浅田次郎さん 『蒼穹の昴』、『珍妃の井戸』、『浅田次郎とめぐる中国の旅』 その2 | 短歌初心者 萬葉集 読書

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珍妃の井戸のことは浅田次郎さんの小説で読んで知っていた。



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浅田次郎さんは週間誌「現代」に「勇気凛々ルリの色」を書かれていたときから知っていた。


毎週月曜日に「週間現代」が出るのを楽しみにしていた。


1994年9月からの連載で、もう20年前になる。


この「勇気凛々ルリの色」の中にたびたび大作を書いているとあった。


「勇気凛々ルリの色」の「密室について」から引用


『 丸二年がかりで執筆中の長編小説を、ここいらで一気に脱稿するべいと心に決め、ホテルにこもった。

 

 一千八百枚にのぽる小説のラスト百枚となると、執筆場所を移動すること自体なまなかではない。ほとん


ど一行ごとに長い物語の整合性を気にしなければならず、ためにそれまでの全原稿と主だった資料、辞


書、創作ノートの類いをすべて持ち運ばねばならないのである。早い話が、書斎の引越だ。

 

 作家っていい商売ですね、ペンと紙だけありゃいいんだから、などと言うのは勝手だが、現実はこういうも


のなのである。こたびのホテル行に際して私の携行した「紙」は、大型サムソナイト三個分に及んだ。

 

 さて、これらを持ち込んだホテルの密室となると、ほとんど床さえ見えぬ坂口安吾状態になるかと思いき


や、私の場合とても几帳面な性格なので、実は「完全な書斎」となる。

 

 いつもの段取りでツインルームの片方のベッドはとっぱらってもらい、かわりに座卓と座椅子を入れ、その


周囲に整然と資料や原稿を積む。地図、系図、人物相関図等を壁に貼りめぐらす。ホテルの私物化であ


る。

 

 カーテンは閉めっぱなし、時計は見ると眠くなるので隠してしまう。食事は三食ルームサービス、もちろん


新聞も読まず、テレビも見ない。こうなると数日を経ずして暦が失われ、久しぶりにカーテンを開けてみた


ら、とっくに梅雨は明けて真夏の太陽が浮世の路上を灼いていた。

 

 たいした苦痛は感じない。というのも、私の場合、自衛官という実質的拘禁生活を振り出しとして、法的拘


禁生活とか超法規的拉致監禁生活とか、そういういけないことを多々経験しているので、強制されていな


いというだけでも何だか幸福感さえ覚えてしまうのである。

 

 ただし、他人と会話が交わせないということがちと辛い。我慢できないほどではないのだけれども、本能的


にコミュニケーションを求めようとするのか、原稿に会話部分が多くなる。これはまずい。

 

 こういうときは編集者の陣中見舞がたいへん有難い。今回もB社のベテラン編集者N氏、ホテル間近のS


社武闘派C女史、新宿F社のH女史等が、まるで私の精神状態を察知したかのように訪れ、無柳を慰めて


下さった。カンヅメ作家に対するマニュアルがあるのかどうかは知らんが、皆さんあまり仕事の話題には


触れず、食い物の話とか病気の話とか、こちらの脳ミソをときほぐすような、下世話な会話をして下さるの


がまた有難い。』




この大作が「蒼穹の昴」だ。


「蒼穹の昴」は1996年に出版された。


これは直木賞だと思った


ところが浅田次郎さんが直木賞を受賞されtのは1007年の「鉄道員(ぽっぽや)」だった。


1996年になぜ「蒼穹の昴」が直木賞でなかったか。


ありがたいことに直木賞選者の評価がWEBで見ることができる。


黒岩重吾 △ 「作者の熱意が感じられる。」「この作者に才能があるのは間違いないが、まだ読者を小説


          世界に引きずり込み、最後まで酔わし続ける技を掌中にしていないような気がする。」


津本 陽 ■ 「膂力がつよいとしかいいようのない、エネルギッシュな書きだしである。」


         「作品の各部分が重層して響きあう効果が出てくれば、大成功であったが、盛りあがらなか


          った。読者を引く見せ場が多くなるばかりで、きわだった人格が浮きあがってこなかったた


          めである。」


田辺聖子 ○ 「エンターテインメントとしては抜群の面白さを持った作品、」「近来の快作だった。小説の


          醍醐味は〈面白くて巻を措く能わず〉というところにもあるから、受賞圏内、と私は思った


          が、いまひといき、票を集めることができなかったのは残念。」「欲をいえば中国風土の匂


          いが(芳香・悪臭をとわず)も少しほしいところ。」


渡辺淳一 ■ 「長くて波乱に富んで、楽しく読ませるが、なにかが欠けている。それがなくても、面白けれ


          ばいいという意見もあるだろうが、わたしはその考えには反対である。」


阿刀田高 △ 「よい意味で講談風のおもしろさに溢れている。だが、人物の造形も、筋の運びも、文章


          も、すべて粗っぽい。そこに腕力を感じ、魅力かなとも考えたが、工匠としての小説家を思


          うとき、わずかに逸脱するものが感じられた。」


平岩弓枝 ■ 「何故、宦官の目からみた清朝末期、西太后を書くという素晴しい着想一筋に突き進めな


          かったのか口惜しい気持になった。こう人物が多すぎて、話があっちへとび、こっちへとび


          しては、書き手のいいたいことが読者に伝わりにくい。」


五木寛之 ◎ 「もっとも印象に残った。」「たしかに欠点は多い。」「しかし、それでもなお私は、この浅田


          氏の野心的な仕事に一票を投じたことを後悔してはいない。いかにエネルギッシュな作家


          でも、これだけの力作をたて続けに世に問うことは難しいだろうと思えば、「長蛇ヲ逸ス」の


          感をおさえることができなかった。」


井上ひさし◎ 「(引用者注:「凍える牙」との)二作受賞を心から願っていた。」「李春雲と玲玲の兄妹がとく


          に生き生きと跳ねていて、たしかにここには「人間」がいた。」「ここで説かれている「浅田


          版清朝史」のおもしろさは格別であり、こんな大作を書き下ろしで書いてしまった作者の逞


          しい膂力にも脱帽した。」