コノエお祖母ちゃん(左)「わーん」
あすか(右)「そんなにショックだったの?行きつけの100均のお店がセルフレジになってたこと」
コノエ「店員さんは一人しか居なくて……操作を指示されても全く分からなかったの」
あすかっちの声「何度か行けば分かるようになるよ」
コノエ「この年じゃもう頭に入らないのよ、キャッシュで精算しないとダメなの、ちょっと旅に出てる間にずいぶん変わっちゃったわ、そのうち無人レジになって、お祖母ちゃんどうしていいか分からなくなるわ」
あすか「私も毎日PCにクーポンクーポンお得お得、ペイペイにペイパルとうるさいよ。正直ついていけない。でも嘆いてないよ。身の回りを完璧にしておくことなんて出来ないから。そもそも執事の榊さんは何をしているの?」
コノエ「お盆で帰省してそれっきり帰ってこないのよ」
あすか「お祖母ちゃんめちゃくちゃだからなぁ」
コノエ「そのうちおサイフケータイになって、お祖母ちゃん全くついていけなくなるんだわ、世間から取り残されるんだわ」
アインシュタイン先生「取り残されてるのはお義母さんだけじゃありませんよ。ぼくもついていけないからここんとこどこのお店にも入ってません」
コノエ「それじゃますます遅れていくじゃないのよ、バカ」
コノエ「ああ、本当にこうやって老いていくのねえ」
あすか「お祖母ちゃん、フラッと山や草原の旅に出るのやめなよ、もっと街へ出ようよ、一緒に行こう」
ノンコ「かあさんには絵画教室にもっと力を入れてほしいわね。いちおう絵画教室の先生なんだから、マジメにやって」
コノエ「ああ、『旅に病んで 夢は枯野を駆け巡る(芭蕉)』が理想だったのに」
あすか「それ芭蕉の辞世の句じゃあないよ。最後の句ではあったけど」
================
ひとり旅が趣味のお祖母ちゃん。
いや、お教室の最中に旅に出てしまう困ったお祖母ちゃん。
今までは通用しましたが、ITの急速な発達についていけません。
もっと恐いのが、みんなそうだということです。
誰もお祖母ちゃんに新しいことを教えられません。
これから先、どうやって一人で生きていけるでしょう。弟子や友人もアテになりません。
老いた友人は、スマホさえ持ってません。
ああ、老人よ、どこへ行く。
あすかっちの着ている服はデパートで期間限定の店を出していた手作りサークルのものです。