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看護相談員のブログ

看護師視点で介護の世界を考える 老人ホーム紹介センター介ナビ札幌の相談員のブログ

 

 ALSとは

 

 

 前回もお話させて頂いた筋委縮性側索硬化症、いわゆるALSの方のケアについて今回もお話していきたいと思います。ALSは約10万人に1人の割合で発症すると言われており、かなり稀な病気です。その他の病気で比べると、がんに生涯でかかる確率が2人に1人、糖尿病(予備軍含む)が6人に一人。精神病である統合失調症は100人に1人と言われます。

 ALSの患者として有名な方と言えば、2018年に亡くなった車椅子の天才物理学者ホーキング博士が有名です。

 日本人では、徳洲会という全国展開している病院の創設者であり国会議員だった徳田虎雄先生が有名です。

 この病気は、筋肉を動かす神経である運動ニューロンが障害を受ける事で筋肉が痩せて動かせなくなっていくという病気です。発症してからの余命はその方によって進行速度が違いますが、一般的には5年と言われています。

 

 

 稀ゆえに見つけて貰えない病気

 

 

 私は、このALSの方と訪問看護や訪問介護で関わってきました。この病の難しいところは、稀な病気であることから発見されにくい点にあります。手足の動きが悪いと感じて病院へ受診したとしても、ALSだとして確定診断がつくまでに非常に時間がかかります。医師はあくまで専門分野には詳しいですが、自身の専門ではない分野に関しては診断できないことが多いです。ALSを診断するには神経内科という専門科を受診する必要があり、転びやすいなどの理由で整形外科を受診したり、いつも通っている内科を受診するなどでは見つけることは難しいです。

 私の関わった利用者さんも、軽度のうちはあちこちで診てもらっても原因がわからず「様子をみましょう」と放置されたという話を良く聞きます。それでも、症状は改善することなく進行していきますから、病院を変えて渡り歩くうちに、運よく「もしかして神経難病ではないか?」と見つけられて神経内科を紹介されて確定診断がつくというの感じです。

 また、しびれや脱力という症状で脳梗塞を疑い、脳外科を受診した方は早期に見つけられるケースがあります。脳外科には、神経内科が併設されていることがあり、脳外科での検査結果、問題ないとなった際でも症状があるとなった場合には神経難病が疑われます。脳外科の医師は非常に優秀な方が多く、小さな症状も「気のせい」「老化」などと簡単には片づけず、徹底的に調べようとします。脳外科での病気は一刻を争うものが多く、1日と言わず数時間でも処置が遅ければ命に関わったり、その後に重い障害を残してしまうものも少なくありません。

 ですから、脳外科に訪れた方の診断は慎重に行われます。ですので、脳外科の先生に見つけて貰ったという利用者さんは多いです。

 私も以前、ALSではないですが、最近転びやすくて、そろそろ施設入居を検討しなかればと相談を頂いた方がいらっしゃいました。当初は老化が原因との判断で、介護保険の区分変更をして施設入居をというお話でしたが、転びやすくなった経緯が老化とは思えない部分があったので、原因についてしっかりと調べた方が良いと助言し、専門病院で診てもらったところ進行性核上性麻痺というパーキンソン関連疾患だったことがあります。

 

 

 ALSが発症したその後

 

 

 ALSの進行過程は、まずは運動器の障害から始まります。転びやすくなったり、手に力が入らず物が持てなくなったりなど、身体の動きが徐々に低下してきます。その後、飲み込みの能力が低下し、ご飯が口から食べられなくなります。その頃には歩くのは困難になり、ベッド上での生活に移行していきます。身体機能は更に低下していき全身を動かすことが出来なくなります。

 唾液を飲み込むことも出来なくなってくると、気管切開をし、唾液が肺に流れ込まないようにしなければなりません。痰も出しやすくし、気道を確保します。更に進行すると意思疎通が難しくなるので、アイトラッキングと言って、視線をパソコンのマウスとして利用し、文字入力したり、読み上げてもらい意思疎通を補助します。その後、意思を読み取れなくなっていきます。

 

 

 ALSに治療はないのか

 

 

 ALSの治療は、完治を目指すものではなく、進行を遅らせることを目的とした治療が主となります。内服薬ではリルゾール、点滴ではエダラボン(ラジカット)など、病状進行に関わるとされるグルタミン酸やフリーラジカルなどの物質に働きかけることで進行を遅らせます。一般的には、気管切開や人工呼吸器の使用を2~3か月ほど先延ばしにできる効果があるとされています。中には、この治療をしながら数年間進行を抑制できている方もいます。実際には、治療に効果があるのか、そもそもの進行が遅い方なのかは比較できないので何とも言えませんが、それ以外の治療方法がないのでこの治療が開始されます。

 

 

 最強のストレス

 

 

 ALSの方、すべてではないのですが、非常に感情的になる方がいます。これは多くのALS利用者に接してきた介護者は口をそろえて言います。関わる職員に罵声を浴びせたり、必要以上のケアを要求したり。中には指の角度や位置の数ミリ、首の位置の数ミリの調整が決まらないと何度もコールで呼びつける。コールを連打するなどの行為を体験したことがあります。職員の行動や言動の揚げ足取りをするなどで、精神的ストレスを抱えた職員が離職してしまうなどの原因となっています。勤務時間ずっと必要以上のケアを要求されると、良いケアをしたいと思う一生懸命な職員ほどストレスを感じます。

 認知症の高齢者などの方では、苦痛や恐怖感などのストレスは忘れてしまうこともあり一時的な訴えになることもあります。ですが、ALSという病気は、若いうちに発症する方も多く、思考力や記憶力もしっかり保たれているため、自分の病気の進行や苦痛に関して、見つめながら死に向かっていくという過酷な病気です。もし自身が、今のまま身体が動かなくなったとしたら・・・。背中が痒くても、首の位置がしっくりこなくても自身では動かすことが出来ません。声を出して叫ぶこともできないのです。利用者さんは強いストレスにさらされるのは言うまでもありませんが、それに応える職員も非常にストレスを抱えます。

 

 

 ナーシングホーム、ホスピス系施設でのケア

 

 

 ALSの方は、症状を抑えるリハビリや進行を抑えるための治療、気管切開や人工呼吸器管理など病院並みのケアが必須です。そこで登場したのがナーシングホームであったりホスピス系の介護施設です。

 看護師の比率を高め、医療ニーズに対応しつつ、重度の介護にも対応していくスタイルです。

 対応が非常に難しい方の生活を支えるというのは簡単ではありません。そのような方のケアを、看護師が中心となりながら理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのセラピストに加え、介護職員、ケアマネージャーや訪問診療の医師を含めたチームでケアを行っています。

 

 

 ナーシングホーム、ホスピス系施設での生活

 

 

 ナーシングホームやホスピス系の施設は、他の介護施設や高齢者住宅に比べて、職員の配置が手厚いのが特徴です。他の介護施設や高齢者住宅の特徴としては「出来る事はご自分で」が原則です。これは、できるだけ残存機能を残すという意味合いと、少ない職員で効率的にケアを行うためでもあります。ですが、難病の方のケアは、自身でできることが急速に失われていくことや、特にALSなどでは、筋力への必要以上の負荷は、病状進行を早めてしまうため、リハビリ等も必要以上行いません。

 

 

 実際のケアは

 

 

 実際のケアは、施設によって異なります。私もあくまで働きて来た施設での比較になってしまうのですが、このナーシングホームやホスピス系は他の寝たきりの方が入居するような施設に比べて細やかなケアをしている印象でした。

 朝は非常に早く、5時くらいから起床となります。まずは歯磨き、洗面、髭剃りなどから始まるのですが、その方それぞれに決まったルーティーンがありました。

 ある方では、熱いタオルを顔に乗せ、蒸らした後に洗顔フォームを丁寧に塗っていきます。洗顔フォームの塗り方もこだわりがあります。タオルが冷たくならないように、何度もタオルを替えながら丁寧に拭いていきます。男性であれば髭剃りを、女性であれば化粧水や乳液を塗っていきます。軟膏の塗布や点眼や眼軟膏の塗布を行います。

 歯磨きに関してもその方それぞれで方法が異なります。口腔内の唾液を吸引していくのですが、そのタイミングも、その方によって違いがあります。上の歯を磨いたら一旦唾液を吸引して、下の歯に行くなど。状況に合わせて行うのではなく指定があります。

 どうしたら苦痛なくケアができるかを利用者とコミュニケーションを取りながら手順を決めていくことや、意思疎通が取れなくなっても、その方のルーティーンを守るようケアしていくなど、他の施設でのケアより丁寧かつ細かな手順で関わっていました。ストレスの多い難病の方の苦痛をいかに減らしていくのかということに寄り添いながらのケアということ意識しながら、かつ効率的にすばやく行っていくことが職員としては求められていました。

 ナーシングホームやホスピス系での仕事は慣れるまでは非常に大変でしたが、できるようになっていくと爽快さや満足感もありました。

 

 

 もし難病になったら

 

 

 昨今、不正で叩かれているナーシングホーム、ホスピス系施設ですが、良い施設選びをして、安心した暮らしができる場所を見つけていきましょう。

 

 難病系施設訪問看護の勤務経験体験談でした。