「法」や「金」
「組織の中でのルール」や
「ビジネスのルール」
それらを身につけたほうが
自分の身に何か起こった時
対処は格段に楽になるよ。
と、ブログに書いて。
まぁ何やら
私ってば、可愛げのない女のよう。
と、今日、お洋服なんか
見に行く道すがら
ガラスに映った自分を見て。
「恐い女じゃないわよ、わたし」
と、言い訳をつぶやいてみたりした。
私とリキシは婚姻関係にない。
その代わり、諸々の約束を契約書
として形にしている。
法律的効力を持って。
その一部を
さらに執行力を高めるため
公証役場に出向いた。
リキシのオフィスがある街の
小さな公証役場。
それはもうなんだか
“枯れて”いるんである。
いい具合にその室内はグレー
がっかって見えるのだ。
あらかじめ、
公正証書にする内容を
リキシが伝えてあるので
その日は、ハンコを持って
証書の正本を確認するだけ。
法曹会を勤めあげた
その枯れた風景の一部のような紳士が
私たちの契約内容を読み上げる。
わたしは“甲”で
リキシは“乙”。
読み続けられる
“条”だの“項”だのを
眺めながら、
物思いにふけってしまった。
この“乙”が明日にも
私につれなくし
メールが減り
「飽きた」などと
言おうものなら
私は、この契約の行使を
するのだろうか。
愛の真裏にある「憎」を
むき出しにして。
そんなことを考えて
でも、結局何にもしないんじゃ
なかろうかと思い。
いやぁ、わかんないよなー、わたし
とも思い。
そんな風につらつら考え事を
していたら、その慣れた私の姿に
「公証役場、初めてじゃないの?」
とリキシが聞いてくる。
「初めてじゃないよ」
その答えに驚くリキシ。
こんなところ、そんなみんな来ないだろ、
そんな風に思ったらしい。
いえいえ、離婚した時と
ほんとはね、あと1回。
その日が3回目。
この“枯れた場所”で
人生と向き合って、
ケジメをつけていたのよ。
そう答えはしなかったけれど
“甲”と“乙”はその後
仲良くオフィス街を歩き
「あーおれパンツほしい」
という“乙”のリクエストを受け
デパートの希少アイテム
LLサイズのブリーフを
ひとり選んでいた、わたし。
危うく白いブリーフでもはかせて
みようかしらんと妄想し。
それでも、嫌いにならないわよ、わたし
と感じ入り、
契約書を作ったところで
愛なんてものは、
どうこうと保障されるものではないわね
などど帰結しながら
「浮気なんかしないでね」と
パンツに念力を送っておいた。