女の子(奥)「なあ、フランシーおらへん?」
あすか(手前)「フランシー?誰?」
女の子「ああー、ウチ家まちごうたかな?フランシーは金髪で目ぇが茶色くて、背は小さめでアンタぐらいの年なんやけど」
あすか「久美子ちゃんかな?」
女の子「そないな名前やったかなー?ウチ同ンなじ劇団のアレックスいうねん、担当はメゾソプラノや」
あすか「あー、劇団ね。分かった。フランシーって多分、久美子ちゃんの英語名だ」
アレックス「そおか、フランシーは久美子ちゃんいうんか。あんたは?」
あすか「私は高峰明日香っていうんだけど……」
アレックス(奥)「あすかちゃん。へー、あんたべっぴんやな」
あすか(手前)「アレックスは久美子ちゃんに会いに来たんだね。もうすぐ帰ってくるから座って待ってて」
あすか(右)「キリンラガーでいい?」
アレックス(左)「おおきに、気が利くなぁ」
あすか(右)「オペラやる人って炭酸はダメかと思ったけど……」
アレックス(左)「ウチは気にせぇへんで。よぉ冷えとるわ」
久美子(中央)「アレックス!来てたの」
アレックス(左)「邪魔しとるで。フランシーちっとも呼んでくれんから来てしもうたー、ここ涼しいな」
アレックス(左)「フランシーは日本名は久美子いうんやな、可愛い名前やんか、ウチも日本名て欲しいわぁ」
久美子(右)「アンタ大酒呑子がいいわ。アレックスもちゃんと練習に来なさいよね」
アレックス「来てるやんか。ウチはセリフおおないねん、いても目立たんだけや」
久美子(右)「何言ってんの、アンタ次の舞台では主演よ。『カルメン』なんだから」
アレックス(左)「あー、そうやった?」
久美子「しっかりしてよね」
あすか(右)「次の舞台は久美子ちゃんは主役じゃないの?」
久美子(左)「『カルメン』のヒロインはメゾソプラノがやることになってるの。アタシはカルメンの恋人ホセの許嫁、ミカエラの役よ。今度アレックスがカルメンやることになったんだけど、あの子だらしないからなぁ、心配だわ」
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アレックスの怪しい関西弁は笑って許して下さい。
声楽に関してはとってもストイックに挑むソプラノの久美子ちゃん、次の舞台が「カルメン」なので、主役はメゾソプラノのアレックスです。しかしどうも不真面目な印象で?
ついでにいうと、久美子ちゃんは劇団ではファーストネームのフランシーで通っていましたが、アレックスが言いふらしたため、劇団でも久美子ちゃんと呼ばれるようになりました。
「カルメン」は私は中3の時に観ました。
これ、初演はパリの「オペラ・コミック座」で上演された悲劇ものなんですよね。19世紀のスペインという設定で、カルメンという情熱的なジプシー女性と恋仲になったことで破滅するホセのお話。オペラ・コミックではハッピーエンドを期待されることがほとんどで、ラストで主役死亡というのはなかったため、上演された時は物議を醸し出したようですね。