遺伝子 | 祈るまえに、恋をして。

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ときどきぽつりと更新。

わたしは
“不安、不安”と言ってみて
一通りその不安を
こねくり回し、舐めまわしたら
頭ん中の戸棚に
次のその時まで
きちんと仕舞い
こんでおくほうだ。

どこかで、そうね
浮気されたらどうしよう
なんて妄想は、

至極楽しい。
もちろん妄想だから。


今回も一生懸命
組み立てた
壮大な浮気物語を
丁寧に仕舞いこんで
わたしは街に出かけた。
次の物語が待っているものね。

でも、ちょっと
女としての基礎を
立て直そうと思ったのはほんとに。
普段から小綺麗にはしてるんだけど
ちょっとずつできるゆるみ。
ずっと愛されていたければ
今やんなきゃねと
取り組んだのが
あげればきりがないほどの検査項目。


我が体から採取された検体は
国内はたまたアメリカに向かい
まもなく42歳のわたしの状況と
向かわなくてはならない水準を
指し示してくれる。
42年間の生活態度を成績表に
して突き返されるそんな感じ。


次はそんなおはなし。


受けた検査の中に
遺伝子検査がある。
遺伝子だから
この検査だけ
結果が変わることがない。
永遠に。


笑ってしまったのが
このわたしには
「肥満遺伝子」と言われる因子一群を
有しているということだ。

現状、わたしが見るに堪えぬほど
太っているということはない。
体型は適性を示してるが
ただ太りやすいのだと言う。
救いがあるのは「運動」によって
すぐ痩せるタイプでもあるらしい。

では肥満遺伝子とはなにか。
肥満遺伝子因子の
大敵は飢餓感。
これを感じると太古の昔
経験した飢饉を乗り越えねばと
途端、食べたものを
そのまま「脂肪」に
蓄えてしまうというのだ。

お食事はちゃんと取る。
できれば細かく4回にわけて
飢餓感を感じないようにね
でもってデザートはなしね。
とアドバイスされた。


わたしの中にある
肥満遺伝子。


わたしがわたしであるための遺伝子。
太古の昔、ある一組の男女の愛が交り合い
奇跡的に綿々と性愛がリレーされ
「型」がコピーされ続けた結果が
わたしということになる。

飢えを乗り越え
寄り添いあい
我が身を守り続けたその男女は
どんな人たちだったんだろうか。
どんな愛の形だったんだろうか。
どんなことで笑って、
どんなことで泣いて、
わたしに似ていたんだろうか。


そういえば、そういえば
お腹がすくって
わたし、うんと苦手だ。




わたしの「型」が唯一コピーされた
愛娘はこの夏、元気だった。

わたしが彼女の年ごろの頃
集団行動は苦手で
はしゃぐことも大嫌いだった。
アンニュイなジャズばかり聴いて
いつも気だるくて
斜にかまえて
大人びてばかりいたけれど。

きしんちゃんは日々部活に没頭し
没頭しすぎてその部は
この夏、日本一を獲得したりした。
大学志望校もうっすらと決め
嫌だ嫌だといいながら勉強し
ディズニー音楽もクラシックもK‐POP
も同次元で歌っている。
そうそうこの夏はカナダに渡航していた。
恋愛なんてしてる暇はないんだと。

纏う空気の健全さ。

わたしとは違う遺伝子の存在。

きしんちゃんの
お父さんは
血統よろしく
白いポロシャツと
テニスラケットが似あう
わたしと真反対な人種だったな。

もう一方の交わる「型」の
力を借りながら
遺伝子は淘汰、選別され
軌道修正されながら
コピーを続けるんでしょうかね。


そういえば、わたしは
この娘のお腹のすき具合が
すんごく気になるのだ。
この春に行ったイタリアでも
この娘の食事のタイミング
ばかり気にしていた。
飢えさせてはいけないと
焦るのは、わたしの母性か
もしくは遺伝子ゆえなのか。