『ナチス軍需相の証言 シュペーア回想録』(中公文庫)とヒトラーの『わが闘争』(角川文庫)が届きました。

 

どちらも文庫上下2巻で長い。

 

『シュペーア回想録』は前評判通り、面白そう。

 

翻訳も読み易いので、すぐ読めそう。

 

一方、『わが闘争』は反ユダヤの差別的言説が延々と続き、読み通すのは至難。

 

この本はあくまで、史料として参照するのが良さそう。

 

意外だったのは、『わが闘争』にワーグナーの話がほとんど出て来ないこと。

 

第2章にある、「12歳のときにわたしははじめて《ヴィルヘルム・テル》を見た。それから2、3カ月後《ローエングリン》を見たのが、わたしがオペラを見た最初である。わたしは一度でひきつけられた。バイロイトの巨匠に対する若者の感激は、とどまるところを知らなかった。なんども私はかれの作品にひきつけられた。」(上巻 p.36)

 

これがほとんど唯一、ワーグナーに言及した個所。

 

『シュペーア回想録』のほうが、音楽への言及が多いのは意外。

 

「ヒトラーの興味はいつも同じ音楽にあった。バロックもクラシックも、室内楽も交響曲も彼にはなんの興味もなかった。彼は、きめられたようなコースに従って、まずヴァーグナーのオペラの中から若干のきかせどころを希望し、それが終わるとすぐオペレッタに切り換え、そのままそれに埋没した。」(上巻 p.178)

 

「ベルリンではヒトラーは、オペレッタを見るとき以外は、劇場へはめったに行かなかった。しかし《こうもり》や《メリー・ウィドウ》のような、すでに古典的になったオペレッタの上演は見逃さなかった。」(上巻 p.252)

 

「(ヒトラーは)毎年バイロイト音楽祭の期間中は、必ず第1期の全公演を見に行った。 ... もっとも、バイロイトを除いては、オペラはごくたまにしか見なかった。 ... ヒトラーが文芸に対して関心があったか、そしてどの程度あったかは、私にはわからない。」(上巻 p.253)

 

「ヴァーグナー家はヴァーンフリート館に広い棟続きを増築し、そこに期間中ヒトラーと副官が逗留し、ヒトラーの招待客はバイロイトの個人宿舎に泊まった。 ... 音楽祭のパトロンとして、またヴァーグナー家の友人として、ヒトラーにとってこの期間はまさしく、彼が青年時代にすらおそらく夢想だにできなかった一つの夢の実現であった。」(上巻 p.289)

 

シュペーアの証言を読む限り、ヒトラーはバイロイト音楽祭を支援し、ワーグナー家とも親交があったようですが、ヒトラーが自分でいう程ワーグナーのオペラに魅了されていたかは分かりません。

 

ヒトラーは熱心なワグネリアンだったんだろうか。

 


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