【Editor's Opinion】ファインモールド 1/72 隼一型 #6 | Children's Beat

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模型製作に関する記事をていねいに綴っていきます。

大得意。
将来何になりたいかなんて考えるよりも、いま好きなことを好きなだけするのがいい!





マガジンキットという形態をとり、新しい技術をより多くの読者へ向けて触れてもらおうという今企画。

これは付録にあらず。
実際に手にし、組み上げまで至った読者からはおおむね良好な反応が得られているようです。
キットには目を惹く様々な趣向が凝らされており、駐機状態に加え飛行シーンの再現も可能な主脚を用意、パーティングラインが目立たない合わせ目レス(一部は要合わせ目消しとなる)設計、窓枠の別パーツ化や全身にわたり再現された凸リベット表現など、AIRモデラーのみならず、他ジャンルモデラーも注目すべきパッケージとなっています。



記事では本キットに関して余すところなく紹介されており、組み立ては記載の注意事項に従って製作を進めたので、既読の方には目新しい事項はありませんが、この項では編集後記として、主に未読の方へ向けて少し製作に関することを書きたいと思います。







組み立て工程そのものに関してはまったく問題なく進行させることができましたが、今回はアニメーション作品ということもあり、「飛行シーンを切り取ったジオラマに仕立てたい」とイメージを膨らませて製作に入りました。
©︎嵐のコトブキ飛行隊製作委員会
アニメ以外でこんなシチュエーションってなかなかない。






「機体製作」+「飛行シーンジオラマ製作」という2本立てで記事の展開を図りましたが、大方の予想通り?進行は遅延に遅延を重ね、試行錯誤の末にようやくここにお目見えとなりましたこと、お詫び申し上げます(本当に)。



では、改めてキット内容を見てみましょうか!



まず主翼部分ですが、ご覧のようなパーツ分割となっており、上下の貼り合わせ構造ながら、表面には合わせ目は出ず、裏面のエルロンおよびフラップ部分のパネルラインで巧みにパーツ分割された設計となっています。

合わせ目消しは翼断面の一部だけすれば良く、大きな問題もなく仕上げることができました。



胴体部分は尾部で分割。
スライド金型を用いて一体成型とされ、さらにこのキットの売りのひとつでもある凸リベットもご覧のように精緻なモールドがびっしりと表面を覆います。
もちろん本体との接着面もパネルラインで分割されており、ここは合わせ目処理不要。



驚きだったのは窓枠の別パーツ化。
ここは以前同様にマガジンキット企画としてモデル化された、同じファインモールドによる1/72スケールのF-14トムキャットでは見られなかった構成です。

ここを別パーツ化してしまうとクリアーパーツとの馴染みが気になりますが、ファインモールドが誇る"ナノドレッド技術"の導入により非常に薄く成型されており、分割にやや不自然さを感じる部分もあれど、初めて飛行機モデルを手がけるモデラーにとっては僥倖です。
今回は飛行シーン再現ということで、フィギュアのないのを隠すために裏面からハセガワのフィニッシュシートを貼り、クリアーパーツをクリアーグリーンとクリアーブルーの混色したものでオーバーコートしたためこのような見た目に。




胴体下面はこのように両翼部分を兼ねた構造とされ、コックピットは胴体左右の挟み込み式ではなく腹部上面に配されますので、操縦席を塗装後マスキングして胴体部の吹き付け塗装を行う作業もかなり簡略化されます。



下記画像の状態にするまで、僅かに約30分ほどでした。
翼の上面に配されたモールドはエルロン部とその他の外板部では幅も深さも異なるため、スジ彫りのやり直しも不要と思える出来栄えです。



水平尾翼はこのような一体成型とされ、胴体部を貼り合わせてからこのパーツをお尻部分から差し込み、最後に垂直尾翼を固定する方式がとられているため、組み上げの精度も出しやすかったです。
上の画像では、機首を上げた飛行状態を再現するため、エレベーター部を切り離しているところです。今回唯一、カナルがキットに加えた加工となります。
 


胴体部の銀塗装は、メタリックマスターを加えたガイアのブライトシルバーを吹き付け。
繊細なモールドを殺さぬよう、下地塗装はサフレスでジャーマングレーを薄く吹いたのみ。
銀塗装の常として、乾燥が早いぶんザラついた仕上がりとなってしまったのが残念でした。
今後の課題が見えた感じです。


なお、本誌の記事ではコクピット内のマスキングを、ちぎったスポンジで簡単に済ませるやり方が推奨されていたりして、とにかく飽きる前に組み立ててもらおうというスタンスが各所から感じられたのも良かったです。



作中に登場する独特の迷彩模様は、今回は手描き。楽しかったです。
このまま仕上げても美しい隼一型のシルエットを堪能することが可能です。が。


ここから怒涛のウェザリングスタート。


①エアブラシを用いた基本的な汚し。

②エナメル系塗料で埃汚れ。

④同じくすす汚れ。

⑤オイル汚れ。

⑥スパッタリング。

⑦チッピング。

こうした基本的なウェザリングの手法も、記事を参考に学習できました。満腹。




この後、クレオスのMr.ウェザリングカラー フィルターリキッドを用いてフィルタリングを施し、機体のコントラストをくっきりとさせました。

参考までに、フィルタリング前の状態はこちら↓
今回はウェザリングを施した本体の明度を落とさずに本体銀塗装部分の彩度を上げるための手段として、この技法を用いています(なおフィルタリングに関してはこの号では記載はありませんので、独断で追加した工程になります)



エナメル塗料を用いたウォッシングでは、拭き取りや重ね塗りの際に溶剤分が下に塗られた塗料を溶かすため、混ざり合ってだんだん表面がくすんでいくのですが、ペトロールなど油彩用の塗料を使用するフィルタリングでは、一旦塗膜が乾燥するとその上から重ね塗りをしても、下に塗った色が溶け出すことはないため、ベース色の明度はそのままに、ウェザリングの効果を保全しつつ、よりくっきりと本体色を際立たせることが可能となります。


現在クレオスから市販されているフィルターリキッドは、その成分が油彩なので、乾燥するとレイヤーを何層重ねても溶け出すことがありません。
なので汚れの深みは増していきますが、選ぶ色によってベース色の彩度を上げたり下げたりといったコントロールができるという特性を持っています。
この特性を利用して、今回はウェザリングによって一度耽溺しかけた機体色をジオラマベースとの対比できちんと主張させるために、上の4色のうち主にレイヤーバイオレットを使って機体にフィルタリングを施しました。








今回の拙い作品の製作で、個人的にレシプロ機の見せ所は張り線ではないかと思うようになりました。


1/72という小スケールでどこまで手を入れるのか考えたときに、「張って終わりでなく、もう一歩踏み込めないか?」と思い、アニメの映像を見ながら勘案した結果、これ↓を付けようと。
ビニールコードの被覆を剥き、芯線をバラした0.12mm径のエナメル線を、0.4mmの真鍮線を軸にしてコイル状に巻いたものを作ってるところです。

張り線として使用するカラーワイヤーが0.25mmなので、このくらいがちょうどいいかなと思いまして…というか、このサイズが限界。



映像では、張り線の前側のポール直後に、このワイヤーの止め処理部分がバネのようにぐるぐる巻いてあって、さらに何やら小さな玉のようなものも付いてました。

なので、全く同じようにはできませんが、あらかじめここで作ったコイル状のこのパーツを組み込んでから線を張り、その上で瞬着で固定。

玉は瞬着の点付けしたものに硬化促進スプレーを吹き付けて固めて再現しています。
劇中でコックピットからの視点で描かれる映像では、旋回中などの際、この張り線がビュンビュン、ギギギギ…と軋む音が挿入され、本当の飛行状況を体験したことのないカナルにも、静かなコックピット内での戦闘中の緊張感がどういうものかを教えてくれるような気がしました。


今回はこれを使用しましたが、曲げグセが付きやすいステンレスワイヤーのため、ピンと張るのはひと苦労でした。
これ、張り線には向いてないと思うぞ。





ここで前回の記事を公開後に、追加で施したグラウンドワークに関しても追記。
機体本体のウェザリングの際に塗装剥げの表現として、チッピングと呼ばれるハゲチョロ表現に使ったスポンジによる手法を、地面の塗装にも用いました。

これはペースト状の地面表現用マテリアルをスポンジに写し取り、進行方向に向かって擦り跡が掠れるように残していくというやり方で、これによりペースト乾燥後に紙やすりをかけて、擦過痕でエフェクトをかけるよりも立体的な表現が可能となりました。

この手法は、たとえモデリングペーストのような模型専用の製品でなくとも、油彩用の絵の具でも同様の効果が得られることがわかったので、今後の作品にも活かせそうな気がします。



ここで重要なのは、スポンジチッピングの前に、より立体的な表現が可能な情景テクスチャーペイント等で、下地をザラザラの粒子感のある状態で作り込んでおく必要があるということでしょうか。
これは例えば、本物の砂などを混入させた絵の具でも代用が可能かもしれません。

まだまだ流れて見える地面の表現には追求する余地が残されていることが、今回いろんなやり方を試してみてわかってきました。
皆さんならこんなとき、どんな方法を試すのでしょうか…



というわけで、ファインモールド製1/72隼一型の製作記事は終わりです。


次回はようやくアヴェンタドール!(今度は本当!)
でもウェザリングが楽しくて、次もエアモデルをやりたくなってきちゃいましたー:;(∩´﹏`∩);: