今夜は新国で、藤倉大《アルマゲドンの夢》を観ました。
原作はH.G.ウェルズの同名短編小説ですが、同じなのは最初だけ。
それ以外は、人物設定、ストーリー、台詞の全てがハリー・ロスの創作。
正直、現実のほうが遥かに刺激的で、ロスの台本はあまり面白くない。
危機へと向かう兆候を知りつつ、正常化バイアスで何度も無視した結果、抜き差しならない状況に追い込まれるのが原作の要諦ですが、人物設定を変えたのでそこがスッポリ抜けてしまってます。
オペラでは安直な独裁者とそれを支持する「サークル」を強調し、クーパーの愛する人(ベラ)をレジスタンスの闘士みたいにして、クーパーの苦悩はどこかに消えてしまいました。
ウェルズの原作を改変するなら、もっと面白い本にして欲しかった。
藤倉さんの音楽も、意外と普通で肩透かし。
大野 東フィルの演奏は良かった。
歌手陣も、大きな不満は無し。
クーパー役のタンジッツが線が細く、声量がイマイチでしたけど、役に合わせたか。
一番面白かったのは、リディア・シュタイアーの演出。
中央に客車が1台置かれ、そこは現実の世界。
夢の世界に入る時は、客車が舞台下に沈みます。
この転換が実にスムーズ。
ダンスホールのシーンも面白い。
ポップな衣装の群衆が盆踊りみたいなワルツを踊ります。
凝った演出で楽しめました。
結末も原作と違います。
原作では夢の中で、愛する女性が射殺され、クーパーも刺殺されます。
自分が死ぬ夢を語ったところで、電車は駅に到着してエンド。
オペラではベラは射殺されますが、クーパーは生きて電車に戻り、そこで崩れ落ちます。
クーパーが戻った時、電車の中の乗客が死んだように寝ているのは、何かの暗示だったのか。
その後、少年兵士のボーイソプラノがアルマゲドンの歌を歌って幕。
もちろん、そんなシーンは原作には無い。
あの歌、どういう意図があって、ボーイソプラノに歌わせたのかな。
もう1回観たい気もしますが、11/21も11/23も他の予定と被ってます。