今日、ペロが死んでしまった。
目の見えない僕をいつも助けてくれたペロ。
いつも側にいてくれて、僕の手を引っ張るでもなく、寄り添う様に僕を導いてくれた。
初めて家に来た時はオドオドとした雰囲気が空気で伝わってきた。
毛はとてもフワフワしていて、お腹は柔らかく、まるでその体温は子守唄の様に心地が良かった。
一緒に遊ぶ時も、周りに危ない物がないか先に調べてくれたり、夜の空気を感じる頃にはきちんと家路につかせてくれたり。
ペロは僕がしたい事を先読みしてくれる、まるでエスパーみたいなパートナーだった。
こんな事もあった。
ペロと公園に向かう途中、急に飛び出して来た車に驚いて僕は公園に行きたくなくなり、道にしゃがみ込んで駄々をこねた。
日が暮れる匂いを感じるまで、ペロは僕の側でそっと寄り添っていてくれた。
ペロはとても暖かくて、泣き疲れた僕はそのまま寝てしまった。
きっとあの時はペロもどうしていいか分からなかったろうな。
でも、ただただ僕の側に居てくれたんだ。
いつもの様に公園で散歩してるとき、うららかな陽気に身を任せて、ベンチで居眠りをしていたんだ。
目を覚ますとペロの匂いが消えていた事に気が付き、僕は不安の影に飲まれた。
いくら呼んでもペロは返事を返してくれない。
もしかしたら僕の事が嫌いになってしまったのだろうか。
僕は途方に暮れたまま、夜の空気を感じるまでベンチに座っていた。
僕を迎えに来てくれた父に聞くと、ペロの死体はベンチのすぐそばの池で見つかったらしい。
ペロと過ごした時間はとても掛け替えのない物になった。
もう、あの時間は二度と戻ってこない。
僕の楽しかった思い出を、また一つ増やしたんだ。
「あなた、あの子の悪い癖なんとかならないかしら」
「俺からもキツく言っておくよ」
「これで三人目よ。いくら新しい人を雇ってもきりがないわ」