昨夜はサントリーで、インバル 都響の第1000回(!)定期を聴きました。
ブル9一本勝負。
サマーレ、フィリップス、コールス、マッツーカ(SPCM)による補筆完成版。
SPCM版は昨年8月にダウスゴー PMFオケで聴きました。
SPCM版といっても一つではなく、昨夜は「SPCMによるフィナーレの演奏会用ヴァージョン(1983-2012)をフィリップスが改訂(2021-22)」したもの。
スコアには更に、Update February 2024とあります。
『月刊都響』の解説には、そのフィリップスが寄稿。
昨日の演奏も会場に聴きに来ていた模様。
演奏は第3楽章までが楽しかった!
都響は16型。
コンマスは山本さん、隣に水谷さん。
スコアには"Dem lieben Gott”(親愛なる神へ)と書かれ、神に捧げられた曲。
神への親近感が無いので、共感は難しい。
でも、好きな曲です。
最近(尾道旅行の帰りの機中)、志賀直哉の『暗夜行路』を読んだばかりなので、それと重なる。
第1楽章は主人公の謙作という存在の悲劇を予感させるもの。
第2楽章は容赦なく謙作に降り掛かる不幸の連続。
第3楽章は鳥取の大山に登り、大自然に抱かれて浄化される様子。
インバルは88歳。
にこやかに登場しますが、曲が始まると会場の空気は一変。
インバルの指揮は大きく、元気です。
Wコンマスに率いられたオケにも、気魄が感じられます。
第1楽章はスケールが大きくたっぷりしている。
第2楽章はノット 東響をも超える、これ以上はないという苛烈な演奏。
第3楽章は大きなものに包まれるような音楽で、非常に心地好い。
コーダの力強さは尋常でなく、GPの後は全てが終わって静かに昇天。
第3楽章まで聴いて、すっかり満たされた気分。
問題は第4楽章。
ここで終わるのがブルの本意でなかったとしても、第4楽章は蛇足に聴こえてしまう。
フィリップスによれば、第4楽章はスケッチに基いて復元した類ではなく、「最初の3つの楽章に劣らないほど完成された内容」のオーケストラ・スコアに基いているとのこと。
そうだとしても、それをブルが決定稿としたかは知る由もない。
SPCM補筆完成版が今後ブル9演奏の定番となるかは、何ともいえない。
実際、SPCM補筆完成版を録音したラトルが、11月にバイエルン放送響と振るブル9はコールス校訂版。
コールスはSPCMの一人ですが、今年3月に飯森 群響で聴いたのと同じ、3楽章で終わるヴァージョン(2000)かと。