祖父母の想い出 月は満ちて | 祈るまえに、恋をして。

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私の祖母は、明治生まれの女で
いつ何時も着物を着て、髪を整え、紅をさすという人だった。
だからといって気風がいいという風ではなく、
いつも穏やかで優しかった。
時代のせいか、幼少の頃、実の父母から養子に出され
育ての親のもと暮らしてきた。
本人は語らなかったが苦労の多い人だった。
私は、生まれた場所になじめないままで、
孤独を感じると、祖母を頼り唯一甘えた。


祖母が亡くなる少し前、私は祖母との不思議な
交流の時間を持つ。私が丁度江原さんに出会う
頃に重なる。私は19歳で、祖母は94歳だった。

その時の私は、体調が優れず、大学に通うのがやっと。
意識は朦朧として寝ていることが多かった。
オカルトに関心は全くないが、私の周りに起こっていたのは、
そんな種類のことだった。

数か月そんな状態が続いたある日、
深夜に母親からの電話が鳴る。慌てた声で
「おばあちゃんがあなたの体調が悪いから
電話をしてあげてくれって連絡が来たのよ」
あまりに急で恐くなって電話したと言う。
祖母はわかっているんだなと思ったことを覚えている。

しばらくして、「帰省してほしい」と言われた。
祖母に呼ばれたと思った。

その日は珍しく、祖母の体調が良いようで、


私の姿を認めた彼女はしばらく雑談をしていたが、
ふと中庭を眺めながらつぶやいた。
「満(み)てたわね」
その意味がわからない私に
「人生が満ち足りて、月のようにすべてが満ちて、命が終わる」
といってほほ笑んだ。

真夏の太陽が中庭の木々を照らし、
強い陰影を作る。祖母とふたり静かな夏だった。
となりの部屋で寝る祖父。
ふたりの命が消えていくと感じ、最後のお別れを伝えた。
もう寝たきりになった祖父とともに
「あなたに会えて良かった」と言ってくれた。

それからちょうど一カ月後、9月に祖母は亡くなった。
その一週間前、祖母は私の枕元に現れ
「預かっていく」といって去った。
私の体調は急速に改善し、説明のつかない現象も
おこらなくなった。

大人になってはじめて、人が死ぬという姿を
祖母に教えてもらったと感じている。
人が死ぬ時は、月が満ちるように終わるのだと思うと
救われた気持ちになった。

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