優しい雨の開幕戦~鹿児島県伊座敷釣行記~

Covid19

人類にとって歴史に刻まれた忘れられない忌まわしい記憶。

 

世界中のたくさんの尊い命を奪うとともに、経済活動を瀕死の状態へと誘った。

 

にっくきコロナウイルスであるが、俯瞰してみると、これまでも人類は感染症との戦いの歴史だったことが分かる。

 

ペスト(黒死病)が流行り、瀕死の状態だったヨーロッパを容易で殲滅できたであろう、世界最強のモンゴル帝国は、ペストにおののき退却を余儀なくされた。日本でも天然痘の流行は、奈良の東大寺に巨大な大仏を建立させた。近くでは、20世紀初頭に世界中で流行したスペイン風邪が記憶に新しいか。

 

人間はウイルスや細菌と共存してきたが、そんな大局的な見方の傍らで、閉店を余儀なくされる個人事業主の方々を目の当たりにすれば、共存してきたんだからなんて言えない。事実、20年以上もの間、あこがれの離島「硫黄島」への渡船として一世を風靡した「第二黒潮丸」が廃業することになったのだ。

 

黒潮丸は、長い間離島に思いをはせる釣り師の応援団であり続けた。一度も事故を起こすことなく安全に釣り人を支え続けたこの船を廃業しなければならない船長の気持ちは言葉では言い尽くせないに違いない。

4月7日に、全国で緊急事態宣言が出され、外出を自粛しなければならない事態へと発展。釣り人たちは、もちろん仕事に支障をきたすことに不安を覚えたであろうが、最も人間らしい普遍的な行為である釣りに行けないというジレンマにこそ苦しんだのではないか。

 

ところが、政治と国民の協働作業により、思いのほか早く6月19日に県外への移動が解禁されることになった。この吉報に、反射的に釣りへの情念が体の内側から熱く湧き出していた。どこでもいい。とにかく釣りに行きたい。潮風にあたりたい。

 

選んだ場所は、鹿児島県伊座敷である。ここを選んだ理由のまず一つは、初夏のシーズンにイサキという素晴らしい魚に出会える場所だという点だ。また、外道として、シブダイ、オオモンハタ、クロ、青物など多種多様な魚が釣り人を待っている。離島に匹敵するほどの魚影を誇っていながら、港から近い距離に位置しているのも大きな魅力の一つ。

 

海希丸に1ヶ月前に予約を入れるとともに、同じく釣行への渇望が甚だしいM中さんを引きずり込むことにした。

 

6月11日に九州北部地方は梅雨入りし、いきなり激しい豪雨をもたらした。傘マークが行儀よく並んだ週間天気予報で、我々の釣行を知っているかのように、20日(土)から梅雨前線が南下することが約束された。

 

当日の朝8時に船長に連絡を入れると、

 

「うねりがのこっちょるかもしれんけど、出てみましょう」

 

といううれしい返事が。この報告に歓喜したM中さんは、集合時間の15分前に自宅にやってきた。

 

6月20日(土)は闇夜の大潮。満潮は午後7時14分、干潮は翌日の午前1時8分という潮回り。今回の舞台は、名礁「シビ瀬」である。2年前にも7月中旬に奇しくも同じ闇夜の大潮にシビ瀬で釣っている。

 

「シブを釣るなら裏側ね」

 

という船長のアドバイス通り、地寄り向きに釣り座を構えた。下げ潮は、右にトロトロ動き、そこでイサキとシブダイ43cmを頭に4枚ゲット。上げ潮では、潮は左に動き、外道ばかりだったが、アタリは多く大いに楽しめた。

 

行きの車の中で、シビ瀬の攻略方法を語り合っていたら、あっという間に伊座敷漁港に到着。

 

 

車から降りて胸いっぱいに空気を吸い込む。なんとさわやかな空気だろうか。この時期と言えば、肌にまとわりつくような重い湿気を含んだ風の中釣りをすることになるのだが、気温25度、湿度もそれほど高いとは思えない爽やかさだった。

 

先客が2組で5人。荷物を船着け場にまとめて早くもスタンバイ。我々もゆっくりと荷物を岸壁にまとめて戦闘服に着替え船長を待った。

 

その2へつづく