守衛「おい!そこのあからさまに嘘くさい米軍ジープ、停まれ!……運転席も助手席も女?ここは女子供が来るようなところじゃねぇぞ」
あすか「女性専用支援物質を届けに来てました。ジープはテキトーなところから借りてきました」
守衛「運転席のガキ、顔をよく見せろ。……中東系か?アジア系か?よく分からん顔だな」
あすか「東洋人です」
守衛「嘘だろう。東洋系なら目が細くてつり上がっているはずだ」
あすか「たまにはこういうのもいるんです。私の頭の形をよく見てください。こんなの東洋人に決まってるでしょ」
通訳(どうも日本人らしい?)「●●どの、ちょっと申し上げにくいのですが、この子はクイーン・イングリッシュを喋ってます。おそらくアッパークラスの子です。先ほど金髪の娘とも話していましたが、金髪の娘の方は米国英語です。黒髪の子はおそらく東洋人との混血です。ワケありでしょうが、アッパークラスの英語を喋るような子とは、関わりにならずほうっておいたほうが……」
守衛「チッ。誘拐して犯行声明出したほうが金になるのに。煙草持ってねえか?」
あすか「あります。あげます」
守衛「お前、いったいなんだ?」
あすか「私は日本人です」
守衛「お前らふたりはバカの代表だな……二度と来るなよ。もう行け」
あすか「ありがとう」
戦士ゲルダ「バカとしか言いようがないが、ファンタジーキャッスルの中の、現実世界よりずっとずっと甘い紛争地帯に行ったんで命拾いしたな。もしお前たちの世界だったらたいへんなことになっていたろう、日本人。自分から日本人だと名乗るものではない、恰好の人質か、売り飛ばされたことだろう。女性用の支援物資はたしかに必要だが、時には転売されたり、支援物資の受け渡しの際、彼女らが犠牲を払わなければならなくなることもあるんだ。物事はよく考えて行動することだ」
戦士ゲルダ「まァ、この間お前たちがファンタジーキャッスルに来たときに忘れていった、どこへでもいける天球儀が壊れたんで見てもらおうと思っていたのだが……」
あすか「天球儀はうちのも修理中だよ。今は地球儀使ってる。忘れ物を使いながら預かっていたのか?」
ゲルダ「そりゃそうだろう。こんな便利な道具、一度手に入れたら手放す馬鹿がいるものか」
あすか「そういうの日本では拾得物横領罪なんだよ」
ゲルダ「そんなものは通用しない。だから日本人は甘いと言ってるんだ。日本の常識がどこでも通ると思うなよ」
あすか「ファンタジーキャッスルとはいえ紛争地帯で、生きた心地がしなかったのは確かだけど、私、純粋日本人なんだけどなあ」
ゲルダ「日本はは太古の昔から他の民族とも交流があったのだ。ファンタジーキャッスルの紛争地帯ではお前のクイーン・イングリッシュが間抜けな通訳に勘違いをさせたのが幸いしたが、現実の紛争地帯では逆に命取りになるから、次やお前たちのもといた世界ではこうはゆかぬぞ、二度とおかしな考えを起こすなよ。あそこは遊び半分のボランティア気分で行くところではない」
あすか「出会ったの今日で2度目なのに忠告ありがとう」
ゲルダ「お前たちがちょっとは使えそうな人間だと判断したからだ。無鉄砲だが子供なりに危険地帯での女性用支援物資を届けに来るとは、悪人ではないだろうからな」
ゲルダ「今度はうちへ来い。いつもの森の入り口にある家だ。茶ぐらい振る舞おう」
あすか「もしかしてお友達になれるかも?前回会った時と違って帯刀してなかった。丸腰ってことは敵意がないってコトだよね?」
久美子「あすかっちって、そういうところはよく見てるわよね。他は目に入らないの?弓矢はしょってたでしょ」
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ファンタジーキャッスルでとんでもなく危ないコトをやらかしたあすかっち達。
あすかっちたちがその気になれば守衛をボコボコにすることも出来れば、弾でどこ撃たれても死なないこと、手錠などおもちゃのように引きちぎり壊せること、全て忘れていました。
この、忘れていたと言うことが一番の幸いだったかもしれません。
守衛にも通訳の人にも兵隊にも、帰る家があって、待っている家族がいるのですから。
このエピソードは現実・現在の紛争地帯とは一切関係ありません。