届かなかった花束に | 祈るまえに、恋をして。

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ときどきぽつりと更新。

1997年12月25日
私は、娘の水疱瘡が
うつってしまい、入院した。

忘れもしない。
この2日前の12月23日。

私は、当時の夫ではない男性と
クリスマスの食事をともにした。
本当に好きだった人。
この人への素直な想いが貫けぬまま
間違った相手と、間違った結婚をした
若かった私。

18歳で出会い“片思い”と称した
その恋の相手とイルミネーションがきらめく
表参道で待ち合わせをした。
28歳のクリスマスだった。

会えば、お互い、私の結婚など忘れて
出会った頃の時代に戻る。
性急なプロセスにも進めず
ふたり表参道に通じる裏道を
手をつないで歩いた。

「もう帰るね」とどちらからもいえず
ただ、困ったような、でも離れがたく
やがて、夜の帳が下りる頃、
ふたりにクリスマス・イブがやってきた。

一日たって、私は自分の体の異変に気が付いた。
背中に広がる、ポツリとした赤い点。
それが輪を描くように広がって、いくつも重なり合っている。
見るからに痒そうで、それは短時間に
あと言う間に背中、体中に広がっていった。

娘が水疱瘡から回復したのは2週間前。
私は小さな時に、水疱瘡にかかっている。
まさかと思ったが、二度目の水疱瘡だった。

「即刻、入院です」
「荷物は家族の方に持ってきてもらってください」
そう言うやいなや、私は病棟に隔離され、完治するまでの
数日間を入院することになった。

「あの人の声が聞きたい」
私は、彼に、病状と入院先について
話をし、電話を切った。

数日間悪夢のような日々が続きやっと
明日にも退院という日、彼に電話をした。

「お見舞いの花を送ったんだけど
そんな人入院してないって、届かなかったよ」

そう静かに彼が語る。

「あぁ・・・」

気づきもしなかった現実。
私は元夫の名字で
入院しているのだから
花が届くわけがない。

ぶっきらぼうなその人の、優しさに
手痛い仕打ちをしたようで
私は「ごめんね」を言うのが精いっぱいだった。

今でも、振り返って想う時
あの花束が私のもとに届いていたら
私の人生も変わっていただろうかと
もの想いにふけることがある。

どんな花束だったの?

届かなかった花束に
今そっと触れて見たい。

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