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久美子「え?アンタ八千代工業の男子とつきあってたの?どんな子?」
あすか「優しくて、親切で、クトゥルー神話の本好きで、背が高い」
久美子「?」
あすか「クトゥルー神話好きってめったにいないから。でも、振られちゃった」
久美子「いつから付き合ってたの?」
あすか「こないだのブックイベントから。それ以来二人してバイクで本屋巡りして楽しかった」
あすか「向こうも楽しいって言ってくれて…ただ、彼、クトゥルー神話とベクシンスキーとギーガーの話ばっかりなの。こんなに話の合う女の子は初めてだって言ってくれたんだけど…私、ギーガーは嫌いなんだよね」
久美子「ああ、ギーガーの絵は分かりやすいもんね」
あすか「んで、自分のことどう思うかLINEで訊かれたんだけど…本好きの友達って答えたら、なんか反応が鈍くなって」
久美子「アンタ惚れかかってたの?話してて楽しいって言えばよかったのに」
あすか「ちょっと気になることがあって」
あすか「私は早い段階で作家だって名乗ってて、私の本や好きな作家の話をしようとすると、ずーっとクトゥルー神話の話なんだ。付き合ってたと言えるかどうか今でも分からない。私の好きなものの話ずらすことさえなければもっと違ってた」
久美子「あ~それはだめだ」
久美子「作家の彼女の本、読んでない時点でダメ」
あすか「…うーん、いや、読み漁ったって。で、私の本読んでて面白くないって。なんで売れてるか分からないって」
久美子「…それじゃ彼氏にするのは無理ね」
あすか「うん。彼は彼なりに色々私に合わせてくれたし、すごく優しくて気の利く人だったけど、生業を否定されたら無理かな」
久美子「アンタの著作、中高年のジジババ向けだから、高校生には無理だったかもね」
久美子「そういう人、彼氏にした途端、豹変することあるから。その恋愛は長く続くかどうか分からないわ」
あすか「でも、すごく楽しかったんだよね」
久美子「彼にとっては好きな話題だけで、自分の趣味を面白がってくれる彼女が欲しかったんでしょうけど…アンタ、クトゥルー神話だけで保つと思えないもの。交際する前にすでに終わってるわよ」
久美子「アンタ、なんで自分を幸せにしてくれる人に出会えないんだろうね…」
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堅苦しいところがない彼で、そこがよかったのに。
ずっと友達でいられるものでしょうかね。
それとも彼はもう次の女子を探しているのでしょうか。
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