病院から老人ホームでの看取りへ
介護施設への入居を検討する上で切っても切れないのが看取りの問題。今から50年以上前の時代は、みんなが大家族で、祖父、祖母の看取りは自宅でしたという方もいるかと思います。それから20年くらい経つと、核家族化がすすみ、老人ホームと言えば特別養護老人ホームくらい、老人ホームへ入れない方が亡くなるのがいわゆる老人病院という時代がありました。
現代は、民間の老人ホームが多数存在し、自宅で生活しにくくなった方で、かつ家族の介護が難しい場合は、民間の老人ホームへ入居する時代となりました。病院で亡くなる方は減り、老人ホームで亡くなる方は増えるかと思いきや、実はその多くは老人ホームで亡くなる訳ではないのはご存じでしょうか。これはあくまで、統計などでお話しているのではないので、細かい部分は若干実情と異なっている事があるかもしれませんが、ご容赦下さい。
看取りはどこでもできる訳ではない
人が亡くなると、その死亡は事件性があるのか、それともそうではないのかを判断するのは警察です。正確には警察から依頼を受けた医師が死因を判断します。自宅などで死亡すると、不審死扱いとなり、必ず警察が介入します。
これは介護施設でも同様で、介護施設だからといって事件性が無いとはいいきれません。中には暴行や虐待、医療事故などもあり、事件性がないのかどうかは調べて見なければわからないというのが実情です。
そのため、介護施設でも死亡者が出ると、警察が介入します。
流れとしては、死亡した際、又は急変時には救急車を呼ぶ事が多いのですが、救急隊が来た時点で心停止あるいは呼吸停止の状態にあった際には、救急隊から警察へ通報が行くことになっています。たとえ病院へ搬送したとしても、病院に着いた時点で心停止や呼吸停止となっている場合には、搬送先の病院と運ばれる前にいた介護施設での事情聴取が行われます。
私は、施設勤務の際には、この事情聴取は何度も受けたことがあります。もちろん、医療事故や暴行などの事件でもないので、刑事の方にありのままをお伝えすると、そこで話は終わります。ですが、中には複雑な事情があったり、医師の話と食い違う点、アザなどが複数見つかった際などでは、非常に面倒になることでしょう。
殆どの介護施設は、真っ当に介護を行っている訳ですが、この警察の介入はあまり気持ちの良いものではありません。もし、何もしていないのに疑われるような事にでもなれば非常に困ります。ですので、介護施設での看取りはあまり好ましくないと思っている施設もあり、看取りをしませんと宣言している施設もあります。
施設看取りができる条件
介護施設での亡くなった際、警察が介入しない場合があります。それは、医師が死亡に立ち会った際です。「これは病死です」と医師が証明した際です。病院では病気で亡くなる方が多くいますが、そのたびに警察は来ません。それは、医師が死亡に立ち会っているからです。事件性があるかないかの判断をするのも、警察ではなく医師の役割ですから、病院では医師の立ち会いが常にできる状態なので問題ないということになります。
では、介護施設で看取りを行える環境はというと、危篤状態になった時に、介護施設へ医師が駆け付けられるかどうかがカギになります。死亡時に医師が死亡確認をして立ち会うことができるということが条件となります。介護施設には医師が常駐しているところは非常に珍しく、持病があり薬の処方や定期的な診察や治療が必要な場合は、訪問診療の医師が定期診察に訪れたり、病院受診することとなります。危篤の際に医師が駆け付けてくれる体制が取れる介護施設が看取りのできる施設となります。
介護施設によっては、担当している訪問診療の医師によって、夜間対応が可能な場合は施設での看取りを可能にしていたり、それができない方や、全ての方は危篤状態になった際には病院へ入院するようにしているなど、施設によってルールが異なります。
また、訪問診療以外の条件としては、看護師の常駐もカギとなります。食事が摂れなくなったり、状態が不安定になった際に医師と連携して入居者をサポートできる体制かという点です。看護師がいない場合だと、危篤状態と察知できなかったり、医師への連絡が遅れてしまったりするからです。入居者の体調をしっかりと観察し、医師に伝えることは非常に重要で、たとえ看護師だったとしても、看取ったり急変対応する経験が浅い新人看護師などでは対応は難しいです。更に言うと、どこまで治療するのかという問題も、治療可能な状態(一時的な発熱や食欲不振)なら治療するが、ガンや回復の難しい老衰では治療しない、延命治療はしない、点滴などの治療も一切しないなど、本人の意思や家族の意思によっても大きく変わります。その状態における意思確認を計画的に行える仕組みや体制を作るには、中心となる看護師が必須と言えます。このような職員体制や仕組み、医師との連携などの状況により看取りができる、できないが変わってきます。
もし、明確な看取りに関する希望があれば施設探しの時に確認すると良いと思います。看取りをしてもらえると思ったら、実は看取りに対応していなかった。や、入居者もしくはご家族が思う看取りに対応していなかったという場合もあるかと思います。
ずっと先にことではない
実は、元気だと思っていても、このような看取りの事態はいきなり訪れることもあります。昨今の感染症蔓延の時期にも、感染症を機に食事が摂れなくなったり、呼吸状態が悪化してしまい、体調が一気に崩れるという方もいます。細かい事は決めなくても良いにしても、介護施設入居を期に、そういった際にはどうしたいのか、入居者やご家族と一度話をしておくことをお勧めします。介護施設側はどのような対応ができるのかを確認するのも良いかと思います。



