ある人の涙 | おばあちゃんと 一緒に

おばあちゃんと 一緒に

遠く忙しく暮らす子供達に、健康でいる証として60才代で始めたブログ、
しかし娘親子と同居、孫と付き合う日々、 孫達も成長し、とうとう私も70歳代になりました。そして2021年80歳になり、娘親子は独立し、また夫と二人暮らしになりました。

昼休みなる少し前、「犬が手足を伸びているんだけど死んじゃうかねー」という電話の向こうからの声。不安そうな声の人は私が診療始めた頃から来ている人だ。たった5分前に夫が電話を受けて、午後の診療が始まってからくることになっていた。午後の診療まで待てば死んでしまうかもしれない言っている。「では今すぐつれてきてください」と言うことになった。


私達はその人が来る前に昼食を済ませたい、こういう時はどんぶり物が早くできる。牛肉にたっぷりのねぎを濃縮汁で味をつけどんぶりにして、朝の残りの、つみなのおひたしで 早食いの昼食を済ませる。


犬は腰がふらついている。昨夕其の方が家に帰って来た時、手から離れて逃げてしまったようである。レントゲンを撮ることになった。夫が暗室から出てきざまに「骨盤が骨折してらいやのうー」といった。



其の方は「骨折?」すると「可愛そうなことをした」と言ってハラハラと涙を流した。鼻水と涙で顔がぐしゃぐしゃである。「妻を亡くしたから、仕事から帰ってくるとこの子が迎えに出てくるんでね」とちょっと気を取り直し照れた。私はこの方のやさしさと、ワンちゃん存在の大きさをみたきがした。


夫がレントゲンの説明し安静にしていれば治るでしょうと言うと、其の方は「原因が分かってよかった、今にでも死じゃうんではないかと心配した」と言って、いとおしそうに犬を何回も撫ぜた。要職にあるこの方は、仕事では絶対見せない顔、 「涙」だったんでゃないかと思った。