簡単に儲かる?!
昨今、訪問看護ステーションの乱立が問題になっています。訪問看護ステーションが儲かると勘違いした人たちが、安易に起業、訪問看護ステーションをオープンさせています。本来、訪問看護ステーションは在宅で暮らす病気の方、障害のあるかたの支援をする重要な仕事です。仕事である以上、報酬得ることは問題ありません。安定した収入が得られることで、意欲的に支援に当たれたり、知識や技術力の高い看護師を確保することができ、良質な医療を提供する事が可能となります。ですが、昨今は「訪問看護は看護師さえ確保してしまえば、楽に収入を得られる業種」として認識され、収益重視の企業が参入している実態があります。
儲かる仕組み
訪問看護は、病院などと同じように医療保険での利用が可能です。一定の収入のある方は3割負担、高齢者などでは1割負担で利用することが出来ます。生活保護にいたっては、無料で使えるサービスとなります。
また、介護保険サービスでの利用も可能で、ほとんどの年金生活の高齢者は1割負担で利用できます。
これは、破格と言っていい価格設定です。国家資格を持った看護師が健康相談や治療の補助をしてくれ、料金は7割引きから9割引きで利用できる訳です。もちろん、その割引の裏には国や地方自治体が7割~10割を負担していることになり、その財源は私たちの健康保険料、介護保険料や税金な訳です。
もし、他のサービス、例えば、美容室で髪のカットやカラーリング、トリートメントのセットが1万円だったとして、9割引きなので1000円だとしたら、今よりも簡単に利用できると思いませんか?
本来、国家資格を持った職員が対応する仕事なので、安く簡単に利用できるものではありません。ですが、生活保護の方のように、無料のサービスとなれば、大した必要のない方でも「無料ならいいか」と利用する方が増える訳です。
一番儲かるのは難病の方
私は以前から、難病の方の支援を行ってきました。治療法も確立されていない難病の方たちは、完治が望めない中で、精一杯生きています。日々、身体機能が衰えたり、合併症と戦い、心に負担を抱えながらの生活です。若い年齢で発症する方も多く、十分な貯えがなく突然発症し、子育て中であったり、家族を支えるために働いている大黒柱の方が働けなくなってしまうケースも少なくありません。そういった方を救済するため、難病の中でも特定疾患いわゆる別表7※1の方には特に手厚いケアが受けられるようになっています。
※1 特掲診療料の施設基準等別表7号に掲げる疾病等者とは
末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳基底核変性症、パーキンソン病ホーエンヤール分類ステージ3以上)、多系統萎縮症(線状体黒質変性症、オリーブ矯小脳萎縮症、シャイドレーガー症候群)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後発性免疫不全症候群、脊髄損傷または人工呼吸器を使用している状態及び急性増悪期の場合
訪問看護は、介護保険を利用している方は、介護保険の支給限度額の中で利用する事で扶助を受ける事が可能です。また、小児や成人で、介護保険をまだ利用されていない方で訪問看護が必要な方は、医療保険を利用し、週3回までの訪問看護を受けることが可能です。
しかし、上に挙げた別表7の対象者は、制限なく訪問看護を受ける事が可能です。ですが、実際は訪問看護ステーションが保険請求できるのは1日3回までとなっており、4回目以降は請求できないため、緊急対応以外は行わないのが通例です。
しかも、別表7の方は、高齢者であれば介護保険を利用し、更に医療保険での訪問看護を受けることが可能となっています。
難病の方は、家族の介護のみで生活するのは非常に困難であり、24時間対応が必要です。介護施設でも相当手厚いケアが受けられる施設でなければ生活できません。
そのため、別表7の対象者の方が入居できる施設は限られていて、看護師のケアが中心であるナーシングホームやホスピス系の施設が中心となります。
ドル箱の別表7
昨今訪問看護ステーションが乱立する原因は、この別表7の方を囲うことでとんでもない収益を得られるということです。一人当たり利用者の単価は、通常の医療保険の方であれば、30分以上の訪問1回あたりの金額が8000円程、それが週3回、1ヶ月で12万円程となります。介護保険利用者ですと、訪問ヘルパーさんの支援も利用し支給限度額を折半するため、訪問看護では週1~2回程度となり、かつ単価も低いため、2万5千円~5万円程となります。
別表7の方は毎日3回ですから単純計算で70万円越えとなります。これはあくまで単純計算なので、減算や必要性など検討していくとそれに満たないことがほとんどです。しかし、利用者1名でとんでもない金額が稼げるので、血眼になって取り合いをするわけです。
私が過去に働いていた高齢者住宅では、別表7の方が非常に多かったので、看護師一人あたりの売り上げが7万円を超えていました。担当する看護師はパートタイマーの方だと時給1200円、日給1万円程度でしたので、粗利6万円の計算です。もちろん、人件費だけでなく、訪問看護ステーションの維持費や訪問に関わらない職員もいるのですべてが利益ということではありませんでしたが、会社員では給与の倍程度の売り上げを出すことで会社が維持できると言われているので、7倍の売り上げを出す訪問看護は相当儲かると言えると思います。
これだけの利益を出していても、更に利益追求に走ったり、質を全く考えなかったりと非常に問題があります。
一生懸命に働いてくれる看護職員の待遇改善や研修、フォロー体制を整え、利用者さんが快適に過ごせる環境を整えているところもあります。
良い訪問看護とは
法令を遵守するのは当たり前ですが、まず法令を知らなければ守る事も出来ません。また、毎日の仕事に追われる職員さんたちが、自己学習するには制度が複雑すぎて、時間も足りません。制度を理解した管理者もしくは管理者経験者が伝えていく、研修制度の充実が必要で、これが整っている訪問看護ステーションは良い訪問看護ステーションだと言えます。
また、待遇面でもオンコール対応や休日出勤など非常に休まる時間が少ないのも訪問看護の特徴です。しっかりと休息できるよう配慮されたシフトを作成したり、人員を多めに配置することも必要です。余裕の無い仕事では、イライラや人間関係の悪化は避けられません。これでは、利用者さんへやさしく丁寧に接することができず、短期的にはしごとが出来ても、いずれ離職へと繋がってしまい、経験が多く、利用者さんにメリットのある職員がいなくなってしまいます。
訪問看護ステーションだけでなく、居宅介護支援事業所のケアマネージャーさんや、訪問介護事業所の介護職員さん、訪問診療の先生などとも良好な関係を築ける体制が作れていることも必要です。
みんなが安心して働け、辛い時にはフォローを受けながら充実した訪問看護師ライフが送れる。それが巡って利用者さんへの良いケアに繋がっていくと思います。
訪問看護はやっぱりいいよね
病院ではなく、自宅や施設など、自分の居場所だと感じれる場所で暮らせる。それを支援するのが訪問看護です。たとえ病気があったとしても、プライベート空間で過ごせるというのは何よりではないでしょうか。
高齢者や障がい者の方がその人らしく暮らせ、看護師は自身の看護観や能力を存分に発揮して働くことができる。
そんな環境であって欲しいと思います。





