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久美子「あれ?珍しい、ツヨシくんが”エリーゼのために”弾いてる」
了くん「ツヨシは薫ちゃんのところだよ」
久美子「ええ?じゃあ今弾いてるのは…」
了くん「あすかっち」
久美子「お化けじゃなくてよかった」
久美子「『エリーゼのために』ってエリザベートっていう,べーートーヴェンが恋した女性に捧げたものよね。テレーズって節もあるけど」
了くん「記憶を共有したら、あんたもあすかっちになってきたぜ」
久美子「あ、トルコ行進曲に変わった」
了くん「簡単なのばっか弾いてるな、おれ達でも分かるような」
久美子「え?今度はショパン?あの子こんなの弾けるの?」
了くん「”革命”だね。難しいけど有名どころだからやっぱりあすかっちだろう」
久美子「そういえばアンタも本読めるようになってるままね。17歳のほう?」
了くん「たぶん14歳のほうだろう、背も180ないし。17歳までの記憶はバッチリあるがな。記憶が混ざったんで本を読めるようになったんだよ」
久美子「アタシも料理のレシピは頭に入ったの。で、料理してみたらそれなりなんだけど、あすかっちのと味が違うのよ。アタシのはあんまり美味しくないの」
了くん「実はおれも料理したんだけど、あすかっちの味にならなかったな。やっぱり自分の味だった」
久美子「あすかっちはツヨシくんの弾き方っていうか、癖とか完コピしてるのにね。でも、幼稚園の頃、独学でバイエルやってたって言ってたから、基礎はあったのよね」
了くん「なるほどそうか」
久美子「アタシも小説書けるようになるかしらねぇ」
了くん「今おれが読んでる、おれが主人公になってるこの小説みたいなのは無理だと思う。でもこういうのってセンスの問題だから、自分の事なら書けるんじゃない?」
久美子(右)「そうね。アタシ、あんたのベースのコード共有したはずなのに忘れちゃった」
了くん「ベースは一朝一夕じゃ身につかない。実際に弾かないとね。おれのベース持ってこようか」
久美子「…やっぱやめとく。うまくいかなかったらカッコ悪いから」
あすか「ツヨシくんだと思った?」
久美子「ハハハ、見破ったわよ。でも記憶を共有しただけであそこまで弾けるようになるなんてね。ツヨシくんの弾き方にそっくりよ。選曲は初心者っぽいけどね」
あすか「みんなの知ってる曲がいいと思ってさ」
了くん「難しいほうも弾けそうだな」
あすか「みんな喜ばないじゃない」
あすか「あっ、了くん本を読んでくれたんだ」
了くん「みんなとの記憶の共有と、17歳のおれの記憶を辿っていったら読めるようになった。一応おれが主人公なわけだし。介護のやり方とか事細かく覚えてるな。介護の現場じゃベテランになるだろうな。漫画家になれたって夢も、この本で叶ったよ」
あすか「ありがと、了くん」
あすか「プロにそう言われるとしてやったりだよ」
ツヨシ「あすかっち、ぼくのピアノ触ったでしょ」
あすか「あ、そういえば借りた、ごめんごめん」
ツヨシ「蓋が開けっぱなしだったから分かるんだけど、触らないでよね」
あすか「誰が買ったと思ってる」
ツヨシ「あのヤマハは前の世界線上のでしょ。今、うちにあるのはスタインウェイなんだからね、ぼくしか弾いちゃいけないの」
あすか「誰が調律師呼んでやってると思ってる。調律をバカにするとピアノ弾けなくなるぞ」
ツヨシ「あすかっち、卑怯じゃないか」
久美子「二人とも、そこまでよ。お互いに言い過ぎだわ」
了くんの声「あすかっち専用のピアノ買うか。中古でも充分いい音出してくれるだろ。えーと、たけもとピアノのウェブサイトはと…」
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あすかっちは、この時、ねぎっちょが言っていたことを思い出しました。4人バラバラにならないためにしょっちゅうパラレルワールドで入れ替わると。4人が4人とも同じ才能に目覚めてしまったら、一人で充分だからです。
了くんも気づいていましたが、黙っていました。そして、4人は互いのテリトリーに入らないのがいいと思いました。
あすかっちは中古のピアノで早々とツヨシくんと違う、独自の雰囲気の弾き方を身につけました。バッハの曲が好きなようです。
あすかっちの趣味が増えました。
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