昨日は藝大奏楽堂で、ディオティマ(Quatuor Diotima)のシェーンベルク 弦楽四重奏曲 全曲演奏会を聴きました。

 

シェーンベルク生誕150年ということで企画された、今年の東京春祭の目玉。

 

休憩込み約6時間のシェーンベルクのマラソン・コンサート。

 

シェーンベルクの弦四全曲を聴けるのは大変貴重。

 

これが最初で最後になることは間違いない。

 

弦四を通してシェーンベルクの創作を概観できるのも有難い。

 

しかも、演奏するのがディオティマと万全。

 

偶にはこういうハードなコンサートを聴かないと。

 

曲目は以下の通り。

 

弦四3 op.30(1927)

弦四 ニ長調(1897)

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弦四1 op.7(1905)

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弦四4 op.37(1936)

弦四2 op.10(1908、w/ルイテン)

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プレスト ハ長調(1895)

スケルツォ ヘ長調(1897)

《浄められた夜》op.4(1899、w/安達、中)

 

弦四全曲演奏会なのに、最後に敢えて弦六《浄められた夜》を持ってきたのは謎。

 

この曲は無くても良かったような。

 

シェーンベルクの作曲の師はツェムリンスキー。

 

先日聴いたアルマ・マーラーとは弟子同士。

 

弦四はブラとドヴォの影響が大きい。

 

作品番号の無い《プレスト》、《スケルツォ》は爽やかな佳品。

 

シェーンベルクがチェロを弾いていたからか、どちらもチェロが活躍するのが面白い。

 

同じく作品番号の無い弦四 ニ長調は、ツェムリンスキーの指導下で書いた最後の作品。

 

ドヴォの《アメリカ》を彷彿させる、大変分かり易い曲。

 

ここまではシェーンベルクにもこんな時代があったのね、といったところ。

 

弦四1は彼の調性期の傑作。

 

ベト後期にも通じる澄み切った味わいで、何度も聴きたくなる。

 

弦四2は無調期初期の作品にして、第3&4楽章にソプラノ独唱を入れた独創的な作品。

 

テキストはゲオルゲ(Stefan George)の「連祷(Litanei)」と「恍惚(Entrückung)」。

 

ゲオルゲの詩にインスピレーションを得たシェーンベルクが、詩の世界を表現するのに新しい音を必要とし、調性を放棄して無調へと進んだのは分かる気がします。

 

後半2楽章はベルクのオペラのようで斬新。

 

弦四3は12音技法を用いた作品で、聴き易い"現代音楽"という感じ。

 

緻密な論理が勝ったドライな作品であまり好みでない。

 

というか、よく分からない作品というのが正直なところ。

 

弦四4は米国亡命後の1936年に書かれた12音作品。

 

前作3番から9年振りの弦四作品ですが、調性回帰したような印象。

 

演奏については、ディオティマですから何も言うことなし。

 

これ以上の演奏は聴けないと思う位、上手いです。

 

特に良かったのは、弦四1、ルイテンをソリストに迎えた弦四2。

 

ルイテンは4/4にリサイタルを聴きました。

 

昨日はそのときとは違う強い声で、彼女のベルクを聴きたくなりました。

 

演奏時間は4時間弱ですが、3回の休憩が長かった(1回目30分、2回目1時間、3回目30分)。

 

2回目の休憩時に、『シェーンベルク』(音楽之友社)の著者の浅井さんと山根さんのトークがありました。

 

浅井さんの話は概ね本に書いてあることでしたが、シェーンベルクの弦四の実演を聴くのは今回が初めてという発言が衝撃的でした。

 


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