異世界の熊ってどんな熊 | 高峰明日香の明日はどっちだ!

高峰明日香の明日はどっちだ!

1/6のSFホームドラマお人形劇場やってます。PCオススメ。
ジェニフレ・バービー・12インチフィギュア達で構成されてます。
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私が監督でドールは役者です。記事は予約投稿です。

今回は息抜き回にするはずが、セリフが多く長い話になってしまいました。設定厨になってしまったので、慌てずゆっくりお読みください。

久美子(左)「ねぇ、ファンタジーキャッスルにいるモンスターの熊ってどんなかんじ?あたし、一日ほとんど王都にいるから、村の家から外に出たことないの。人を襲ったり作物荒らしたりするんでしょ?」

あすか(右)「あー、地元に猟友会があって、私も了くんもソコのメンバーだよ。酒場に熊退治の依頼が貼り出されると、猟友会の中から適任なパーティーに依頼が行くよ」

久美子「そうじゃなくて、具体的な熊の特徴よ」

 

あすか「そういうのは了くんのほうが詳しい」

 

了「ファンタジーキャッスルには2種類の熊がいる。テディベアと呼ばれてるのは大人になっても百ちゃんより大きくならない、性質もおとなしい熊。モンスターベアというのが、なりは120㎝ほどだがその牙と爪はヒグマをしのぐ強さを持っていて、かなり凶暴だ。力もものすごく強いし、皮膚の下の筋肉も鉄のように硬くて、よほど強い弾でなけりゃ鉄砲も通じない。弱点は脳に直結している目だ。目を撃ち抜かないと倒せない。眉間でも難しい。山でのんびりキノコ採ってるようなヤツがもしモンスターベアに遭遇したら、その日はソイツの命日になるんだ。顔はグリズリーに似てるかな?」

 

久美子「いやだ、恐いわね。あたし村にいる時は外に出ないようにしよっと」

了「人里に下りてきたら石の家でも簡単にぶっ壊されて中に入ってこられるよ。レンガの家でも安全とは言えない。現実社会の熊は熊だがでかくてもちっさくても凶暴なのは分かるだろ?それと同じくモンスターベアは小さくてもモンスター扱いさ」

あすか「単独で熊撃ちに出掛けていっても生きて帰れるのは村では了くんだけだよ」

久美子「何言ってんの、当たり前でしょ。あたしたち絶対死なないんでしょ?」

 

了「冒険者の多くは不死人さ。でもオレたちとは違って、ケガや病気で死ぬことがある。オレたちの場合はまだ分かってないことが多い。それからやたら王都の研究所の薬を使って不老不死の者を増やしてはいけないことになってる。オレは特殊事情だがあんたが年も取らずずっと生きていられるのはあすかっちが星詠み博士で霊能者のねぎっちょと仲がいいからだ。暑い寒いに鈍くて、ほぼ無敵だ。異常な怪力などの能力も持っている。それでもまったく風邪を引かないわけじゃないし、伝染病にかからなくてもキャリアにならないわけじゃない。そもそも女子はともかく男子の不死人は男としてあんまり尊敬されない。まあ、男性ホルモンが通常の男よりはるかに低いから、性欲がないってのが理由さ。だからこういう仕事をする。以前は熊さえ倒せば依頼人からお金だけでなく熊の遺骸もらえたんだけど、今は死体も渡さなければならない。死体は余すところなく利用されるからね」

久美子「熊って可哀想だわ」

 

了(右)「実際、モンスターベアに襲われたらそうも言ってられなくなるよ。生きたまま内臓を」

久美子(左)「やめてやめて、それ以上言わないで。人里に下りてこないよう植林したりできないの?」

あすか(中央)「やってるよ。ブドウとか、木の実とかなる苗を、山に植えてる。でも道路を通すための工事のほうが今、バブルなんでそっちのほうが速くておっつかないんだ。だからねぎっちょみたいな能力者たちが、木が早く育つ魔法かけてるけど、やっぱりおっつかない」

了「恐いのは熊だけじゃない。ゴブリンやオークやダークエルフもうろうろしてる。特に、ファンタジーキャッスルのエルフは耳がとがってるとは限らないから、それがたまたまダークエルフだったら最悪だ。まあ、今のところは熊が一番の脅威だからそれは省くとして、決して安全なところじゃないんだ、山となるとね」

 

久美子「ちょっと待った。こないだ買ったマスケット銃って……」

了「実は熊の目に当てられなければなんの役にも立たない。今のオレの腕だとまだまだ練習が必要だ」

久美子「信じらんない。バカなの?」

了「うん。でもロマンだから」

久美子「あんたもっとマシな人かと思ってたわ。あすかっちの周りのイケメンって残念なのばっか!」

あすか「了くんは一番まともだよ」

久美子「とにかく、あたし、ファンタジーキャッスルの村の外にはもう行かない。王都か現実世界のあすかっちの家かどっちかしか居られないわ」

 

了(右)「うん。万が一、村に行くことがあったら、かならずあすかっちと一緒にいて、外に出る時は手をつないで放しちゃダメだよ」

久美子「そんなこっ恥ずかしいことできるわけないでしょ」

了「あすかっちの手をつないでれば、少なくとも熊以外の"邪悪なもの"に出会うことはないから。ま、そのせいででゴブリンやオーク退治とかにあすかっち連れて行けなくて、戦いに苦労するんだけどね。それはしかたない。こないだ熊退治の様子を事細かに書いたドキュメンタリー小説をあすかっちが発表して、それが派手に売れたの知ってるだろ?あれで不死人の冒険者達のイメージ、かなりよくなったんだ。同時に吉村昭の『羆嵐』も村の本屋に入ってきて、そっちも売れた。今、ちょっとした冒険者ブームなんだよ」

あすか「でも不死人じゃない人たちのパーティーは報酬が高いから、私達としては面白くないんだよね」

 

久美子(左)「あたし、ほとんど王都で声楽のレッスンばっかりやってて、ずーっと知らなかったわ。音楽学校のみんなも多分知らないと思う。ファンタジーって剣と魔法とお姫様と騎士の世界だと思ってたけど、そういう現実知っちゃうとなんだかがっかりだわ」

あすか(中央)「向こうから見たらこっちがファンタジーの世界なんだよ」

久美子「そうよね。でも、人間が便利になるために山に道路を通して、そのために山に棲んでる動物に迷惑かけて、結果的に人間に返ってくるって、そういうところ一緒なのよね。そしてただ飢えをしのぎたかっただけなのに殺される。可哀想なことに変わりはないわ」

了(右)「村ではまだ人々はのんびり暮らせるけど、将来は分からない。モンスターベアが人里に下りて来やすいのは収穫期の秋か冬眠明けの春先だ。連中は頭がいいから食糧の保存方法を知っている。だから、村へ来る時はこの時期は外したほうがいい。オレたちは死なないし食われた内臓再生するけど、やっぱり食われると痛いから。熊は正しく怖がろう」

 

あすか「私達の痛みは通常の人たちよりずっと鈍いけどね。それでも痛いのはイヤだよね。あ、温度と痛みに鈍いとかそう言うの、村の人には内緒ね。吸血鬼みたいに思われたらお友達いなくなっちゃうから。十字架もにんにくも平気だけど」

久美子「当たり前よ。なんだかファンタジーキャッスルのあんたの村で無邪気に遊んでる子供や井戸端会議して笑ってる奥さん達の様子が奇跡に見えてきたわ」

 

あすか(右)「ところで久美子ちゃん、きみの音楽学校に忍び込んだ時聞いたんだけど、きみの歌声って素敵だってみんな言ってた。そしてなんと冒険者やったら凄いだろうって話もあったよ。すでにどんな敵の鼓膜をも一斉に破るだけの声、出せるんだってねえ。ファンタジーキャッスルから魔王がいなくなったのが惜しいよ。卒業したら冒険者やらない?そしたら私達、戦うのラクなんだけど」

久美子(左)「バカなの?あたしは舞台でオペラ歌手として歌いたいのよ。それが叶わなかったらいい生徒を育てたいって前はそれでいいと思ってた。でも今は、必ず主役もらってこれで食べていきたいって思ってるわ!あんた、あたしをネタに1本書く時は、音楽学校一の天才美少女にしてよね!」

 

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ちなみにあすかっちが出した熊との戦いのドキュメンタリー小説の帯には、「異世界から来た鬼才が今度はモンスターベアとの死闘を描いた!作者自ら戦いに参加した驚異の冒険の記録!」というコピーが書かれていました。この本は景気よく売れました。しかしあすかっちは相変わらず「鬼才」のままでした。ファンタジーキャッスルでは、本一冊書くために大真面目に身体張るような作家はいませんからね。あすかっちはこの作品でドキュメンタリー小説の権威ある賞をもらいました。でも天才作家と呼ばれる日は遠そうです。

また、了くんはのちに不老不死の冒険者では初の「勇者」の称号をもらいます。

 

明日は狩りがテーマですが、すこしぽわわんとした、ほのぼの回です。

<禁・無断複製転載>

 

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