認知症は治るわけでもよくなるわけでもないが、進行は一直線ではない。株価のように日々は上がったり下がったりを続け、何週間、何か月経った時にその方向が出てくる。しばらく横ばいだった夫の調子は今年に入って2か月余はその前の半年より角度が急になった。できないこと、わからないことが増えている。
「今日は庭仕事する」と言って朝食の後着替えた夫は突然質問した。「俺の状態なんて言うの?」半年前だったら『状態』なんて言葉は使わなかっただろう。単語の数が減ってるのだ。「脳の状態のこと?」私は恐る恐る聞き返した。うなずいた夫にゆっくりと答えた。「状態は認知症で、そうさせてる病気の名前はアルツハイマー病よ。」
忘れたということだけでなく、理解できないということをわかっている。残酷だ。子供の時ならわかんなかったらもっと勉強しなさいなんて言われて、わかるようになるかもしれないが、この病気の患者は理解できないものは理解できないのだ。どんなに悔しい気持ちに、やりきれない気持ちになるのだろう。