アンバーとクリスタル、現実社会の日本のあすかっち宅にて。
ツヨシ(右)「今日はあすかっちの代わりに『今昔物語集』のうちのひとつを話すよ」
クリスタル(中央)「剣士と魔法使いとお姫様出てくる?」
ツヨシ「立派な女性が出てくるよ」
アンバー(左)「ふーん」
ツヨシ「今は昔、ある若い女が幼い子供をおぶって山のそばの道を歩いていると、二人の浮浪者が現れた。やり過ごそうと立ち止まったら『さっさと行けよ』と言われた。歩いてるうち通せんぼされて、女は山道に連れ込まれた」
アンバー「ちょっと、なんの話?」
クリスタル「浮浪者は女を思い通りにしようとしたが、女は腹具合が悪いから見逃してくれと言った。浮浪者が赦さなかったので、女は愛児を人質に置いていくから、向こうで用を足させてくれと言い、浮浪者も認めたので山道を下った」
アンバー「それで?」
ツヨシ「女は愛児を置き去りにして逃げ去った。途中で数名の武士に出会い、これこれこういうことがあった、と話すと武士らはその場で女と共に急行。しかし浮浪者たちは逃げ去ったあとで、子供は殺されていた」
ツヨシ「武士たちは愛児より夫への操を守った女を褒め称えた。身分の卑しい女でも恥を知っていたのだと――」
クリスタル(右)「もういい!聞きたくない!あたし部屋に帰る」
アンバー(中央)「ツヨシくん最低!」
ツヨシ(左)「ま、待ってよ、この頃の理想の女性像ってのが――」
アンバー「知らない!節分だから豆まきしたかったのに何よ、そんな話。鬼!」
あすか(左)「さて、どうしたものか」
ツヨシ(右)「ぼくどこも間違ってないよね?」
あすか「うーん、全面的にまずい。小学生の女の子に向けて絶対しちゃいけない話と、話し方っていうものがあってね……。同じ内容でも、話し方によって下品な話にも美談にもなっちゃうんだよ。きみの話した古典は古典的価値観に基づきすぎてる。少し柔らかく話そうね。女の子にはもっと楽しい話をしよう」
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あすかっちは、どうしたらいいかと聞くツヨシくんにこう言いました。
「だから話し方しだいさ。当時の価値観をそのまま持ってくるんじゃなくて、お母さんが悲しみをこらえるシーン入れるとか、あのぐらいの子供たちには「情」が必要なんだよね……」
参考文献:角川ソフィア文庫「今昔物語集」