「時間はかかるけど、きっと大丈夫さ」

ある指導者にそう言葉を掛けて電話を切りました。


私のチームも始めは負けることばかりでした。

試合の度に負けるので、選手は辛かったでしょう。

大敗することもあれば、どんなに良い試合をしても僅差で負けてしまう。

そんなことが何試合も何日も続くと、試合前まで元気一杯だった選手たちが、

キックオフの笛が鳴ると途端に下を向いてしまうのです。

サッカーをすればするほどサッカーが嫌いになっていく。

そんな心境が傍から見ている私にもそれは伝わっていました。

「君たちは今サッカーを楽しんでいるかい?」

「・・・」

帰ってこない答えが答えです。

好きだったサッカーがどんどん嫌いになっていく。これほど辛いことはありません。


彼のチームを横で見つめてきた数年。

去年あたりから子供たちの笑顔が少なくなっていました。

そして一人づつサッカーから離れる選手が出てきてしまいました。

今回の開幕戦、中学生の部員不足により小学生が数名出場していました。

強豪が集うリーグの中、力差は明らかです。

「きっとこれからも負け続けることが多くなるよ。残念ながらこれが現実だと思う。」

僕もそう思います。敗因と課題も口にする彼は、今も必死にもがいています。


勝つチームがあれば、負けるチームある。

出来ることと出来ないこともあるし、力があるチームもあれば、ないチームある。

そして、上には上がいて、そのまた上にも上がある。

みんな分かってる。

だから、勝てなくてもいいじゃない。負けてもいいじゃない。

みんな滅多に言わないけど、言っていいじゃない。

でもそう言えるのって、そのことが分かってる大人だけでしょう。

今いる子供たちの立ち位置を正しく理解できれば、認めてあげられるはず。

それが出来ないのは過剰な期待を持ってしまった保護者だけで十分でしょ。

「やればできる」なにをやるの?勝利?無理さ。

一番大切なのは、そこにサッカーの楽しさの違いが存在させてはいけないこと。

自分たちがどこに位置していようがサッカーは楽しくなければならない。

負けを続けていた選手たちに言った言葉かあります。

「0-100で負けようが、100-0で勝ったチームよりサッカー楽しんでやろうぜ!」

ゾンビでいいじゃん。

打たれても打たれても、這い上がって、それだけじゃなく、どんどん勢い強くなって。

相手にしてみれば、結果は勝ったとしても、なんかモヤモヤするでしょう。

こっちにしてみれば、これだけ点数取られてんのに俺達不死身だわって大盛り上がり。

それが続くと、楽しみの部分が自然と増えて強くなるんだわ。

こんなリアクション取れた!こんなことが出来るようになったって。

保護者だってそのうちサッカーの価値観が変わるってもんさ。

うちのチームは弱いよ。

でも強いよ。

ジャンプアップなんて必要なんかないんだから。

指導者が一番理解してあげれば、目に見えない小さな一歩一歩に喜びが生まれるのよ。


「君はなんでサッカーをやっているの?」

この答えに指導者は何よりも一番に応えてあげなくてはなりません。


by paris