ねぎっちょ宅。
あすか「うん。やりたいことや観たいモノいっぱいあるけど、トシかな~、好奇心がなくなったら仕事がなくなるでしょ、私の場合。突撃は好奇心が命だから。それが…何も感じなくなってきてるんだよね」
ねぎっちょ「うーん。私たちまだ中学生だし、そんなこと気にしなくていいと思うけど」
あすか「今しかない感性が欲しいんだって、編集部が」
ねぎっちょ「そうねー、現役中学生コラムニストってあんまりいないもんね。いてもラクじゃないでしょ」
あすか「うん、反響も好意的なモノから『生意気だ』ってモノから様々でね。でもまったく相手にされないよりはマシ。贅沢な悩みだってことは分かってる」
ねぎっちょ「子役の悩みみたいなものよね」
あすか「そうなんだよねー。あと、トシ取るの恐いかな。トシ取って歩けなくなったり、病気になったりしてひとりぼっちだったら恐いかな」
ねぎっちょ「ふーん、あすかっちでもそう思うんだ」
ねぎっちょ「私はねえ、トシを重ねるのが楽しみなの。いろんな体験をして、たくさん美味しいもの食べて、素敵な映画を観て、だんだん分別ってモノが身についてきて、大人になるのがすごく楽しみ。ちょっとぐらい病気あっても、のんびり楽しく過ごせるようにしたいの。老後は暖炉のある部屋でロッキングチェアに座って編み物していたい」
ねぎっちょ「あすかっちは確か小4の時、集団検診で心臓引っかかったよね。そのせいで不安なの?」
あすか「よく覚えてるね。今はもう機能雑音ないけど、あの夏はプール禁止されてつまんなかったな、見学で。結局原因分からなかったけど」
ねぎっちょ「実は私もあちこち悪いとこあるのよ。でも、もう気にしてない。あすかっちはひとりぼっちじゃないよ」
あすか「ありがと、ねぎっちょ」
ねぎっちょ「あすかっちにこのバッグあげる。中に地図と住所かいた紙が入ってる。お仕事がイヤになっちゃったり、心がパンクしてどうしようもなくなったらバッグ開けて、そこを訪ねてみて。ここ私の昔の実家だったとこなの。ただし奥に入りすぎるとケータイがつながらなくなるわよ」
あすか「え、いいの?非売品のバッグ…」
ねぎっちょ「だからこそ効くのよ。あすかっちに持っててもらいたいの」
あすか「ねぎっちょ、ありがとう。どーしよーもなくなったら行ってみるね」
あすか「私は帰ってから、速攻でバッグ開けちゃいました。浦島太郎になりはしないか心配だったけどおばあさんにはなりませんでした。スマホやネットで住所を検索したけどヒットしなかったので、そこに近い場所からタクシーつかまえて
『○○村まで』
と言ったら運転手さんの顔色が変わりました。
『アンタ若いのに何しに行くの?』
と訊かれたので
『癒やされに』
と答えたら『そう?』と出発してくれました。
『ここから先はケータイ通じないよ』
と言われて、見た景色は極上のリンゴ畑と極上の桃の木畑と降り止まぬ桜でした。桃はともかく、真夏にりんごと桜吹雪というのはありえない光景です。私は恐くなって引き返してもらいました。その夜、動悸は治まり、私は仕事に復帰できました。ねぎっちょがなぜあんなふうな子なのか分かるような気がしました。きっとあそこは桃源郷なのでしょう。私はこの日のことを忘れません。年を取ってほんとうに一人になったら、また訪ねてみようと思います」


