新感覚ゾンビ・ホラー「World War Z」 | ベロニカのオススメ洋書☆

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洋書歴15年のベロニカが英語レベル別にお勧めの洋書を紹介します☆

World War Z: An Oral History of the Zombie War/Max Brooks
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難易度:★★★★★


この作品の著者Max Brooksは「The Zombie Survival Guide」(ゾンビ・サバイバルガイド)という、ゾンビからいかに身を守って生き残るかをバカバカしいほど真面目に説明した、ユーモアたっぷりなガイドブックの作者として有名です。しかし本作は極めてシリアスで、かつ現実味のある(?)ホラーなのです。作品は、人類を滅亡の淵に追い込んだゾンビ戦争(World War Z)が終結した12年後、生き残った人々の証言をあるジャーナリストが記録した「回顧録」であるという設定です。人間をゾンビ化してしまう謎のウィルスの発生から、地球規模の感染者蔓延、そして人類の生き残りをかけたゾンビ戦争の顛末が、生存者たちの証言を通して少しずつ明らかにされていきます。この作品が面白いのは、著者が「人間」というものに過度の期待をするわけでもなく、同時に失望することもなく、ありのままの姿を冷静に、淡々と描き出しているところです。中国の小さな村で最初のケースに遭遇した村医者、感染者蔓延のパニックに乗じて「ワクチン」で一儲けした男、避難した北端の地で生き残るためにある選択を迫られた人々・・・ 日本人も登場します。盲目の被爆者であるにも関わらず生き残った老人や、引きこもりのオタク少年の話はスリリングで、「親日家か?」と思わせるほど丁寧に描かれています。怖さや薄気味悪さだけが強調されたありがちなホラーを読み飽きた人にも、ホラーに免疫がない人にもお勧めの作品です。

インタビュー形式の口語で書かれているためスラングが多く、軍隊用語なども多いため難易度はかなり高いですが、分からないところを読み飛ばしても十分楽しめます。



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