ノンコ「あすかちゃん、前にハリウッド俳優に憧れてたことあったわね。ハリウッドだともう金髪碧眼は流行らなくて、アジア系俳優が求められてるんですって。オーディション受けてみない?」
あすか「英語キライだし、芸能人に憧れない」
ノンコ「1対1でネイティヴの人から英語教わればいいじゃない」
あすか「恥をかきたくない。前、大鐘さんに聞いたんだけど、急にイスラエルに転勤になって英語覚えなきゃならなくなった奥さんが、ネイティヴが教える英語教室に通ってたけど、休み時間、そのネィティヴの白人が黒板に胴長短足でめがねかけて目をつり上げて出歯な日本人描いて別の白人と笑ってたっていうから。どうせ東洋人は綺麗じゃないですよーだ」
ノンコ「なんてこと言うの。そんな頭の悪そうなネィティヴ雇わないわよ」
あすか「嫌なものは嫌」
ノンコ「仏像喫茶のオーナーは外国人でしょ。マクレーンさんに教われば?」
あすか「マクレーンは母国にいるより日本のほうが長いよ。英語忘れてる」
あすか「どうして今頃英語英語って……」
ノンコ「高校入試のことよ。あすかちゃんおとなしく3年間過ごしてくれたらエスカレーター式に高校行けたのに、公立に転校しちゃうから。今から受験勉強しなきゃ間に合わないわよ。お茶高行くんでしょ?ものすごく難しい問題出たら大変だから、英検で準1級は取ってちょうだい。これから英語出来ない子はどこの大学にも行けないし就職もできないわ。うちはニート養うつもりはないから、大学はとにかく旧帝大のどれかに入って。そのためにお茶高行って」
あすか「私、作家だから就職する気ないんだけど」
ノンコ「公立中学に転校しちゃったのになに夢見てるの?東大か早慶以外の作家なんていないわよ」
あすか「今どき、無理にいい高校行かなくてもいいじゃない、あとで頑張れば」
ノンコ「だめ!環境の悪い子たちに染まって不良になっちゃうわ。国家公務員になりなさい。一般企業はどうせ女子は無理だから」
あすか「作家のほうが向いてると思うけど」
ノンコ「2冊目の本売れてないでしょ。もうやめなさい」
アルフレッド「奥様、お嬢様はいずれ英語を身につけざるを得なくなりますから、今、押しつけることはないと思いますよ」
ノンコ「受験まであと1年しかないわ」
アルフレッド「日本の学校は、学んだことが何も役に立ちません。それにお嬢様に国家公務員が務まるとは思えません。国民のみなさんが思っているよりはるかに厳しい仕事です」
アルフレッド「いずれまた、戦場ジャーナリストになられると思いますよ。ノンフィクションのほうがお好きなようですから、たくさんの言語を覚えることでしょう。砲弾の下をかいくぐって、女性たちにインタビューして回ると思います」
ノンコ「そんな仕事させたくないわ。政治家の通訳とかのほうがいいわ」
アルフレッド「お嬢様ですとハーバードは受かりません。それに外交官の家柄でもございません。この国は少々、はみ出た人間には暮らしにくいんですよ。ですから大奥様も画家になられた。奥様は教師で比較的、普通の家庭ですがお嬢様には窮屈です」
ノンコ「なにも戦場ジャーナリストでなくてもいいじゃない」
アルフレッド「私も最初は反対でした。でも、向いた仕事に就くのが幸福だと感じます。英語は私が遊びを交えて教えましょう」
ノンコ「向いていても嫌だわ。この前だって命からがら逃げてきたじゃない」
アルフレッド「それでもトラウマにならなかったので向いていると申し上げているのです」
ノンコ「あすかちゃん、作家じゃなかったら将来、何になりたいの?」
あすか「映画監督」
ノンコ「……」
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映画監督も、親が蜷川幸雄やフランシス・フォード・コッポラじゃない限り、女性はほとんどなれないんですけどね。











