知りたい志のぶちゃん | 高峰明日香の明日はどっちだ!

高峰明日香の明日はどっちだ!

お人形劇場。永遠の時を生きる「ジルコニア」の少年少女たちの日常と夢と愛と悩みがドールによる劇場で石神井公園・池袋・新宿を舞台に繰り広げられます。闇深いです。コナン時空です。1/6ドール(ジェニー・リカ・バービー・六分の一男子図鑑等)注意:PG12

この物語はフィクションです。ついでに申し上げますと、このお人形劇場における日本は、現実の日本とは少し違うパラレルワールドです。

マクレーン「なんだ、志のぶ、今日はお前さんひとりか?」

志のぶ「はい。あすかさんについてお訊きしたいことがありまして。レオン先生は何も教えてくださいませんので」

マクレーン「本多が言わねえならおれも言えねえよ」

志のぶ「いえ、あすかさんってあんまりたくさんは自分のことお話になりませんので……。執事がいるようなおうちなのに、妙に世間ずれしてるというか、お嬢様っぽいところがないというか……マクレーンさんなら、付き合い長いとだけ分かりましたので、何かご存じかと……」

 

志のぶ「わたし、絶対他人にもらしませんから」

マクレーン「ありふれた、つまんねー現代のおとぎ話だぜ。年頃の女の子が思っているような悲劇のヒロインじゃねーし、でどころがおれだとバレたら、アイツこの店ぶっ壊していくぞ」

志のぶ「あすかさんが訊かれたくないお話なら絶対喋りません、よくある話でもいいです」

マクレーン「ふーん」

 

マクレーン「昔むかし、ある海上自衛隊員の父と数学教師の母との間に、女の子が生まれました。その女の子は、1歳半で読み書きが出来ました。2歳になる頃にはアルファベットが読めました。女の子は本が大好きでした。3歳の頃にはもう、お話を作るのが得技になっていました。女の子の夢は、作家になることでした。ところが女の子が幼稚園に入った頃、夫婦は喧嘩が絶え間なくなりました。というのはお父さんは忙しくて家に帰れず、お母さんは教職をしばらく休むことにしたのです。お父さんはお母さんにも働いてほしかったので喧嘩はやみませんでした。しかたなくお母さんは女の子が2年生になると同時に教職に戻りました」

 

マクレーン「それからも、夫婦仲はよくありませんでした。というのは女の子の母方のお祖父さんが倒れ、画家であるお祖母さんは風来坊なところがあってその時、ちょうど旅に出ていて何も知りませんでした。お祖母さんは携帯電話を持っていませんでした。だから、お祖父さんは女の子の家に引き取られました。お母さんは介護のため教職をやめたかったのですが、お父さんは許しませんでした。お母さんは身体を壊し、お祖父さんは急速に身体が衰え、身体が動かしづらくなりました。でも、病院や介護施設に行くことを拒み、娘や孫のそばで最期を迎えたいと言いました。女の子は学校を休んでお祖父さんの介護をすることになりました。女の子が小3の半ばになる頃、お祖父さんは認知症が進み、やがて全身が動かなくなりました。女の子は料理がどうしても上手くなかったので、お祖父さんにおかゆぐらいしか作れませんでした」

 

マクレーン「やがてお祖父さんはおうちで亡くなりました。看取ったのは女の子ひとりでした。女の子は小3の途中でした。1年近く学校へ行っていませんでした。普通なら誰かが気づいて児相に届けたり、いくらでも解決策はありました。しかし、ご近所は知っていても気づかないふりをしていました。というのは、お母さんはその頃、栄中学という運動部が盛んな学校に勤めており、1週間びっちり部活動の顧問をしなければならず、またも家に帰れなかったのです。そして学校では一言も家の恥を言わず、家庭円満で幸せな自分を演じました。狭い世界で他人に噂されたり干渉されることがイヤだったのです」

 

志のぶ「……ひどい」

マクレーン「女の子はそんな時、ひとりの僧侶と出会います。決して真面目な仏教の僧侶ではありませんでしたが、女の子は落第したくないので勉強を教えてほしいと言いました。女の子はお祖父さんの介護中も独学で勉強していたので、殆どどこも遅れたところはありませんでした。特に国語系はずば抜けていて、すぐ中学に上がってもついていけそうでした。一方で僧侶はサブカルチャーにハマっていて、僧籍にありながら北欧の妖精の児童文学に凝っていたり、若者が集う喫茶店を作りたいと考えていました。最初は北欧の妖精のカフェにしようかと考えていましたが、これは著作権が絡んでいてダメで、有名な仏像のレプリカを置いて、喫茶店を開きました。

 

マクレーン「そこには仏教の経典の他に、哲学書や古典文学やノンフィクション、新書、様々なジャンルの本を置き、毎夜大学生が訪れては議論を闘わせました。女の子はそこで本を読み、からかってくる大学生を相手にまともに本で学んだことを題材に討論し、ねじ伏せました。帰ってきたお祖母さんが描いた絵がオークションでかなりの値で取引され、執事を雇えるほど豊かになると、女の子はまた学校に行くようになり、4年生で中学受験を意識しました。僧侶はその頃、本多という自分と同じ歳の教師を紹介しました。かれは私立のカトリック系女子中学・高校を教えていましたが、妙な趣味は持たない真面目な男だったので、女の子の受験の面倒を見ることにしました。そのうちかれは彼女に高い身体能力があることに気づきました。そこで女の子に簡単な護身術も教えました」

 

マクレーン「模試はまずまずでしたが結局、第1志望の中学は面接に遅刻したことで落ち、第2志望の、まさに本多が教えている学校に入りました。同時に両親が別居したせいか、女の子は学校で荒れました。コラムやカット描きをサブカルチャーな雑誌に寄稿し、地味に作家デビューすると、女の子の周辺は忙しくなりました。また、苦労知らずのお嬢さん方に焼き餅を妬かれたりしました。お母さんも疲れ、もっと部活動に時間を割かなくて済む緑中に異動、女の子も自由な緑中に転校しました。そこは古くからあるがんじがらめの教育方針を校長が一切廃し、思い切った改革で注目された学校で、女の子の通っていた私立中とも交流があったため、あっさり越境出来ました。本多もその後、なぜか緑中学に異動しました。おしまい」

志のぶ「それがあすかさんのことなんですね」

マクレーン「さてな」

 

マクレーン「とにかくそういうわけだから、喋るなよ。おれが知ってるのはこれだけだ。まるっきりおとぎ話で信憑性ねーだろ?」

志のぶ「素敵なお話だと思います!頑張ればどん底からそんなにトントン拍子にいくこともあるんですね」

マクレーン「だから、これはおとぎ話なんだよ。落ちるときは突然で、這い上がるときまで時間はかかる。だがその先には必ず光が射すもんなんだぜ」

志のぶ「秘密にする必要ない気がしますが、黙ってます」

マクレーン「そうしてくれ。おれもこれ以上は知らん。ありふれた境遇に夢のような展開、まったくの嘘でなくとも嘘であっても、真実はアイツしか分かってないことだ」

 

シェフ「オーナー、あすかちゃんですよ」

マクレーン「おー、来たか。おーい、志のぶちゃん来てるぞ」

 

あすか「志のぶちゃんも仏像喫茶で討論とか問答とか?」

志のぶ「いえ、仏法の歴史を教わってました」

 

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あすかっちはマクレーンにさえ、全てを明かしていませんでした。でも、それが一番いいのかもしれませんね。

<禁・無断複製転載>

 

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