コトの顛末書 | 祈るまえに、恋をして。

祈るまえに、恋をして。

ときどきぽつりと更新。


金額的な赤字を出した、
私の最初の、
そう“最初”のミスは・・・。

世間がクリスマス商戦の
スタートラインに立つ季節。
32歳の私にはアシスタントがいて
多くのスタッフを抱え
オオガタキャンペーンとやらに
とりかかっていた。

全国40か所以上で同時展開される。

準備は完了し、あとは告知の時を待つだけ。
安堵感と期待、そして達成感に包まれる。
あぁ私のクリスマスがやってくる。
サンタさんはどーこぉ?

そんな時、サタンからの招待状を
アシスタントが小走りに持ってきた。

「あのっあのっあのっ
納品した制作物の印刷に
ミスがあると、エリアマネージャーから
連絡が入っています」

「ハイッテイマス?」
小さく震えながら話す彼に
いやーな汗の予感。

一ヶ所じゃねーってこと?

案の定、全国40か所以上に納品された
告知物が、複数か所で、掲載ミスをしたという。

その記載ミスは、そのままキャンペーンに
大きな影響を与え、
補償問題に発展するのは目に見えていた。

イッタイオマエはナニヲシテイタンダ。
目の前のアシスタントをシバキタオス
時間は、後で。後で。ゆっくりと。

ここで負けたら、億単位の賠償。
赤字は最小に押さえたい。

キャンペーン初日、その制作物が
全国でばらまかれるは4日後の朝。

結局は半分ほどにミス掲載をしている。
寝ることは許されぬ。
会議室を占領し、デザイナーを監禁。
印刷会社を脅し、
ばらまく役割を担う担当者を恫喝する。

どうにかこうにか、奇跡のように印刷まで進み
あとは納品だけという段階になり
更なる嵐がやってくる。

吹雪で高速道路は閉鎖され
とある東北地域に荷物が配送できないのだ。

次々と、納品物を乗せて飛行機が
列車が、トラックが全国各地に
走り始める段階になっても
その豪雪地帯への脚が確保できないでいた。

数時間後には朝がきて
告知がスタートしてしまう。
もの段階で、おそらく数千万円の賠償か。

真夜中の電話交渉は続く。
荷物はもう中継地点に運ばれ、
その先のランナーを待っている。

24時。
名も知らぬような、小さな運送会社が
吹雪を迂回し、どうにか目的地点に
いけるのでは?と言ってくれた。

誰もいない会社のフロアで、
狂喜乱舞したのを覚えている。

電話で話を聞いてくれ、
困っているなら、助けてやろうと
動いてくれたオヤジは
かっこよかった。

そのまま眠れぬ夜を会社で過ごした。
雪の中、無理を承知で車を走らせる
危険を考えるだけで恐くなり
寝ることなど、申し訳なくてできなかった。
ただただ祈る気持ちで朝を迎えた。

午前6時。

「今無事納品しましたよ」

その連絡をうけて、
会社の中で、ひとり泣いたのを覚えている。
何度もありがとうを言って、電話でお別れをした。

アシスタントは?
震えてばかりでね。
嫁に子供が生まれたばかりとか言って
確か帰っちゃってたな。
くっそう。飛ばしてやる。

そのまま、会社で顔を洗い
会議室のソファで寝てしまった。

「おはようっおはようっ」
朝日がまぶしい。
この声は、久しぶりの上司。
おめぇどこにいたんだよ。

よだれをごまかしながら
上司に起こされて、
初めて聞いた、その一言は

「顛末書と始末書いて、今スグッ!」

くっそう。こいつも飛ばしてやる。

人気ブログランキングへ

アシスタントを飛ばしたかはともかく。
当時の私は、このミスに
プロフェッショナルになるための
勉強をさせていただいた。
その月謝は数百万円ナリ。

そしてそのプロフェッショナルな姿勢を
教えてくれたのは
数千万部の印刷を現場で支えてくれた
印刷工場の方々や
ハンドルを握り、今日も街のどこかを
走っているドライバーの皆さまだった。

今でも、あのドライバーさんを思い出す。
足を向けて寝ることなどできぬ。
私の恩人だ。