう少し頑張った先に乗り越える風を少しだけ吹かせましょう」と。
by paris