前回は、今は無き護衛艦「くらま（DDH-144）」を取り上げました。今度は、同型艦の「しらね」を発見！
Google Mapと同じような機能のある「Yahoo地図」の広島・因島にあるジャパン・マリンユナイテッド因島工場付近の航空写真を見ると、こんな船がドックに入渠しています。
よく見ると、前甲板に「くらま」と同じような主砲塔が１基（ただし、砲身はありません）。ただ、後部の広いヘリコプター甲板、そして前甲板の２番砲塔を外したような跡もあります。
そこで、Wikipediaで調べてみました。
「除籍後
XASM-3の実爆試験用実艦標的となる予定だったため、舞鶴東港Gブイに係留保管されていたが、平成27年11月14日、所要の改造を施すためJMU因島工場へ向けて曳航され、舞鶴を後にした。」
とあります。
という事は、この艦は「しらね（DDH-143）」の実艦的への改造中の姿ではないか、と推測できます。
護衛艦「しらね（DDH-143）」は、「しらね」型ヘリコプター搭載護衛艦の１番艦として石川島播磨重工東京工場で建造され、昭和55年３月に竣工しました。
竣工後は横須賀に配備され、同型艦の「くらま（DDH-144）」」ともども、長らく護衛艦隊の中核として活動しました。
【要目】
基準排水量：5,200トン、満載排水量：7,200トン、全長：159.0ｍ、最大幅：17.5ｍ、吃水：5.3ｍ
機関：蒸気タービン機関×２、推進軸：２軸、主缶：水管缶×２
出力：70,000馬力、速力：32ノット、乗員数：350名
兵装：127mm単装砲×２、シー・スパロー短SAM８連装発射機×１、アスロック SUM８連装発射機×１、
３連装短魚雷発射管×２
航空機：HSS-2B対潜ヘリコプター×３
※引用：世界の艦船「海上自衛隊全艦艇史」増刊第146集、No.869、2017年11月、海人社、P.134
ヘリコプター搭載護衛艦「しらね（DDH-143）」（引用：Wikipedia）
（Japan Maritime Self-Defense Force - http://www.mod.go.jp/msdf/formal/gallery/ships/dd/shirane/143.html, Attribution, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27806756による）
「しらね」は平成19年12月に、横須賀基地に停泊中に火災事故を起こし、戦闘指揮所 (ＣＩＣ) の機器を全損してており、一時は除籍が検討されましたが、同じ年に除籍されたヘリコプター搭載護衛艦「はるな（DDH-141）」のＣＩＣ設備を移植することで復帰することができました。
平成21年３月にはヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが（DDH-181）」の就役に伴い、舞鶴に転籍されます。
そして、護衛艦「いずも（DDH-183）」の就役に伴い、平成27年３月に除籍されました。
除籍後は、しばらく母港の舞鶴で係留されていましたが、前述の通り空対艦ミサイル「XASM-3」の実爆試験用実艦標的とするため、JMU因島工場で改造工事を受けます。この時の姿がYahoo地図の写真だと思われます。
除籍後、舞鶴のブイに係留されている「しらね」（引用：Wikipedia）
※すでに２番砲塔は撤去されている
（Sengoku2501 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=41355221による）
改造工事を受けた「しらね」は、平成29年４月に再び舞鶴へ戻されます。
実艦的へ改造され、舞鶴に戻った元「しらね」（引用：Wikipedia）
（雄徳 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=61570724による）
そして、「XASM-3」の標的として若狭湾で数回試験を受けた後、解体のため平成29年９月に門司港に入港します。その後、広島・江田島係留地に移動し解体され姿を消しました。
現在では、「しらね」を偲ぶものとして、舞鶴・赤れんがパークの駐車場に主錨が鎮座しています。
令和元年10月 舞鶴・赤れんがパークの「しらね」主錨
Google Mapと異なり、Yahoo地図は呉、大湊などの海上自衛隊基地は修正がかかっているのか護衛艦等の戦闘用艦艇の姿はあまり見ることができませんが、除籍後の護衛艦はノーマークだったのでしょうかね。横須賀には「いずも（DDH-183)」がいましたが。