ある卒団したOBから夜に電話がありまして…。

今春で大学4年生を迎える彼ですから、就職戦線真っただ中なんですね。

6月に就職試験を控えているということで、ストレスもあったんでしょう。

23時過ぎに来た電話でしたが、途中で私は気が遠くなりかけました。

というのも、酒を飲んでるのかと思う位、熱過ぎる会話なんですね。

会話の隙間もなく、私がしたのは数度の相槌だけです。

途中途中、あれ?私が怒られてるんかな?と動揺しそうになり、

こりゃいかんと、落ち着き払って前後の会話を確認したのだって数え切れないし。

内容的には5分程度でしたが、止まらなかったんでしょうね、

1時間以上もの時間を使って、同じことを10回以上リピートして来ました。

オチのない会話。もう嫌がらせとしか思えません。

その中で彼が何度も述べた必殺フレーズ。

「だったらやれよ!」

この言葉が今の俺なんです!…だそうです。

なんでも、中1の練習試合時に私に言われたとのこと。

自信や自負なんかどうでも良いけど、だったらやれよ!点数決めて来いよ!と。

なんとなく覚えてますよ。

FW出身の彼を私はサイドバックで使っていたんです。

スピードだけで技術も駆け引きもなかったですから。

そしたら、俺はFWだ!みたいな主張してきたんですね。

そこまで言うんだったら、「だったら点数決めて来いよ!」と。

こんな感じです。

それを彼は、今の自分に言い聞かせてるらしいんです。

自分の夢に向かって進もうとしている6月の試験。

やりたいこともあるけれど、難しいこの局面に対して「6月に自分の人生の全てが決まる」と。

だから、「だったらやれよ!」じゃないですか?

後悔していることもたくさんある。だから、だったらやれよ!じゃないですか?

そうですよね?

そう私に訴えてきたんですね。

『…そうだな』

1時間以上となる格闘の末、僅かに見せた会話の隙間にすかさず滑り込んで言ってやりました。

じゃあ俺切ります。ありがとうございました。

そう言って電話が切れました。


温めたお弁当はすっかりと冷え、人肌程度になった味噌汁を啜りながら、

箸の差さらない固まったご飯を持ち上げました。

せっかくの手作り弁当が…。



だったら温め直せよ!


by paris