アインシュタイン診療所。
ナイチンゲールさん(左)「あら、了くんどうしたの?」
了(右)「お父さんは?」
医師「アインシュタイン先生は往診でファンタジーキャッスルへ出掛けられたよ。ぼくはファンタジーキャッスルから来た代診。どこか具合悪いの?」
了「いえ……お父さんの顔を見に来ただけです」
医師「なら、もう往診は終わってこっち帰ってきて、きみの下宿先で無駄話してると思うよ。スマホでいらっしゃるかどうか聞いてご覧」
了「オレ、携帯電話持ってないんでこのまま帰ります」
あすか(右)「あ、了くん、お帰り」
アインシュタイン先生(左)「了くん、お邪魔してるよ」
了(奥)「……」
了「お父さん、そんな身体でファンタジーキャッスルとココの往復するなよ」
アインシュタイン先生「やだねー、運動不足になるじゃないか。それにどうしてもぼくでなきゃイヤだってお婆ちゃん患者がいるのだよ。ぼくこう見えても、向こうじゃモテモテなんだよ?そのお婆ちゃんは1000年以上ぼくより年上だけどね」
あすか「あ、私、席外そうか?親子水入らずで話したいでしょ」
アインシュタイン先生「いや、一緒に聞いて」
了(左)「分かってるよ、あっちじゃエルフが耳とんがってるとは限らないし、こっちの人間ぐらいの寿命の人から、800年以上生きてるけど不死ではない人、そしてオレたちのような人間まで、いっぱいいるんだろ?熊退治でいろんな人に出会ったから知ってるよ」
アインシュタイン先生「そういう話じゃない。お婆ちゃんはぼくに、1500年前の戦争の話をしてくれたんだ。その時も、『愛する人を守るため戦うんだ』というきれいごとが流行って、大勢の死傷者を出した」
アインシュタイン先生「遠い過去のことだろうと思うだろう。だけど、1500年以上生きてるお婆ちゃんには、つい昨日の生々しい出来事と同然なんだ。お婆ちゃんの友人は、戦地から帰ってみれば守るはずだった家族は全員亡くなっていた。寿命が長いファンタジーキャッスルの人たちは、長く悲しんだ。そしてもう二度と戦争が起きないようにって、異世界を一つにまとめたんだよ」
アインシュタイン先生「人間には抑えきれない闘争欲求がある。だけど理性を失っちゃいけない。ファンタジーキャッスルでは、医工学が発達しているから、望めば欠損した部分も取り戻せるし、若返って寿命を延ばすことも出来る。どうしてそうしないの、って聞いたら、お婆ちゃんは『生きてるうちにいつまた戦争が起きるか分からない。それを見たくないから、平和な時代のうちに普通に一生を終えたい』と言った。ぼくも同感だ。きみたちにはすまないことをした」
あすか「アインシュタイン先生、私は充分幸福だよ。私はすっごい力持ちになったから、何かと便利だよ。気がつくのはずいぶん遅かったけど、感謝してる。ひとりぼっちじゃないもの」
了「お父さん、あすかっちはずっと不老不死に憧れていたんだよ。オレたちは『死なない兵隊』の研究で作られた薬でこうなっちゃったけど、その力を平和のために役立てることが出来るかもしれない。自分を責めないで。少なくともオレ達を救うことが出来たんだから」
アインシュタイン先生「了くんは語彙が豊富になったね。やっぱりココへ預けてよかった」
アインシュタイン先生「じゃ、ぼくはそろそろ診療所に戻るね。向こうの医者をお留守番に置いてきたから、今頃ワケが分からなくてまごまごしてるだろうから」
アインシュタイン先生「いいね、戦いに憧れるんじゃないよ。了くんも人の役に立つ仕事をしなさい。戦争は、お互いが自分たちが正しいと思ってしているから、人を狂わせる。決してその命を、戦うことに使うんじゃないよ」
アインシュタイン先生、帰る。
あすか「耳の痛い話だなあ。私は全部違反してるよ。きみに格闘技教えてよかったのかな」
了「オレにとってはずいぶんと役立ったよ。戦うって自分の身を守るときは必要だよ」
ツヨシ「ピアノの練習終わった~。了くん、スパロボ大戦やろうよ」
了「あ~、今はどんな戦いもしたくねー」
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今回も道徳の教科書のようになってしまいました。スミマセン。
なんでしょうね?私もトシですかね?
アインシュタイン先生にこんなお説教させて。
期待に応えるガッカリさせないいつものおいらを捨てるよ~になっちゃったんでしょうかね私?
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